1話
「よし、今日はこの辺にしとくか」
ピンセットを道具箱に戻す。もちろん、適当にじゃないぞ? ちゃんと決めた場所に戻す。
「道具の整理整頓こそ、作業効率を上げる一番のコツ。だったけな」
爺さんの言葉だ。
おれと同じ趣味を持っていた爺さんだったが、去年亡くなってしまった。おれが今居るこの場所は、その爺さんから受け継いだ家であり、遊び場だ。
元々は模型店だったから、家というよりは店舗というべきかもしれないけどね。
ちなみに、建物は二階建てで、一階が元店舗、二階が居住スペースとなっている。おれの遊び場となっているのは、一階の元店舗だった場所だ。
遊びとはいったけど、今はそれで収入を得て過ごしてる為、最近では工房と呼ぶことにしている。何故? そっちの方が格好いいからだよ!
「うんうん、我ながらいい出来なんじゃないか?」
おれの仕事は、ジオラマの制作と言われるものだ。その中でも鉄道模型を走らせるジオラマ、レイアウトと呼ばれる模型の作成だ。これを作って依頼者に納品したり、ネットで販売したりしている。
趣味と実益を兼ねた最高の仕事なのである。まぁ、家族の理解を得るのには中々苦労したけど……。
今作っているレイアウトは、Nゲージと呼ばれる規格の鉄道模型を走らせることのできるジオラマだ。旅行に持っていくようなトランクの中に、日本の田舎の情景が立体的に再現されている。これは、トランクレイアウトと呼ばれている種類のジオラマだ。
「うわ、もうこんな時間か……作業に集中してて気づかなかった……」
壁に掛けた時計を見ると、針が三時を指していた。あ、夜中の三時ね。
「やっちまった、今日も午前様かー……おれ、不摂生で倒れたりしないよな?」
最近、しっかり寝ていない自覚もあるし、正直不安なんだよね。
「とりあえず、さっさとシャワー浴びて寝るか」
まぁ、悩んでも仕方がない。さっさと寝てしまうのが一番だろう。
作業着をさっさと脱ぎ、シャワールームへと向かとささっとシャワーを浴び、身体を拭うと寝巻へと着替え、二階にある寝室へと向う。
あ、サービスシーンはもちろん無しね。おっさんのシャワーシーンとか誰得だよって話だ。
「おっと、寝る前にっと、風呂上りにはやっぱこれだよなぁ~♪」
冷蔵庫からビタミン飲料を取り出し、一気に飲み干す。
くぅ~、これこれ。まさに、ファイト一発って感じが火照った身体に染みるのなんの……。
「さて、寝るか~」
こうして、おれの一日は終わったのだった。
色々と書いていってます。反応によってはエタる可能性もあるかもしれませんが、ご容赦下さい。