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ジェンダーレス男子と不器用ちゃん  作者: 高井うしお


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39/61

真剣勝負

「なんでアレクが仕切ってるんだよ」

「だって五人だから審判がいるだろ」

「私はかのん君と泳ぎに来たんだけど……!」

「黙れ、おっぱい」


 もっともだと思う抗議の声を上げると、アレクは冷たく答えた。というか人をおっぱい呼ばわりするな。


「一番多くボールをトスした人の言うこと聞くことにしましょ」

「さくらちゃんまで」

「もちろん私は、南と別れてもらいますけどー。どう? 逃げるの?」

「逃げませんとも!」

「真希ちゃん!!」


 しまった、さくらちゃんに煽られてつい応戦してしまった。


「真希さん、園児ちゃんよりチョロい。じゃあ勝負開始って事で。アレク!」

「はいでははじめー」


 プールにビーチボールが投げ込まれる。すかさずトス、かのん君へとパスする。


「あれ? あれ?」


 かのん君は水の中でうまく身動きが取れなくてボールを落としてしまった。


「かのん、アウトー! ほらほらちゃんとやらないと彼女のおっぱい揉ませてもらうぞ」

「お前、審判じゃないかー!」


 ありゃりゃ、かのん君も熱くなっている。


「それっ」

「……よ」

「はいっ」


 お互い一歩も引けない戦いが始まった。


「はぁああああ!?」


 さくらちゃんは足を滑らせて水の中に沈み、かのん君は元々の運動神経があんまりよくないみたいでパスが下手くそ、私は水着のデザインからぽろりしないか気になってしかたがない。そんな中、淡々とトスを上げ続ける人物がいた。レネさんだ。


「……よ」

「レネさんすごい……」

「私、元バレー部」


 しれっとレネさんはそう言って妖しく微笑んだ。なるほどね。私も背が高いからってバスケ部だったし。


「そこまでー」


 審判のアレクの声が響き渡る。私もかのん君もさくらちゃんも、レネさんの方を見つめた。うう……考えが読めない。


「マチ子! 勝者のリクエストを言え」

「本名で呼ばないで。そうねぇ……」


 じーっと、レネさんが私達を眺める。


「……カラオケ行きたい」

「はぁ?」


 全員そこでずっこけそうになった。レネさん、ここでカラオケって……。


「それじゃあタクシー呼ぶか?」

「いや、このホテルにカラオケルームがあるみたい」


 至れり尽くせりだな。というかレネさんはカラオケに行きたくて頑張ってたのか……。


「それじゃ各自着替えてカラオケルームに集合!」


 アレクもノリノリで答えた。こいつは面白ければなんでもいいらしい。


「ごめんね……真希ちゃん」


 あんまり活躍できなかったかのん君は申し訳無さそうだ。


「いいよ、せっかくだから楽しもう。かのん君の友達とカラオケなんてそうそう出来なさそうだし」

「なーにやってんの! 早く早く」


 勝負に負けて不満そうなさくらちゃんに押されて、私達は更衣室へと移動した。




「赤い薔薇の~棘に~沈む~」


 マイクを握っているのはアレクだ。さっきから聞いた事ないヴィジュアル系の曲を歌いまくっている。さくらちゃんは見た目どおりに無難なアイドル曲、そして……。


「夢はーおわーらーないー」


 まさかの高音アニメソングを歌い出したのはレネさんだった。これは上手い……。


「レネさん、歌手活動とかしないんですか」


 思わずそう聞いてしまった。全然知らない曲だけど聞き惚れてしまったから。


「人前に出ると声が出なくなっちゃうのよ……」


 残念そうにレネさんが答える。たまに仲間うちでカラオケする程度なら平気らしい。


「残念ですねぇ」

「うちのマネージャーも同じ事言ってたわ」

「おいそこっ! 飲んでるかっ」

「飲んでますよぉ」


 さくらちゃんはワインをびんごと呷っている。顔が真っ赤だ。そしてアレクの首を引っつかみながらぶつぶつ言っている。


「なーにがしっかり保母さんがみてないからだー。こどもなんてー喧嘩するもんだっつの」


 絡み酒するタイプなんだね。さくらちゃん……。


「俺がしっかりしてれば……ていうかマネージャーさんなんでこいつらに漏らした……」


 かのん君はまだ落ち込んでいる。


「わっ、かのん君。これ泡盛だよ。大丈夫?」

「うん……おいしい……」


 そりゃあ本場の泡盛、美味しいだろうけどさ。ああ、かっくんかっくんしはじめた! 結局、そのまま眠ってしまったかのん君をアレクに抱えて貰って部屋へと戻る羽目になった。


「メイクとってやってなー」

「はいはい」


 そもそもね、あんたたちとかち合わなければ今頃は……今頃……。


「俺等明日帰るから」

「へ?」

「あとは二人で楽しめ、おっぱい」


 そう言い残し、アレクは去って行った。私はしばらく、トランクケースの中の赤い下着とにらめっこしながら、かのん君の寝息を聞いていた。

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