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エピソード2 魔法使い猫と学園生活

エーテルワルド学院という言葉に、息を呑んだ。魔法使いを育成する特別な場所だという。そんな場所があるなんて、今まで歴史書でしか読んだことがなかった。


銀髪の青年は、自分のことをシアン (シアン) と名乗った。シアンによると、あの白い猫は学院の守り神のような存在で、人を異世界に導く力を持っているのだという。そして、導かれた人間は特別な素質を持っているに違いない、とも。


しかし、私、有栖川歩 (ありすがわ ほのか) には心当たりがない。ただの歴史オタクの女子高生に、一体どんな素質があるというのだろうか?


シアンは、学院内で一部屋用意してくれると言ってくれた。魔法が使えない人間が学院にいるのは前代未聞らしいが、事情を説明すれば学院長がきっと理解してくれるだろう、と彼は言った。


案内された部屋は、学院の寮舎の一室だった。質素ながらも清潔感があり、窓からは中庭の美しい花壇が見える。荷物は持ってきていないので、シアンは学院内の学生服と最低限の日用品を用意してくれた。


翌朝、シアンに促されて、私は食堂へ向かった。そこには、様々な色のローブを纏った学生たちが談笑していた。全員が魔法使いなのかと思うと、気が遠になりそうだった。


朝食後、シアンは私を学院長室に連れて行った。学院長は穏やかな表情をした老婦人だった。シアンが事情を説明すると、彼女は少し驚いた様子だったが、すぐに優しく微笑んだ。


「異世界から来たと言うのは、大変な体験でしたね。しばらくの間、学院で休んでいただいても構いませんよ。ただ、魔法が使えないとなると、授業には参加できませんが…」


学院長は少し困ったような表情を浮かべた。私は、迷惑をかけている申し訳なさでいっぱいになった。


「…ですが、図書館なら自由に利用できます。歴史や言語の授業にも見学生として参加してはどうでしょう?」


学院長の提案に、私は少しだけ希望を見出した。せっかく異世界に来たのだから、この学院で少しでも多くのことを学びたいと思った。


それから数日間は、図書館に入り浸る日々が続いた。魔法に関する本はもちろん、この世界の歴史や文化についても熱心に読んだ。授業にも見学生として参加させてもらい、魔法の世界について少しずつ理解を深めていった。


ある日、図書館で本を読んでいると、あの白い猫がまた私の足元にすり寄ってきた。久しぶりだったせいもあって、思わず撫で回してしまった。すると、猫は喉をゴロゴロと鳴らし、まるで何かを伝えようとしているようだった。


「…もしかして、私をここに導いたのは何か理由があるの?」


私はそっと猫に話しかけてみた。すると、猫は碧い瞳で見つめ返し、かすかに頷いたように見えた。その瞬間、突然頭の中に、見知らぬ景色が映像として浮かんだ。


それは、広大な荒野の中に立つ、古びた神殿のような建物だった。そして、その神殿の奥深くには、何かの封印がされているように見えた。


映像が消えると、胸騒ぎがした。この景色は何を意味するのだろうか? 猫は、私にこの場所を示そうとしているのかもしれない。


「…シアンさん!」


図書館を飛び出し、シアンを探した。彼を見つけた時、私は見知らぬ景色を見たことを話した。シアンは、少し驚いた様子だったが、すぐに真面目な顔になった。


「それは…もしかしたら、学院が抱えている問題に関係しているかもしれません」


シアンの説明によると、エーテルワルド学院は、かつて世界を脅かした闇の魔法を封印する使命を帯びているという。そして、その封印が何らかの理由で弱まっており、学院では解決策を探しているところだったのだ。


まさか自分が、こんな重大なことに関わるとは思ってもみなかった。しかし、あの映像が示す場所が気になる。もしかしたら、歴史オタクの私が、何か役に立てるかもしれない。


「シアンさん、私もその場所に行きたいです!」


私は、意気込んでシアンにそう言った。学院に迷惑をかけるかもしれないという不安もあったが、歴史書の中にしか存在しなかった魔法の世界に、自分が関わることができるという好奇心の方が勝っていた。


シアンは、少し悩んだ後、渋々ながら承諾してくれた。だが、その場所は危険な場所かもしれないと言う。それでも私は行くことを決意した。


こうして、私は魔法が使えないまま、学院の守り神である白い猫と共に、異世界での冒険へと旅立つことになった。



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