俺は…………。
俺は昔から力が強かった。そっと触ってもすぐ何が壊れてしまうほど。
「何で物を大切にしないのよ!」
違う、大切にしてたよ、お母さんが買ってくれたそのうさちゃん。
「この乱暴者め!物を大切にしないやつは心がないんだ!」
違う、乱暴者じゃないよ、誤解だよ先生。
「お前は男だろ?女じゃねぇーだろー!」
違う、男じゃないよ、女だよ。
でも、届かないよね?この声も、この言葉も。
皆が私を責めている。
皆が私を攻めている。
自然と下を向いてしまう。
「も、もう、や、やめ…………。」
小さな声がまた、空気へと変わっていく。
「違うよ!」
声が聞こえた。上を見たら彼女が俺の目の前に立って俺を守ってた。
.。o○○o。..。o○○o。..。o○○o。..。o
パチリと、目が覚めた。
いつもと変わらない天井。いつもと変わらないにおい。
「…………朝だ。」
誰にも聞こえない声が鼓膜を刺激した。
なかなか動かない体に鞭を打ち、起き上がった。ボサボサの髪を軽く一つに結った。上手く結べた気がする。いつもはあんまり見ない等身大の鏡でチェックをしようとした。鏡に映った自分の姿を見て驚いた。
「泣いてるの?希鎖。」
赤くなっている眼。水が乾いた様な痕がある頬。そっとその痕を指でなぞった。自分で触ってるのに妙にくすぐったかった。
「…………。」
それからすぐに顔を手のひらで覆った。
「演じろ。お前は誰だ?」
手のひらをとって、再び顔を鏡に映した。
「お前は本田希鎖だ、沙紀を守るナイトだ!」
少し大声で言った。髪の毛を強く引っ張った。痛みが脳を刺激するが気にしなかった。
「俺は、男だろ!」
不気味な笑顔は闇そのものだった。