エルフさん、現代日本(ド田舎の奥地)に飛ばされる
あああああああ!!!やっちゃった!!これ、転移トラップだぁ・・・
私の名前はディード。まだまだ新米だけど、冒険者やってます。
只今ピンチの真っ最中です。私の不注意で、トラップを発動させてしまいました。私は先行していたので、恐らくパーティメンバーを巻き込んでないだろうというのが唯一の救いです・・・
さて、ここどこでしょう?定番の転移先とすれば、強敵の真ん前か迷宮外に転送ってところでしょうけど・・・間違いなく外ですね。どのぐらい飛ばされたんだろう?
おかしい、植生が全く異なる。こんな草木見たことない・・・地図は・・・ダメだ、全くの白紙だ。ここに私は、来たことがないってことだ。どこか別の大陸なのかな?
これはまずい、対病毒の護符・・・は失くしてない。食料と水は・・・三日分ぐらいか。近くに集落があればいいけど、自給自足も考慮しないと・・・ここが温暖で植物が多いのは救いね。今日のところはとりあえず、良さそうなところに拠点を作って体を休めよう・・・
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大変だ!!ここ、別の大陸どころの話じゃない!!星空が全く違う!!なんだあのでっかい星!!まずい、まずいぞ、たぶん全くの異世界だ。今までの常識が全く役に立たないかもしれない・・・
・・・落ち込んででも、何もしなければ死ぬだけなので、とっとと気持ちを切り替えて、今日は寝ましょう。悩んでたってどうにもならないんだから、明日考えましょう、明日!!
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そんなわけで、現状把握。ここは高度はそれほど高くないが山岳地帯で、気候は温暖、植物は豊富で動物もそれなりにいるようだけど、今のところ猛獣の類には遭遇していない。さっき小川も発見したし、湿度も高いから雨も降るだろうし、水は問題ない。
今の段階では、森の民たるエルフの私なら、ここでの生活も不可能ではないと思う。まあ、植物なんて7割は食えるんだし!!・・・私の世界なら。
最悪の事態は避けられるとして、やはり集落は探してみよう。友好的な種族ならいいけど、ダメならこの森で隠遁生活しないとね・・・どちらにしても突発事故は避けないと・・・え~と認識疎外の護符は・・・
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案外あっさりと、集落が見つかった。見つかったけど・・・なんだろう、これ・・・城?要塞?なんでこんな堅牢で強大な建造物ばかりなんだろう・・・大きさからして、体格は私たちと大差なさそうだけど・・・もしかして他国と戦争中なのかしら?あ、どうやらヒューマンみたいだ。あんまり見た目がかけ離れてる人たちでなくてよかった・・・
なにあれ?!馬車?戦車?すごい速さで走ってるけど、牽引する動物とかいないのに、どうやって動かしてるのかしら?あんなのが必要だなんて、戦争してるにしてもどんな相手と戦ってるのかしら?
幸い認識疎外の護符は有効なようだから、しばらく観察してみよう。ええと、言語理解の魔法をかけてと・・・丁度会話してる人たちがいる。ちょっと建物の中に失礼して、会話を聞いてみよう。
「困るなあ、吉岡はん。借りたもん返さんと逃げたらあきまへんでぇ。あんた、そんなええ加減なことばっかりしてるから、まともなところから金借りられんで、うちみたいな闇金に来るしかないんですやろ?ええ大人がその位の事、ええ加減に覚えはったらどうです?まあよろしいわ。もう三月うちは待ってるんやから、もうあきまへん。腎臓でんなぁ・・・」
・・・ここは質の悪いゴロツキの巣窟の様だ・・・他のところの様子を見てみよう・・・
「なんやとコラぁ!!お前んとこは飯にこんなもん混ぜるんか!!責任者ださんかい!!」
「うるさいボケェ!!俺が責任者じゃあ!!うちの店にこんなロン毛の金髪、一人もおらんわぁ!!待てコラ逃げんな!!お前ら!!あいつボコってから、警察に放り込んだれ!!」
・・・ここは食堂かしら・・・ちょっと治安が悪いのかしら・・・
「洋子、離婚してくれ。お前、結婚前から浮気してるやろ?えらい嘗められたもんやな、俺。あ、これ、証拠写真と録音。動画もあんで?えーとこいつバンドマンやて?口座見たけど、なんぼほど俺の金貢いどんねん・・・」
「ムキィーーーーーーー!!!!!・・・はっ!違うの!!あの男が!あの男が悪いんよ!私は悪うないの!」
「いや奥さん、浮気したあなたがどうやっても悪いので、あなたは旦那さんの慈悲にすがって慰謝料の減額をお願いすることしか出来ないんですよ?」
「何言ってんの?わたし女よ?慰謝料もらう側やないの!!」
「そんな法律ありませんよ?・・・」
・・・うん!!わかった!!私、ここの人たちと仲良くできない!!これ、仲間内で諍いが絶えないろくでもない集団だわ!!森で引き籠ろう!!