表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/61

プリンセスのドレス

「おいしかったねぇ」


 にこにこと微笑むかのん君。カフェでの飲食代は私は、助けて貰ったお礼に払うと言い張り、かのん君は誕生日なんだからと言ってレジで揉めたので結局割り勘にしてもらった。


「じゃあ次は真希ちゃんの誕生日プレゼントだね」

「ほんと、そういうのいいから」

「嫌だ!! 誕生日を祝わせてよ!!」


 大声で私に食ってかかるかのん君の勢いに負けて、駅ビルで買える位のものならOKという事で了承した。


「何にしようかなぁ」


 かのん君の視線が、私のつま先から頭のてっぺんまで伝っていく。もぞもぞとくすぐったい気分で私はその視線を受け止めた。


「ううーん。そうだなぁ」

「か、かのん君。ちょっと恥ずかしいんだけど」

「もうちょっとだけ! じっとしてて」


 かのん君は、指をフレームの様にして私をじっと覗き混んだ。それから、うんと軽く頷くと私の手を引いた。うわ、手つないじゃってるよ。私の耳たぶが熱を持っていくのを感じる。


「あ、真希ちゃん。これなんかどう?」

「え……?」


 かのん君が指さしたのは、ペールブルーのかちっとしたシャツワンピースだった。いかにも出来る女って感じの。今、私が著ているピンクのワンピ―スとは真逆の感じ。


「こっちの方が真希ちゃんに似合う」

「そ、そう……? 私、いまいち自分に似合うのとか分かんなくていつも無難なのしか選ばなくって」

「うん。真希ちゃんは面長でかっこいい系だからこういうのが絶対いいよ」


 私、カッコいい系なの? はじめてそんな事言われた。いつも服を買うときは流行りや店員さんの言うとおりにしてばかりだった。


「ね、試しに着てみようよ」

「うん……」


 試着室でかのん君の選んだワンピースを身につけてみる。サイズはぴったり。ちょっと変形の襟元のデザインが新鮮だ。自分だったら絶対選ばないだろうな。


「どう、真希ちゃん着替え終わった?」

「うん」

「見せて見せて」


 かのん君はシャッと更衣室の仕切りのカーテンを開けた。


「やっぱり良く似合ってる」


 そう言ってとろけるような微笑みを浮かべた。


「ほら、良く見て。ほっそりして見えるし、顔色も映えてるでしょ?」


 かのん君の言う通り、見たことのない雰囲気の私。私ってこんなんだったんだ。


「店員さん、このまま着ていくのでタグ取っちゃってください」

「かのん君!」

「いいの。俺が選んだ服で街を歩きたいんだ」


 強引にかのん君はお会計を済ますと、二人して駅ビルを出た。


「かのん君、ありがとう」

「ううん、誕生日プレゼントだもん。うーん、こうなってくると……」

「今度は何?」

「髪もいじりたくなる」

「え!?」


 そう言ってかのん君はぐっと私の手を引いた。


「行こう! 俺の担当さんのいる美容室まで」

「ええ!? どこにあるの?」

「原宿!!」

「えええええ!」


 かのん君は獲物をとらえた猫の様な目で私を見た。こうして私とかのん君は電車を乗り継いでわざわざ原宿の美容室へと向かったのだった。


面白いと思ったら、ブックマーク・評価をお願いしたします。更新のはげみになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ