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【1000字ショートショート】〝AI故人〟

作者: 飛鷹 灯
掲載日:2026/05/02



「町の皆はまだ言っとるよぉ、あんたの俳句はうまかったわって。死んでから理解したわってさ」


 俺のおばあちゃんは毎日テレビモニターに向かって話しかけている。


 番組に熱中しているわけでも、ボケているわけではない。テレビモニターに映っているのは、昨年亡くなった俺のおじいちゃんである。


 近年開発されたAIによる新サービス『AI故人』。生前の写真やホームビデオなどの映像を学習させ、まるで故人が生きているかのように話すことの出来るサービスだ。


『そうか、そうかぁ! 儂の力作は語り継がれとるか!』


 死んでから評価されるゴッホタイプのおじいちゃんは画面の中で口角を上げて喜ぶ。その表情の滑らかさ、声質、イントネーションはまるで本物のようだ。


「あんた、ここで一句、思いつかないのかい?」


『ふむ……死んでみて 意外と軽き 秋の空

 どうかの?』


 違いというなら、俳句を考える速度が上がったくらいだ。


「やだー、あんたったら不謹慎!」


 こういう場合、残された側がAI相手に依存することがあるらしいが、うちのおばあちゃんはちゃんと区別がついているようだった。


 そんなある日、おばあちゃんが溜息を漏らしていた。


「どうしたの、おばあちゃん」


「やっぱり……なんか違うんよねぇ。おじいちゃんが」


 そう言って肩を落とすおばあちゃん。流石は長年連れ添ってきた夫婦だ、違和感を覚えてしまうのだろう。元気を無くしたおばあちゃんをなんとかしてあげたい気持ちが募った。


 そこで、俺はついさっきSNSの広告で目にした新サービスを提案した。素早く検索しておばあちゃんにスマホの画面を見せる。


 それは〝スマホ学習AI〟。故人の残したスマートフォンに保存されている画像や映像だけでなく、トークアプリの会話履歴や通話履歴を学習することでより精度を向上させるサービスである。


 すぐさま登録を完了させ、テレビモニターのすぐそばにあるAI機器におじいちゃんの使用していたスマホをかざした。


 表示される〝学習中1%〟の文字、それはすぐに100%になった。


 一度画面が暗くなり、その後白くなる。そしておじいちゃんが現れた。それにおばあちゃんは語りかける。


「あんた、調子はどうや?」


『……ぼちぼちや』


「俳句、思いつくか?」


『……全然や』


 明らかに口数が減っている。そしてなにより素っ気ない。俺はバグかと思い、サポートセンターに電話しようとする。


 しかしおばあちゃんはその俺の手を止めた。

 そして、ふふふ、と笑う。


「あんた、スマホ苦手やったもんねぇ」

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