キャトルカールは憧れている
殿下はのどかな庭園を歩む足を止め、振り向きざまに言い放つ。
「私は屋根へと登るぞ‼︎屋根の上で剣の稽古をする!」
チュンチュンチュン
小鳥の囀りが愛らしい。
その宣言は雲をも吹き飛ばし、ジリジリと肌を焼く太陽が顔を出した。
1人の騎士はわざとらしく隣を見、1人の騎士はうやうやしく膝をつく。
「殿下、失礼ながら申し上げます。」
「なんだ」
「笑」
殿下は騎士に飛びかかった。
「きっさま…‼︎無礼だぞ、無礼だぞ!」
騎士は飛びかかる殿下を避け、逃走した。木の上に。
「ズルいぞエクレール!降りてこい‼︎」
「殿下…。この程度追えないのなら屋根なんて登れませんよ」
「馬鹿にしおって…。出来るに決まっておろうが!」
よじよじ…ズルっ
よじよじ…ズルっ
「殿下っ…笑」
エクレールは口を押さえて肩を震わせ、殿下は顔を真っ赤に肩を震わす。
「この猿めっ落ちろ!」
ゲシゲシゲシゲシッ
殿下は恨みを込めて木を蹴り続けた。
「それでも大木揺れません。殿下の騎士は落ちません笑」
殿下は後ろを振り向き、訴える。
「シブースト、この木を斬れ‼︎エクレールごと斬れ!」
「やぶさかではありませんが、殿下。殿下ともあろう方がすぐに従者を頼るのですか?」
お説教の始まりを感じ、肩を落とす。
「すまない…」
「偉いですねぇ殿下。素直に反省できることは案外難しいんですよ。ねぇ、先輩」
「ええ、そうですね。貴方も殿下を見習ってくださると助かるのですが」
誰も説教からは逃げられない。
「おっと、先輩すみません。以後気をつけます。あっそろそろ任務に出かけ…」
もう一度。
誰も説教からは逃げられない。
「まだ大丈夫ですよ。それより反省です。」
「貴方がピョンピョコピョンピヨコ逃げ回って屋根に乗ったりするから殿下が憧れてしまったんですよ」
可哀想なシブーストは、殿下に屋根に登るカッコ良さを散々語られていた。
「殿下、憧れは心の中にしまっておいてください。叱られたじゃないですか」
もちろんエクレールはそんなこと承知の上でございます。
「…」
一方殿下は憧れがバレ、羞恥に悶絶。
「アッハッハ!殿下ってば真っ赤っか‼︎」
大笑いの本人以外、心の底から思う。
何故コイツに憧れるのか。
エクレールはストッと着地する。
「木登りの練習くらいはなら付き合いましょう。シブーストははなからそのつもりみたいですし。」
***
「見ろ‼︎登れたぞ!」
「ほんとですねぇ。すごいです!」
「俺だって出来るんだ!屋根だって登れるぞ!」
「練習すれば出来る様になるもんですね。」
「……」
「………」
「…どうやって降りるんだ?」
「笑笑」
「痛いって先輩!先輩だって笑っ…」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
キャトルカールの捉え方が、シブーストとエクレールで違います。
シブーストにとってキャトルカールは忠誠を誓った守るべき主君ですが、エクレールにとってキャトルカールは国を守るために磨く必要がある人という感じです。
そのためよく衝突しますが、エクレールはシブーストに怒られるのも叱られるのも大嫌いなのですぐ逃げます。