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 復讐が終わったとき、セシルさんのHPも赤く染まっていた。


「うっうっ。私の可愛い楽器ちゃん」


 折れた竪琴に頬ずりしながらしくしく泣く彼。

 確かに全然楽器はドロップしないなぁ。


「ま、まぁとりあえずHP回復したらどうですか? 真っ赤ですよ」


 HPが赤いのは、マックスの九割が削られてから。次に殴られたら確実に死にそうだ。


「回復か……初心者ポーションも残り五本だな」

「結構飲んでますね。ボクはまだ三十本以上残ってますが」

「VITも1だからな。食らうとダメージがでかい」

「一度町に戻りますか? 鞄の空きも少なくなって、そろそろやばそうなんですけど」


 いろんなモンスターと戦ったから、ドロップするアイテムの種類も必然と多くなる。

 アイテムは四十種類までしか持てないから、数種類のモンスターと連続して渡り歩くと鞄の空きが無くなってしまう。


「私は今ので空きがゼロになった。ほれ」

「え?」


 ほれっと言って彼が地面を指差すので見てみると、木の根のようなアイテムと木の実のようなアイテムが落ちていた。


「これって、鞄に空きが無くなると地面に落ちてしまう仕様なんですかね」

「大抵のMMOやVRではそういう仕様だ。君、ちょっとアイテムを持ってくれないか?」

「はぁ。あと五枠しか空きがないですが」

「んむ。そうか。被って持ってるアイテムを預かって貰おう」


 セシルさんが腕時計を押し、空をなぞる様な仕草をする。

 へぇ、他の人がシステム画面を出してても、こっちから見えない仕様なんだ。

 やがて《セシルさんから取引要請が送られました》というメッセージが表示される。

 はい――のボタンを押すと、左右に分割されたウィンドウとボクのアイテム一覧が出てきた。

 分割されたウィンドウの右側に、次々とアイテムが表示されていく。


「このぐらいか」

「ボクのアイテムと混ざりそうなんで、数を覚えておきますね」

「混ざっても構わないだろう。町に戻ったら清算して、お金を分配するから」

「あ、そういう風にするんですね」

「まぁその辺りはゲームによっても違うし、プレイヤーによっても違う。自分のインベントリに入った物は自分の物。そういうスタイルのほうが多いよ。ただ他人にレアが行くと文句言うのもいるがね」


 まぁ気持ちは解らなくも無いけど……。

 

「では戻るとしよう。『スピードアップ』」


 移動速度が早くなる魔法を貰い、ボクたちは町に向かって走り出す。

 走りながらふと気づいてしまった。


「そういえばセシルさんって、神官ですよね?」

「んむ」

「だったら回復はアイテム使わなくて、魔法を使えばいいんじゃないですか? それともこのゲームじゃ、回復魔法はレベルが高くないと覚えられないとか?」

「いや、寧ろレベル1からデフォで修得していたが?」

「ならどうして魔法を使わないんですか!?」


 ボクが大声を出すと、前を走っていたセシルさんがピタリと止まった。


「ヒールか……無意味なのだよ」

「無意味って、どうして?」


 つられて止まったボク。

 取引の時のように空を操作していたセシルさんは、しばらく作業をした後魔法を唱えた。


「『癒しの御手 ヒール』」


 言葉と同時に彼の指先から緑色の光が発せられ、ポロロンという音と共にボクを包む。

 回復エフェクトが現れ、回復量を示す数字が出てくる。

 その数字は――


「10……」

「ちなみに消費MPも10だ。CTもあるってのに、回復量10の為に魔法を使うなんて馬鹿げているだろう?」


 なんてことだ……。この人……ヒーラーなんかじゃないっ!


「初心者ポーションなんて80も回復するんだぞ。アイテムのほうが優秀だろう!」

「あなたがゴミ過ぎるんですよ!」

「はっはっは。正論だ。さぁ、回復アイテムの補充もしなきゃならないのだから、帰るぞ! 急げばまだ間に合うかもしれないし」

「何がですか?」

「ふははははははは。戻れば解る」


 そう言ってさっさと走り出してしまった。


 この人……ヒール量があんなんでどうやって神官やっていく気なんだろう。

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