エピソード8 再会の予兆と学院の危機
いにしえの魔法都市を後にした私とシアンは、学院に戻る途中に立ち寄ったとある村で、思わぬ情報を入手した。
それは、村の古老の証言だった。その古老は、数ヶ月前に、空を飛ぶ銀髪の女性を見たというのだ。
銀髪の女性といえば、伝説の魔法使い、アリアの特徴に一致する。もしかしたら、アリアが消息を絶った後、この村に身を寄せていたのかもしれない。
だが、古老の記憶は曖昧で、詳細はよく覚えていないという。しかし、手がかりがないよりはマシだった。
学院に戻ると、学院長にアリアの情報を伝え、いにしえの魔法都市で白き光の護符を手に入れたことも報告した。
学院長は、安堵と驚きの入り混じった表情を浮かべた。そして、学院に新たな問題が起きていることも教えてくれた。
それは、学院の周辺で、最近になって奇妙な現象が起きているということだった。
「…森の中で、突然木々が枯れたり、動物たちが異様な行動を取ったりするのです。まるで、闇の力が少しずつ溢れ出しているような…」
学院長は、深刻な表情で話した。おそらく、荒野の神殿の封印が弱まった影響によるものだろう。
事態は一刻も猶予できない。伝説の魔法使い、アリアを探し出し、闇の魔法を完全に消滅させる方法を見つけ出す必要があった。
学院長は、私とシアンに、学院に伝わる古い文献の調査を命じた。アリアの消息や、闇の魔法を消滅させる方法が記されているかもしれないからだ。
連日、図書館にこもり、埃をかぶった分厚い文献を読み漁った。そして、ある日、ようやく手がかりになりそうな記述を見つけた。
それは、学院創設期のもので、闇の魔法に対抗する強力な魔法陣が記されていた。その魔法陣は、複数の上級魔法使いが必要だったが、その中心には、「白き光の導き」という言葉が記されていた。
もしかしたら、白き光の護符こそが「白き光の導き」なのかもしれない。そして、その導きによって、アリアが闇の魔法を消滅させる方法を知っているのかもしれない。
この発見をシアンに報告すると、彼は大きく頷いた。
「…確かにその可能性はありますね。ですが、問題はその魔法陣を完成させるのに、最低でも五人の上級魔法使いが必要です。今の学院には、それを満たすだけの魔法使いはいません」
絶望しかけた時、シアンの目が輝いた。
「…待てよ、もしかしたら… 」
シアンは、何やら考え込んでいる様子だった。そして、学院長に会いに行くと、しばらくして戻ってきた。
「…学院長が、ある提案をしていました。それは、伝説の魔法使いを探し出すだけでなく、各国の魔法学院に協力を求めるというものです」
各国の魔法学院には、強力な魔法使いたちがいるはずだ。彼らに協力を仰げば、闇の魔法を消滅させる魔法陣を完成させることができるかもしれない。
しかし、各国の魔法学院は、お互いに交流が少なく、協力を得るのは容易ではないだろう。だが、他に方法はない。
私は、白き光の護符の力を使い、過去に歴史書で学んだ各国間での交流術や交渉術を思い出そうとした。そして、各国への使節団の一員として同行することを志願した。
シアンも、私の護衛として同行してくれるという。伝説の魔法使いを探し出す旅は、各国の魔法学院への使節の旅へと変わった。
旅は困難を極めた。国境を越えるたびに言葉の壁にぶつかり、各国の魔法学院の頑なな姿勢にも悩まされた。
だが、私は白き光の護符の力を頼りに、各国の魔法使いたちに、闇の魔法の脅威と、伝説の魔法使い、アリアを探すことの重要性を訴え続けた。
そして、各国の事情を考慮し、互いに利益のある提案をすることで、少しずつ協力を得られるようになっていった。