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端役  作者: 鈴木 正秋
しゅんへん
2/2

1

―――彼はもう手の届かないところにいる。


 原田美由は、ベッドの上で寝転がり、自分のスマホ画面を見ながらそう思った。

画面には主に動画アプリで活動している四人組のグループ、エキサイティングサーチ。通称、エキサ。そのメンバーが和気藹々とチャレンジ企画をしている動画が流れており、それをぼんやりと美由は眺めていた。


『なんでそんなことしなくちゃいけないんですか!!!』


 チャレンジ企画に無理やり参加させられたメンバーの一人が怒声をあげた。そんな遠慮のない怒りの表現に、美由はふふ、と笑みを浮かべた。


「やっぱりしゅんくんは面白いな」


 語尾に音符が付くような声で、美由は呟いた。


 しゅん。

エキサの副リーダーのしゅんだ。見た目は他のメンバーに比べて派手ではなく、性格も常識人で優しい瞬間が多い。だが、理不尽なことにはしっかりとリアクションを取る。

 常識人の皮を被った変人と評されることも多い。


 そんな彼のことが美由は大好きなのだ。


「それに他の普通のファンと比べて、私は全然違うからね」


 美由の頬が緩む。

 他のファンにはない特別な繋がりがある。それだけで何万人といるはずのファンを押しのけて、自分が一番であると実感できる。

 

 美由は動画アプリをブラウザバックして、写真フォルダを開いた。そして、お気に入りの写真ファルダを開き、ある写真を画面いっぱいに広げた。


 その写真は高校の卒業式の日、若き日のしゅんと美由が二人で満面の笑みでカメラにピースを向けている。当時でも人気があったしゅんは制服のボタンを他の女子生徒から取られており、学ランの前が全開になっている。

 美由もボタンが欲しかったが、後輩の女子生徒がすぐに奪い去ってしまったため、叶わなかった。


(だけど、この写真があるだけで私は十分)


 画面いっぱいに拡大した若き日のしゅんの写真を胸の上に置き、両腕で抱え込んだ。永遠に彼のことを好きでいると誓うように、美由はそのまま眠りに付いた。



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