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「あはははははははは。ドット抜けだぁ〜。いやぁ、今時のゲームで珍しいなぁ」


 楽しそうに笑うセシルさんに、何度かヒールを貰って視界の点滅は収まった。

 この人……嬉々として落ちてきちゃったよ!

 しかも助ける気はまったく無さそうなんですけどっ。


「よぉし、行けるところまで行ってみようっ」

「え、行けるところって……」


 ぐいっと手を引っ張られて、否応無しに歩かされる。

 と――また足元が無くなったあぁっ!


「うわわわあぁあぁぁっ」

「あははははははは。また落ちてるねぇ〜」

「笑ってる場合じゃないでしょう!?」

「いやいや、これは笑うところだろう」


 どこまで落ちるのだろうか。さっきよりも落下時間が長い気がする。

 ようやく見えない地面に到着すると、ボクの視界は再び赤く点滅した。

 うっうっ。落下による瀕死なんて……。


「おぉ、わんコロ君、見たまえ!」

「うっうっ。何をですかぁ」


 セシルさんが足元を指差すので下を見てみると、そこには町があった。


「え? ボクたち、町の上空にいるの?」

「ん〜。上空ではないだろうなぁ。どっちかというと次元の割れ目的な」

「なんかヤバそうな状況なんですけどぉっ」


 足元に見える町は五角形で、真ん中に塔のようなものが見える。

 ってことはリプラの町か。

 なんだか町のミニチュア模型を見下ろしているような感じだ。


 ただここで問題が発生。

 ボクたち、一歩も動けませんっ。


「ど、どうやって上に戻るんですか? いや、下でもいいんですけど」

「んー。ドット抜けの体験は初めてだからなぁ〜」

「そもそも『ドット抜け』ってなんなんですか!?」

「んむ。ドット抜けというのはだな……なんて説明すればいいのかね……あー、まぁデータ不良か何かで書き忘れたフィールド部分があって、そこが落とし穴みたいになってしまっているのさ」


 フィールドの書き忘れ……。


「落ちた先はワームホールみたいになってて、どこかに繋がっていたり繋がっていなかったり。脱出できるのもあれば出来ないのもある――と」

「脱出出来ないって、どうするんですかあぁーっ!」

「んむ。だから――ポチっとな」

「またGMコールですかあぁーっ! GMさんだって忙しいんですよっ。こんな事で召喚したりしたら、迷惑じゃないですかぁ」

「真っ先に落ちたのは君だろう」

「はぅ」


 そ、そうだった……。

 でも穴があったようには見えなかったし、回避可能だったかも解らないし。


 暫くして、昨日も一昨日も見たGMさんの声が聞こえてきた。


「どーこでーすかー」


 聞こえてきたのは頭上からだ。


「座標をメッセージに送ったのだが、どうやら穴の上側の座標のようだな。その辺にぃ〜、ドット抜けの穴があるので〜」

「すみませ〜ん。落ちました〜」


 セシルさんとボクが叫ぶと、暫くしてGMさんの笑う声が聞こえてきた。その声はさっきよりも少し大きく、たぶん、最初の落下地点なんだろうなと思う。

 そこから暫く歩いてくださいと伝えると、やがてGMさんが降ってきた。


「あははははは。まさか昨今のVRでドット抜けが発生するとは思ってもみませんでしたよ」


 笑っている。GMさんも笑っている。

 ここって笑うところなのだろうか……。


「GM殿、足元をみたまえ」

「え? おぉぉっ! これはリプロの町だっ。へぇ、ここに繋がるのかぁ」

「あの、感心していないで、これ、どうやって脱出するんですか?」


 きゃっきゃと喜んでいるGMさんとセシルさん。やっぱりこの二人、似たもの同士なんだな。


「あぁ、大丈夫ですよ。GMコマンドでちゃんと転送できますから」

「ほっ。よかった」

「いやぁ、ドット抜けを発見するなんて、ラッキーですねぇ」

「え? ラッキーなんですか?」


 頷く二人。

 今時のゲームじゃ、こんなミスはまず発生しない案件だから、体験できること事態が希少なのだとか。

 喜んでいいのか悪いのか。

 いや、運営側としちゃあミスなんだし、喜んじゃダメでしょう。


「これ、すぐに修正できるんですか?」

「すぐにとは……まぁここも進入禁止処置ですかね」

「戻れる状況なら観光名所にもなるのになぁ〜」


 穴に落ちる観光……見に来る人いるのかな……。






 GMさんに地上へと転送して貰い、穴のあった場所は三角コーンとポールとで封鎖。


「それでは、また(・・)見つけたらよろしくお願いします」

「んむ。よろしくされましょう」

「いやぁ、それにしても全力で楽しまれてますねぇ。自分も仕事じゃなければ……っと、仕事に戻らなきゃ。では――」


 また――の部分を強調されてしまった。

 毎度お騒がせプレイヤーだと思われているんだろうな、きっと。


 昨日同様に敬礼をしながらすぅーっと消えるGMさん。

 ボクはペコペコ頭を下げてそれを見送った。


「いやぁ、わんコロ君のおかげで貴重な体験ができた」

「喜んで貰えて何よりです」


 もちろん嫌味で言った。

 でも、隣のセシルさんはにこにこ顔で微笑んでいる。

 本当に喜んでいるんだろうな……まぁいいか。

『ドット抜け』をどう説明したものか悩みました。検索しても液晶モニターのドット抜けとか落ちとかが出てくるばかりだし。そうですよね、昨今のMMOでこんなミス、聞きませんものね。

私が始めてプレイしたMMOにはあったんですよ。まだオープンベータの頃でしたが。

そりゃあもう、結構ありました(笑

そしてそのドット抜けした穴が、ゲーム内の観光名所にもなっていました。

私もそこに落ちて露店を開いたりしていたものです。

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