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「マロン、今のすげくね? すげくねっ!?」
「う、うん。なんだったんだろう。勝手に口が喋って、勝手に体が動いたんだ」
「ほむ。隠しスキルか何かかな?」
「奥義を発見しましたっていうメッセージも出ました。でも――」
レベルも上がったしシステムメニューを出してスキル一覧を見てみるけれど……『打奥義』なんてスキルはどこにも無い。
念のためんにステータス画面も確認したけど、やっぱり無い。
「兄貴の言う通り、隠しコンボじゃねえのか?」
「スキル一覧にないということは、ショートカットへの登録も出来ないという事だな。任意で使えない隠しスキルか」
「いいなぁ。俺も使ってみたい」
シグルド君が憧れにも似た視線でボクを見ている。なんだか気恥ずかしい。
これ、ボクだけの特別スキルなのかな?
「あ、あの! セシルさんっ」
優越感みたいなのに浸りかけたとき、後ろで支援してくれていたアンナさんが声を上げた。その声にセシルさんが振り向く。
「なんだね、可愛い子ちゃん」
「ちょ! あ、兄貴!?」
「ん? なんだね可愛い子ちゃん」
「はへ?」
「セシルさん……今シグルド君の事を――」
「んむ。可愛い子ちゃんだな」
「……アンナさんは?」
「もちろん可愛い子ちゃんだ! 可愛い子ちゃんに男女の国境は存在しないのだよ!」
「じゃあボクは?」
「わんコロ君だな」
なんだろう。
この差別は……。
可愛い子ちゃんなんて言われて嬉しいはずないのに、何故か今は言われない事が悔しい。
「そ、そうじゃなくって、セシ――」
そこまで言うと、アンナさんの言葉は中断してしまう。そのまま宙をなぞる様に、何かの操作をし始めた。
なんだろう? 何をしているんだろう?
シグルド君と顔を見合わせるけど、お互い首を捻るばかりだ。
セシルさんは――後姿で何をしているのか、どんな表情なのかも解らない。
やがて、アンナさんがこくりと頷いた。
「ごめんなさい。えっと、実は――出ましたっ!」
そういってアンナさんは、晴れやかな顔でとあるアイテムをボク達に見せた。
小さな赤い実が房になって沢山繋がった簪。先端には緑の葉っぱが二枚付いていて、シンプルだけどとても可愛らしい物だった。
「で、出たのか!?」
シグルド君が驚いたような、嬉しそうな顔で彼女に近づく。
「うん。女子高生カマウッドから出てたの。でも戦闘中だったから喜ぶタイミングが今になっちゃった」
「ボクとセシルさんが倒したカマウッドからだったのかぁ。よかったね〜」
「ありがとうマロン君」
「ふふふふ。でも出たのはアンナだけじゃないんだぜ?」
シグルド君が不敵に、そして緩んだ顔で宣言する。
「じゃーん! 今インベントリ確認したら、こんなのがあったぜっ」
「え? なになに?」
シグルド君が持っていたのは、どうみても巻物だ。
その巻物にはすっごい達筆で『スキル書』と書かれていた。
「スキル書?」
「おうっ。漢木のスキル『憤怒』ってのが封印されてると書いてあるぜ。これを開いたら修得できるらしい」
「えぇ!? そんなのがあるのっ」
い、いいないいなぁ。
ボクにも何か入ってないかなぁ。
アイテム欄を確認すると――
「ふふ……ふふふふふふ」
「お、おいマロン? どうした?」
「ふふふふふふふふ」
これが笑わずしてどうする。
「マロン君?」
「誰か来てぇー! わんコロ君が壊れちゃったわよぉー! ボスケテーっ」
「ふふふふふふふふふふふふ」
ボクのアイテム欄には、道着アイコンがあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アイテム名:漢着・黒帯 (名品)[150/150]
装備レベル:8
備考:防御力+55 STR+3
植物系モンスターからのダメージ10%減少
闘士専用
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アイテム名:漢気な口元
装備レベル:-
備考:LUK+2
これを咥えるとかっこよく……見える気がする。
口元アクセサリー
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
道着だ!
しかも闘士専用装備!
もうこれでもかってぐらい、顔が緩んでしまうっ。
「おぉ。すっげーじゃん! 皆良い物ゲットできたんだ」
「よかったわねマロン君。私の簪も『名品』になってるけど、これがアイテム等級よね?」
「だな。俺のスキル書なんて『伝説』だぜ! アイテム名の文字色はオレンジだけど、『名品』のほうは?」
「「青」」
同時にボクとアンナさんが答える。
あれ? そういえば一言も喋ってないあの人は……。
……うっ。
なんだか哀愁の漂う背中が……。
「インベ――リ……いっぱいで……」
何か呟いてる。
インベ? いっぱい?
あ、そういえば……
「インベントリいっぱいでアイテムがあぁぁぁっ!」
「やっぱりあなたですかぁぁっ!?」
彼の足元に、いくつものアイテムが散乱していた。




