エピソード９ 集結する魔法使いと新たな試練
各国を歴訪する旅は、想像以上に過酷だった。険しい山脈を越え、広大な砂漠を抜け、時には魔法の力で移動する乗り物に揺られながら、様々な国を巡った。
言葉の壁を越えるのも容易ではなく、シアンが通訳を務めてくれたとはいえ、各国の魔法学院の頑なな姿勢には幾度となく頭を悩ませられた。
しかし、白き光の護符の力を頼りに、私は諦めずに各国の魔法使いたちに訴え続けた。闇の魔法の脅威と、伝説の魔法使い、アリアを探すことの重要性を、歴史書で学んだ雄弁術を駆使して説明した。
さらに、各国の事情を考慮し、互いに利益のある提案をするように心がけた。例えば、ある国では、白き光の護符の力を借りて、不治の病を治療する方法を伝授する代わりに、協力を得るといった具合だ。
そうした地道な努力が実り始め、少しずつ各国の魔法学院から協力を得られるようになっていった。水の国では、強力な回復魔法を使う魔法使いが、火の国では、炎を操る魔法使いが、それぞれ使節団に加わってくれた。
こうして、旅を続けるうちに、使節団は国際色豊かになり、総勢十数名にも膨れ上がった。各国から集まった魔法使いたちは、最初は互いに警戒し合っていたが、闇の魔法という共通の敵に立ち向かううちに、次第に信頼関係が築かれていった。
ある夕方、砂漠の真ん中で一泊していた時のことだった。夜空を見上げると、満天の星が輝いていた。シアンが、横に座り込んでいる私に話しかけてきた。
「…各国から、強力な魔法使いたちが集まったね。これで、闇の魔法を消滅させる魔法陣も完成させられるかもしれない」
「うん、そうだね。でも、伝説の魔法使い、アリアはまだ見つからない。やっぱり、いにしえの魔法都市の情報は、当てにならないのかな…」
私は、少し落胆した様子で呟いた。
その瞬間、砂漠の彼方から、かすかな光が近づいてきた。最初は、蜃気楼かと思ったが、光はだんだんと大きくなっていき、やがて巨大な鳥のような形をした、銀色の飛行物であることがわかった。
「…あれは…！」
シアンが、驚いた声を出した。その飛行物は、ゆっくりと使節団の上空に降りてきた。そして、中から出てきたのは、銀髪の美しい女性だった。
女性は、穏やかな微笑みを浮かべながら、私たちの前にゆっくりと歩み寄った。
「…皆さん、お探しの人間は、私です」
その瞬間、私は固唾を飲んで、女性を見つめた。白き光の護符から感じ取っていた、あの優しい声の主。伝説の魔法使い、アリアだった。
