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【第三十五話】

 そして一年が過ぎた。凛の居場所は依然として分からない。銀幕の向こう側に居るのに。あんなことまで言ってくれたのに。凛は僕の前に現れることはなかった。

「ホント、僕は何もかも失ってしまったんだな」

 十二月の寒空の元、僕は映画館を後にした。今日は世の中ではクリスマスというイベントが繰り広げられている。街中には仲の良さそうなカップルが溢れている。

 僕は凛と行った場所をポツリポツリと尋ねて回った。でも当たり前だが凛の姿はない。

「ここで最後かな」

 いつぞやの成人式後に訪れた神社。神社はクリスマスなんて関係ないとばかりに年末年始の準備で忙しそうにしていた。ぼくはそれを横目におみくじ売り場で一つおみくじを引いてみた。

「また大凶だったら笑えるな」

 そう呟いておみくじの入った引き出しを開ける。

「ふふ……」

 神様ってちゃんと見てるんだな。こんな人間に徳を与えるわけはない。

 

「待ち人は……」

 

『現れないでしょう』

 

「やっほ。元気してた?」

「え?」

 振り向くとそこにはダウンジャケットを着た女の子が立っていた。それはとても懐かしい空気を纏って。

「もしかして待ち人、現れたのかな?」

「ああ……」

「ありゃ、神様も適当だなぁ」

「ああ……」

「お待たせ」

「ああ……」

「何さっきから。感動し過ぎて言葉をなくした?」

「ああ……!」

 僕は現れた天使を思いっきり抱きしめた。

「ちょちょっと。いきなりすぎるって」

「もう……逃がさない」

「大丈夫だから。逃げないって。でも。私を裏切ったことは別だからね」

「何をすれば許してくれる?」

「そうねー。労働力、かしら?いつもは私が晩御飯作ってたけども、それは洋介が作って」

「それって」

「ちゃんと帰って来るから。でも、今の私があのアパートに住むのは立場的にアレだから、住む場所は私の家ね」

「玉の輿だ」

「そうねー。感謝しなさい」

 凛はそう言って神社の境内を歩き始めた。

「神様にもう浮気しませんように、ってお願いしなきゃ」

「流石にもうしないよ」

「ってか、そんな相手いないでしょ。この甲斐性なし」

 凛は鈴をガランガラン鳴らしてお賽銭を投げ込んだ。僕は何をお願いしよう。そんなの決まってる。

 

 凛とのこの関係がいつまでも続きますように

ここまで長きにわたりお付き合い頂きありがとうございます。

次回投稿、エピローグがございます。

明日の投稿はお休み、日曜日に最終話の更新を致しますのでよろしくお願いします。

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