眼鏡の日
眼鏡の日を題材にしたBL超短編です
わんこ系先輩×中二病眼鏡後輩です
二人にはいろいろ設定ありますが
気になった方は「フリーゲーム 中二病学園シリーズ」や「中二病スクールナイト」で検索してください
「今日は眼鏡の日だから鏡君を愛でるよ!」
この人は唐突に変なことを言い出す。
「いや別に眼鏡の日じゃなくても会長はいつも俺を……」
そこまで言いかけて俺は口を手で押さえる。出しそうになった言葉を打ち消した。しまった、今のはかなりの失言だった。自惚れにも程がある。
だが会長は俺の言葉を聞き逃してはくれないらしい。
「ん~?鏡君今なんて言おうとしたのかな~?」
会長は屈んで俺の顔を下から覗きこむ。彼の方が身長が高いため、屈むのは当然のことだとしてもなんとなく屈辱である。
「なんでもないです!」
「そう?普段から俺からの愛を受け止めて自覚してくれてるのかな~なんて思ったんだけどな」
会長が目を薄めて微笑む。その顔が柔らかくそして少し妖しさを含んでいる。迂闊に目を会わせればその黒い目に吸い込まれそうでまともに直視できない。
「自惚れないでください」
何を言っているのか。自惚れてるのは俺の方だ。彼の気持ちに素直に応えられないからこんな口を利いてしまう。
「おや、そんな悪いことを言うのはどの口かな?」
唐突だった。唇を塞がれた。怖いほどにやさしいキスだ。
そうやって、俺を甘やかすのは本当にやめてもらいたいものだ。
その真綿のような愛にゆっくり足を取られてしまいそうになるから。
「ん……」
俺も抵抗できないのだ。同性のキスでありながら、嫌悪することができない。彼の俺に対する気持ちを知っているから。嫌というほどに本人に教えられたから。
そこまで気持ちをまっすぐ伝えられるのはなぜなのだろう。自分には到底できそうにない。
「……何考えてるの?」
唇を離されて目を見つめられ問われる。
「なんでもないです」
すぐさま目を反らず。耐えきれないのだ。与えられる愛情に、俺は揺さぶれ不安になるのだ。
ーー何に不安になっているのかはわからない。
彼の気持ちに対してなのか、それとも自分の中に沸き上がる名状しがたい感情に。
「ふふ、鏡君はかわいいなぁ」
「やめてください」
自分の未熟さに、青さに笑われてる気すらするのだ。会長がそのつもりじゃないにしても。
「もう少し、キスしていい?」
会長はあやすように、丁寧に欲を晒す。
「……」
俺は会長を見た。やっぱり、嫌いにはなれないのだ。
「最初からそう言ってくださいよ
俺が観念すると会長は再び唇を重ねるのだった。
何も考えずに彼に溺れてしまおうか。そんな自分を手放すような衝動に俺はまだ慣れることはできなさそうだ。