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書術道  作者:
ー朱雀編ー
16/53

【番外編01-04】平伏




書術の根底を揺るがすとはどういうことか。




ー意思に近い心を感じる気がするの。


この紫織の直感を認めるということ。

それはすなわち書術に心を生み出す能力があるということを意味する。

0から命を生み出すという神のみわざ。

もちろん書術で命を生み出すことはできないとされている。


先ほどの火夜の伝令を届けた鶴を例にあげて説明する。

紙に伝令文を書いた後「鶴」という字を書き、詠唱する。

その鶴に心や意思はない。

あくまでも術者の命令を遂行するまでの人形でしかない。

術者はその人形が動く間、自分の力を流し続けなければならない。

それは距離が離れれば離れるほど、人形の大きさが大きくなるほど、

数を増すほど、命令が複雑になるほど消費量は自ずと大きくなる。

特に複雑な命令や臨機応変な対応が必要になる場合は思考が必要になることから

自分の意識も向ける必要になり、その間術者の意識は身体から抜け出し、抜け殻のようになる。

立っていることもままならない。

心がないから思考もない。人形(ひとがた)──空っぽの器だから意識を向けることは出来る。


それが目の前の茶々はどうだ。

虚ろな目をして呆然と立っている。

光のない虚ろな目は影が登場する前からなので書術によるものではおそらくない。

見当もつかない書術を扱う相手が齢十とは末恐ろしい。

紫織と共に糸口さえも見つけられない事実に憤りも感じない。

憤りすら湧かぬほどにこの少女(茶々)は、はるか彼方の高みにいた。


――沈黙が流れた。


乱れた呼吸を正した後、紫織はしばらく視線を落としたまま、やがて静かに口を開く。


「感服いたしました。数々のご無礼をお許しください。

 準師範へのご就任心よりお喜び申し上げます。」


紫織が平伏していた。

負けを認めたということだ。

発起人である紫織が負けを認めねば銀夜も認めにくい。

正直二人ともとっくに彼女が遙か高みにいることに気づいていた。

それでも格下と侮っていた己への慢心から認めたくなかったのだ。

銀夜も遅れて平伏する。

段位最高位を取得してもなお、さらなる高みが存在するのか。




ならば神に等しい火様は果たして、いずこにましますのか。




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