04.ー静まれー
「二人ともはじめるぞ」
声をかけられ銀夜と茶々が火夜のもとへ集う。
傍には疲れは見えるがどこか前向きな顔をした少年。
「ーでは、書いた書を茶々が読んでくれ。
発動の可否を確かめる。」
説明を聞きながら銀夜の瞳は震える少年の手を捉えていた。
なるほど、さすが火様と感心する。
書く術者と発動させる術者を別けるのは実践では通常のこと。
しかし稽古では初心者にはまずやらせない。
それはそもそも発動しないという状況がありえないからだ。
書術学院に入学する条件に〝書術を発動させる〟というものがあるからだ。
『斬』
バシュッ!!
バキバキバキバキバキ
銀夜の横を何かが通り過ぎて行ったと思ったら
後ろの竹林の竹が大きな音を立てて倒れていた。
断面のきれいさから鋭利なもので斬られたのは明らかで
それはきっとさきほど茶々が唱えた斬であるとしか考えられなかった。
飛ぶというより光に近く、恐怖に近い驚きで頭が追い付かない。
「な・・・」
辛うじてでた言葉はそれだけだった。
「茶々さん!」
呆然と竹林を見やる銀夜の背中で悲鳴に近い叫び声がした。
ーーー茶々が倒れていた
うつぶせで倒れているので顔は見えないが血の水たまりができるほどに出血している。
出血の部位の確認をする前に
「銀夜」
と火夜に言われて「御意」と返す。
それは反射に近かったが、おかげで頭がはっきりとする。
「茶々さんッ・・・茶々さんッ・・・」
地面が赤く染まる傍らで少年が呼び続ける。
泣いているのか叫んでいるのか名前を呼んでいるかもわからず
狂ったように泣き叫ぶ少年の手を火夜がとった。
「『静』まれ」
その声で我を取り戻す少年。
同時に、暗闇の中でゆらぎのない青い炎が静かに佇んでいる想像が飛び込んでくる。
現実がはっきりとしてくる。
自分の心臓の音が、のどの奥のゼイゼイとした音がうるさいほどよく聞こえ、
行き場のない手は宙で大きく震えている。
「呼吸を整えて」
火夜が襟を正す。
「しっかり握れ」
少年に筆を握らせさらに火夜も上から一緒に言葉通りしっかりと握る。
「そして想像しろ」
「茶々の笑顔を」
そう言われて思い起こされるのは、小さくクリっとした目が横にのび、頬が桃色に染まる茶々の笑顔。
その姿を想うと自然と筆を握る指に力が入る。
手の震えは止まっていた。