プロポーズと友人達
数日後、かのん君と私のツーショットが写真週刊誌に載った。世間の反応は「へー、ほんとに居たのね」という感じだった。ネットには再度、以前の炎上騒ぎの時の写真が出回ったが私は気にしないようにした。
「こんなもんかぁ……」
「もっと大騒ぎされたかったらもっと大物になる事ね」
今日は日曜日、我が家ではホームパーティの準備が着々と進んでいる。ちょっとつまめるおつまみにパスタの準備、ローストポークはオーブンの中。
「そろそろみんな来るって」
かのん君のスマホに連絡が入ったみたいだ。しばらくすると賑やかな一団が部屋へ上がって来た。
「よう、祝いに来たぞ……真希」
やって来たのはアレク、レネさん、それからさくらちゃん。
「……おめでとう、これお花」
「ありがとう、レネさん」
「おめでとう、南。真希さん」
「さくらちゃん……」
「ちゃんとお祝いしてるのよ、心から」
さくらちゃんはにっこり笑って手を差し出した。ありがとう、さくらちゃん。色々あったけど、最後に背中を押してくれたのはさくらちゃんだ。
「あとは、山口さんか……ちょっと遅れるって言ってからはじめちゃおうか」
私達はシャンパンを開けると、それぞれにグラスを持った。
「それではかのんの友人を代表して……」
「ちょっと待ってよ、それは私よ」
……乾杯をしたいんだけど、そこでアレクとさくらちゃんが小競り合いを始めた。
「どっちでもいいでしょ、はいふたりの行く末に、乾杯」
「あー、マチ子!」
業を煮やしたレネさんが乾杯の号令をかけた。なんかぐだぐだだけどまぁいいか。さて、お料理を出そう。
「他に飲むもの、ここにあるから。ビールは冷蔵庫だから勝手に出して」
「おう、俺ビール。さくらもビールか」
「あ、そうする」
あれ? さくらちゃんもうちょっと可愛らしいもの飲んでなかったっけ。
「ぷーっ、ああ美味しい。近頃暑くなってきたもんね」
「な。そう言えば結婚式とか考えてるのか? いつ頃が分かったら仕事調整しないと」
それな。実は婚約指輪を貰ったっきり、結局決めてないのだ。お互い忙しいってのもあって。
「それがまだ何も決まってない……んだよね」
「ダメじゃない、南!」
ポリポリと気まずそうなかのん君にさくらちゃんが食いついた。
「そうよ、どんな花婿衣装なのかみんな気にしてるわよ」
「花嫁じゃなくて!?」
レネさんからもツッコミが入る。それねー。パラパラと結婚情報誌を買って読んでみたけれど、かのん君らしい衣装っていうとピンと来なかった。
「となるとオーダーメイドか……どこのブランドにするかも問題だな、かのん」
「それから会場も、ゲストも……」
アレクとさくらちゃんがコンビでかのん君にツッコミを入れまくる。
「あの、その海外でぱーっと家族だけってのはダメかなぁ……?」
「ダメ! 私も行きたいもん!」
さくらちゃんが絶叫する。ああ、またいつの間にかワインの瓶を抱えている。その時、後ろからぼそっと呟きが聞こえた。
「あのですね、このお二人はそれ以前にですね……」
「あ、山口さん」
「玄関のドア空いてましたよ。不用心ですから気を付けて下さい」
「は、はい」
「それはそうとして、このお二人はまだご両親にご挨拶に行っていないそうで」
「えー!!」
全員の鋭い視線が私とかのん君に向かって降り注いだ。そうよね、そうなるよね。
「それ本当なの、南!」
「……本当です」
「それは大変!」
「最悪、二人で入籍だけでもしちゃおうかなー……なんて」
かのん君が頭をかきながらそう言うと、山口さんの厳しい声が飛んだ。
「それはダメです! かのん、なんの為にタレントの仕事増やしたと思ってるの。ちゃんと稼げる芸能人になって真希さんのご両親にも納得してもらう為でしょ」
「……そうだったの、かのん君」
「……そうです……ああ、もうなんで言っちゃうんだよ、山口さん……」
かのん君は恥ずかしそうに頬を押さえた。そうだったんだ。なんだか急に芸能人になっちゃって私はちょっと寂しいって思ってたけど……私の為だったんだ。
「ありがとう、かのん君」
「真希ちゃん……」
かのん君のヘーゼルの瞳を見つめると、彼はそっと私の肩を抱いた。
「はいはーい、いちゃいちゃしてる場合ではありませーん!」
「さくら!」
「ご両親にご挨拶しないなんて親不孝な! ほら、今から練習するわよ。アレクがお義父さん役ね」
「お、おう……どんとこい」
そんな訳で、両親への挨拶ロールプレイングがはじまってしまった。アレクがうちの父、さくらちゃんが母らしい。
「君がかのん君かね」
「うちのお父さんそんなんじゃないですから……」
ああ、この酔っ払い達め……。ただ確かに早いところお互いの両親に挨拶しなきゃならないのは確かに事実なのだ。




