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書術道  作者:
ー朱雀編ー
11/53

11.あとどのくらい




龍麗(りゅうれい)様!」


そう叫ぶなり、流香(るか)が龍麗に飛びかかる。


「申し訳ございません!

 流香が、流香が悪うございました!

 どうか、どうかお許しくださいませ…!」


大粒の涙をぼろぼろと流しながら懇願する姿は、まるで駄々をこねる童子(こども)のようだった。

先ほどまでの気品ある姿からは想像もつかない様子だ。


そのまま、二人はその場に座り込む。

「龍麗様」と何度も叫ぶうちに、どこからか聞こえていた水音は次第に弱まり、龍麗の姿も元に戻っていた。

周囲の温度も、先ほどのような異様な冷気が嘘のように消えていた。



龍麗は、震える唇を必死に押し殺しながら、問いかけた。

「……あと、どのくらいだと思われるか。」


それに答えたのは火夜だった。


「……一年ひととせ。」


その言葉を聞いた瞬間、流香は今度は静かに涙を流しはじめる。

龍麗を抱きしめる腕の力が、ぎゅうっと強くなっていくのが見てとれた。

銀夜だけが、その会話の意味を理解できずにいたが、それを口にできるような空気ではなかった。

会話の意味も、龍麗の先ほどの異変も、流香の涙も、火夜の言葉の真意も――

何ひとつわからない。

けれど、そこには確かに、深く深く沈んだ悲しみだけが存在していた。




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