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「ふははははははははははは。私の漢前度がアップしたぞっ」


 そう言ってセシルさんは、たいそう嬉しそうに『漢気な口元』を装備していた。

 漢気な口元と言っても、それはどう見てもただの枝。漢木が咥えていた、あの葉っぱの付いた枝だ。

 アイテム欄……ええっと、皆はインベントリとか言っていたっけ、それがまたいっぱいになっていたセシルさんには、何一つアイテムが渡っていなかったらしい。

 変わりにボクの所にこの『漢気な口元』が渡っていたようだ。


「でも他のアイテムは地面に落ちて、装備品だけ他のメンバーに渡るって変じゃないですか?」

「いや、そうでもないぜ」

「そうなの? シグルド君」

「あぁ」

「アイテムには等級っていうのがあってね、アイテム名が白で書かれているものはノーマル。緑は――」

「高級だな。『漢気な口元』がそれだ」


 満足そうに笑っているセシルさん。

 高級……聞いてると、そっちの方が値打ちがありそうだ。


「じゃあ、青が名品で、オレンジ色が伝説?」

「そうよマロン君。で、下から順に白、緑、青、オレンジね。あってますよね? セシルさん」

「んむ。恐らくそうだろう。大体他のネトゲでもその順番だしな」

「アンナ、どうして俺に聞いてくれないんだよ」

「え? だってセシルさんの方が詳しそうだし」

「えぇー」

「ふはーっはっはっは。アンナ君は見所があるな。ふはーっはっは、あ。おい、君たち見たまえ!」


 突然セシルさんが言うので、思わずそっちを見てしまった。

 何故か大きな口を開けている彼。


「見たまえ! 口を開けても『漢気な口元』は落ちないぞ!」

「うわっ。本当じゃん! すっげー『漢気な口元』」


 落ち込んでいたシグルド君も、途端に子供みたいなキラキラした目でセシルさんを見ている。

 確かに……どうなってんの?


「こういうの、アニメなんかだとよくありますよね。どんなに喋っても落ちない枝とか爪楊枝って」

「うわぁ〜、まさにそれだよアンナさん」

「かっけーぜ兄貴!」

「ふはーっはっはっは。やはり私にこそ似合うな!」


 大喜びだ。

 まぁ確かにセシルさん向け……かな。


 それぞれに嬉しいアイテムをゲットしたものの、ボクとシグルド君のアイテム、そして装備はまだ使えない。スキル書にも使用レベルがあって、やっぱり8だったらしい。

 全員がさっきの戦闘でレベルが上がったけれど、シグルド君とアンナさんが7。ボクとセシルさんは6だ。


「よぉし。このままレベリングして、全員のレベルを8にしようぜ!」

「私たちは十二時まで頑張るつもりですが、お二人は?」

「んむ。私もギリギリまで遊ぶ予定だ」


 十二時? ギリギリ?


「あの、十二時になにかあるんですか?」

「「「……え?」」」

「え?」






 クローズドベータの日程表。

 18日|(金曜日):17時サーバーオープン。/24時サーバーダウン。

 19日|(土曜日):13時サーバーオープン。/24時サーバーダウン。

 20日|(日曜日):8時サーバーオープン。/22時サーバーダウン。



「ボク、オープン時刻だけ見て満足しちゃってた!」


 今日と明日は日付変更と同時に、ゲームできなくなっちゃうのか。


「クローズドでは様々な不具合に対応しなければならないからな。修正できるものは夜中のうちにやっておくものさ。――というのは建前で」

「建前?」

「んむ。ゲームマスターといえど人間だ。夜は寝たいに決まっているだろう!」

「そ、そうですよね! ボクも徹夜は苦手です。健康第一ですもんね!」

「その通り! 寝ることは至高の喜びであ〜る」

「はい! ボクも寝ている時間が、とっても幸せです!」

「マロン君……セシルさんの言ってる事、間に受けちゃあダメじゃない」

「はい! ボクも……うああぁぁっ」


 そうだった!

 ついさっき二人に、セシルさんの自己紹介は間に受けちゃダメだって教えたばっかりなのにぃ。

 悔しいっ。この人に騙されたっ。


「ふはーっはっはっは。修行が足りぬなわんコロ君。さぁ、では修行の旅に参ろうではないか」

「兄貴! ついて行きますぜっ」

「あ、待って〜」


 ぐすん。

 ボクは走る三人の後ろからついて行った。

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