君
どうも、からあげ大佐です。
記憶にある限り初めて書いた小説です。
うるさい君と静かな僕。対照的だけどどこか似ている2人の何かが始まるのかもしれないそんな春のお話です
至らない点がありましたら教えてください。
もしかしたら続きを書くかもしれません
春。それは始まりの季節
なんでもなかった日常に色が染まる時
入学、卒業、就職、成人。
色々なことが終わり、変わり、増える。
僕は高校に入学した。なんてことない普通の高校
普通の街、普通の高校、普通の僕......
いや、僕は普通ではないだろう、そこだけは違う
別に自分を素晴らしいと言っているわけではない
本来であれば一度きりの高校生活の初めの日
普通の人ならば交友関係を築くために奮闘する
連絡先を繋げる人.....話に行く人....遊びに行く人....
まぁもちろん多種多様だろう。
だが僕は、誰もいない教室で1人座っている。
そう、1人が好きなのだ。
友達がいないわけでも嫌われてるわけでもない
ただ1人がいいからここに座っている。
少し香る春の匂い、まだ新しい教室の匂い
薄暗い教室の雰囲気、誰にも邪魔されない空間
あぁ、素晴らしい....はずだった....
「ねぇ!!ねぇってば!!ちょっと聞いてる?おーい!!」
本来1人のはずだった僕の国は、突如現れた彼女のせいで崩れ去った。黒い長髪に整った顔に八重歯が光るその彼女は1人椅子に座る僕の正面に立ち机を叩きながら先ほどから叫んでいる。当然だが知り合いではない
もう一度言おう、1人が好きなのだ。
「ねぇ!!きいてるのー?!!」
「聞こえているよ...なんの用だい?」
「あ、よかった。無視されてたのかと思った」
説明する必要は無いだろうが、当然無視をしていた。
無視をしていればそのうち諦めるだろうと思っていたが、まさかの10分以上も目の前にいたのだから驚きだ
「こんな誰もいない教室にいる変わり者になんの用だい?」
「あ、いやこれと言った用は無いんだけどね」
「は?」
彼女は何を言っているのか僕はしばらくの間理解ができなかった。当然だ、よくわからない初対面の人間に用も無いのに10分以上も話しかけ続けているのだ。
僕は特別目立つわけではない。黒い短髪にメガネ、身長も高くない。オタクと言えばオタクだが、アニメよりも本を読む方だ。
それに比べて彼女は、クラスの中心にいるようなタイプに見える。とても可愛らしい見た目をしているし、周りに友達も多いのだろう。
だからこそ、わからない。なぜ彼女が僕に話しかけているのか。
「用も無いのに10分以上も話しかけていた理由を聞いても?」
「えっと....気になったから...かな!」
「は?」
今日僕は何度疑問を持てばいいのだろうか。
もはやツッコミを入れる気力すら無い。
「だってだって!みんな遊びに行ったり話したりしてるのに誰もいない教室で1人で座ってるんだよ??気になるよ!」
確かに、これは僕でも気になるかもしれない。
いや前言撤回そんなことは無い
「はぁ...僕は1人が好きだからここにいる。それで満足か?」
「なるほどぉ....」
考える人の像のようなポーズをわざとらしく取った彼女はしばらく悩み始めた。と言ってもほんの数秒の間だったが
「じゃあさ!なんで1人が好きなの?みんなで遊んだほうが楽しいじゃん!」
でた。1人でいることの良さを理解できない奴らからの質問No. 1....真面目に答えてもはぐらかしても鼻で笑われる....慣れている。
「おーい??また無視〜???」
彼女も大方廊下の先で他の生徒が待っていて僕の回答を聞いた後、信頼関係を気づくための餌になる。
「あれ?...聞いちゃダメだったかな....」
そんなことを言う彼女のことを無視して僕はカバンを持ち無理矢理教室を後にした
「あ!ちょっと!!!」
そんな声が後ろから聞こえた気がするが、お得意の聞こえないフリをして廊下を早歩きで帰る。
ただ、廊下の先には誰もいなかった。
「また明日....無視してしまったことを謝ろう」
うるさい君の声はなんだか心地が良かったから
春。それは終わりの季節
充実した日常が白紙に戻ってしまう時
入学、卒業、就職、成人。
色々なことが終わり、変わり、無くなる。
私は高校に入学した。田舎と都会の真ん中ぐらいの
のどかな街、落ち着いた高校、変わらない私....
いや、実際は変わっているのかもしれない。
人と関わるのが好きだった。
小学校の頃はクラスの輪の中心でいつも笑ってた
遊んで、食べて、笑って、泣いて....
毎日が楽しかった。でも...中学に入ってから
私は自分が本当に楽しいのかわからなくなった。
だから一度きりの高校生活の初めの日
誰とも話さずここにいる。
そう、1人になったんだ。
そんなことを考えながら廊下を歩いていたら
誰もいない教室で1人で座ってる人がいた。
私と一緒なのかと思ったけれど違かった。
なんだか1人を楽しんでいる。羨ましいと思った
もう友達は作らないと思っていたけれど
彼とは、ううん...君とは話してみたかった。
たった1人で閉じこもっていたお城から
抜け出してしまいたいと思うほどに
「ねぇ!君はなんでここにいるの?」
そう問いかける。黒い短髪に超イケメン!とまではいかないけれど整った顔立ち、黒い四角いメガネから私は勝手に本が好きなのかなと思った。
「おーい?あれ?聞いてる〜??」
また私は話し方が昔と同じになっている。
誰からかまわずフレンドリーに話す口調...
でも不思議と嫌じゃなかった。
「おーい!おーい!」
流石に変だろう。明らかに無視されている。
それでもなんだか気になった....とても興味をそそられる
「ねぇ!ねぇってば!!ちょっと聞いてる?おーい!!」
彼がようやくこっちを見た。鋭く尖った目だと思った。でもなんだか、目の奥は優しい色をしている
きっと優しい人なんだろう...そう思った
だからこそ根気強く話しかける
「ねぇ!!聞いてるのー?!!」
「聞こえているよ...なんの用だい?」
「あ、よかった。無視されていたのかと思った」
当たり前だけれど初めて声を聞いた。ゆっくりとでも柔らかい感じの声だった。でもやっぱり無視されていたんだと思う。根気強く話しかけてよかった
「こんな誰もいない教室にいる変わり者になんの用だい?」
「あ、いやこれと言った用事は無いんだけどね」
「は?」
まずい...こんだけ話しかけておいて話題が無い。怒らせてしまうだろうか....正直に言ったほうがいいのかな?うん、正直に言おう
「用も無いのに10分以上も話しかけていた理由を聞いても?」
あちゃー、先に言わせてしまった。
「えっと....気になったから...かな!」
「は?」
うん、失敗だ。友達を作ってなかった弊害がここにきて出ている。どうしよう...もうどうにでもなれ!
「だってだって!みんな遊びに行ったり話したりしてるのに誰もいない教室で1人で座ってるんだよ??気になるよ!」
一瞬彼が確かにって顔をした。そんな気がする....
私は正直に答えたしきっと彼も正直に答えてくれるはず!
「はぁ...僕は1人が好きだからここにいる。それで満足か?」
「なるほどぉ....」
思わず考える人のポーズをとってしまった。テヘ
私は人といるのが好きだった。いろんなことを話して同じように共感して遊んでって、それが普通だと思っていたのにどうして1人が好きなのだろう?単純に気になってしまった、彼の考えを共感できれば何かが変わるかもしれない
「じゃあさ!なんで1人が好きなの?みんなで遊んだほうが楽しいじゃん!」
あれ、黙ってしまった。
「おーい??また無視〜???」
彼は少し顔を顰めた。聞かれたくなかったのだろうか...
「あれ?...聞いちゃダメだったかな....」
そう呟いた矢先に彼は荷物を乱雑に掴んで教室から出て行ってしまった。怒らせてしまった
「あ!ちょっと!!!」
私の呼びかけに彼は反応をしなかった。きっと...いや、絶対に不快な気持ちにさせてしまった.....
彼に謝りたい.....謝って....そして....名前を知りたい
わからないけど...なんだか仲良くなれる気がする....
「明日....また会えるよね」
静かな君との空間はなんだか居心地がよかったから
読んでくださりありがとうございました。