表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書術道  作者:
ー朱雀編ー
25/53

20.緊急招集




「突然呼び立ててすまない。」


大広間を見渡す火夜の低い声に、準師範以上の面々が一斉に姿勢を正した。

ただ一人、壇下の右端で胡坐をかき、あくびを噛み殺す男を除いては。


大広間の最奥、一段高い壇上には、師範にして学院長である火夜。

その右脇に控えるのは、もう一人の師範――朱宮(あけみや) 陽斗(はると)

赤黒い短髪と大きな瞳が印象的で、派手な顔立ちに似合わず落ち着いた佇まいを見せている。

だがその笑みの奥には、時折やんちゃな光が潜んでいた。


壇下左列には、女性準師範が三名。

銀夜は背筋を伸ばし、厳しい眼差しを烈火に向けている。

紫織は感情を抑えた表情で視線を火夜に注ぎ、茶々は緊張から指先に汗をにじませていた。


右列には、男性準師範三名。

奥から蒼真(そうま)(たちばな)烈火(れっか)


青炎(せいろう) 蒼真(そうま)

大人びた穏やかな顔をした青年で、齢は二十五。

黒い徳利の袖口をそっと直しながら、冷静な目で壇上を見つめていた

朱雀の里の人間にしては珍しく、苗字の通り青い髪をしている。

銀夜と同じ苗字、青炎である。


暁炎(あかほ) (たちばな)

鮮やかな橙・桃・山吹の三色の髪と装飾品が目を引く、齢は十三の少年。

はだけた胸元から痣が見える。

くりっとした瞳が特徴的で、少女を少し思わせる愛らしい顔をしている。

鮮やかな三色の髪が灯りを受け、きらきらと揺れる。

その幼い顔立ちに似合わず、どこか落ち着きはらっている。


(とどろき) 烈火(れっか)

齢は二十二。

左目と上半身を包帯で覆い、赤と橙の混ざった乱れ髪から覗く瞳も鋭い。

ふてぶてしい座り方からも近寄りがたい雰囲気を醸し出している。


「……面倒だ。さっさと始めようぜ。」


胡坐をかき欠伸しながら、少し投げやりに言った烈火。

銀夜は眉間にしわを寄せて叱責する。


「貴様……火様の御前でその態度、恥を知れ。」


反論しかけた烈火の口を、陽斗が柔らかい声で塞いだ。


「烈火。」


穏やかな響きに似合わず、その目には絶対の圧があった。

烈火は舌打ちを堪え、しぶしぶ頭を垂れる。

その空気に、茶々はさらなる緊張で手汗をかくが、紫織、蒼真、橘は平然として動じない。

緊張が走る中、火夜は動じず口を開いた。


「皆、覚えていよう。七夕の夜、森の火災にて一人の少年を保護した件を。

 記憶を失い、姉の存在だけを口にしたその少年に、真白と名を与え、茶々を師とした。

 彼はいま一級の位にあり、だが姉の行方はいまだ知れぬままだ。」


静かな言葉に、場が息を潜める。

火夜はさらに続けた。


「本日、真白が記憶の一部を取り戻した。

 その姉は病床にあり、寝たきりであったという。

 ならば、火を放った上で連れ去られた可能性が高い。

 里外に逃げたのであれば、他の里の者、あるいは外で生きる者の仕業と見るべきだ。」


一同に衝撃が走る。

紫織と茶々だけが静かにうなずき、すでにその覚悟を共有していた。

その言葉に、先ほどまで動じなかった蒼真と橘の表情にも、わずかな動揺が走った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ