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自力で転生した少女  作者: 10bit
第9章 攻略
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第74話 合同パーティー

 地下10階、この階層のフロアボスと思われる悪魔の部屋。


 私たち合同パーティーが全員ボス部屋に入る。


 前衛は既に走り出し、魔法使いは攻撃魔法の準備をしている。



『我が主が為、汝らを葬り去ろう。』



 ボスへと辿り着けた前衛が、無防備な悪魔へ攻撃を入れる。そして、魔法使いが攻撃魔法を使い、何人かが使った重力魔法で、飛び上がろうとした悪魔を床へと叩きつける。そのまま交互に重力魔法を使って床に縛り付け、前衛がそれに群がるように攻撃する。


 …まったくもって酷い有様である。


 それでも悪魔が暴れだすまで、1分弱掛かった。そして、そこで何発かの即死級魔法が発動する。悪魔は黒い靄となって消えていく。


 …這い上がる闇すら使わせないとは。



『まだだ…。まだ死ねぬ!!』



 悪魔が空中で覚醒した状態で復活する。そこへ覚醒スキルを使った前衛の鳥人が数名突撃し、念のため即死級スキルを使っておく。悪魔は10秒も経たずに再び黒い靄となって消えていく。それでも、悪魔がいくつかの魔法を放ったため、相当なダメージを受ける。だが、魔法防御支援特化の回復職による支援魔法と、宝玉による属性耐性によって大きく軽減されたため、余裕をもって全員生きている。



『この魂、削られ切るまでは!』



 悪魔が先ほどと同じように、空中で覚醒した状態で復活する。こちらも先程と同じように、覚醒した数名の鳥人が突撃する。今回も悪魔を黒い靄に変えれたが、状態異常魔法を使われてしまった。回復職が慌ただしく治療魔法を掛けていく。



『まだだ。まだ死なん!』



 …しぶといな、ほんと。


 先程の繰り返しである。だが、後3回分くらいしか鳥人の前衛が残っていない。それまでに終わってくれるといいのだが…。


 と思っていたら、悪魔が即死級魔法を使ってきた。さすがに耐えられないので、ターゲットになった人はタイミングを見てログアウトすることになった。



『まだだ。まだ死なん!』



 あ、台詞が同じになった。何回繰り返すのだろう…。




『まだだ。まだ死なん!』


 ついに前衛の鳥人たちが覚醒スキルを使い切ってしまう。そこで、魔法使いが重力系魔法を使って床へ叩きつけようとする。が、耐えられてしまう。

「ちょっ!?なんで耐えれるのよ!」

 ルアノちゃんが叫んでいる。だって、魔法使いたちが耐えられてしまったのを見て、10人以上が同時発動したのに耐えられてしまったのだから。10人同時発動しても10倍にならないのだろうか。


 とりあえず、ちょっとピンチである。

「全員、魔法攻撃に備えろ!」

 大人数パーティーのリーダーが指示を出す。魔法攻撃に対する障壁を張ったり、魔法攻撃に強くなるガードスキルを使ったり、身代わりになる覚悟で火力のある人をスキルでかばったりしている。


 こうやって見ると、私たちが使えないスキルも結構あるんだな、と思う。


 そうこうしている内に、悪魔が大量の魔法陣から魔法を発動させる。高火力の一撃を持つ一部の前衛が、悪魔に飛びかかろうとするが、悪魔は魔法を放ちながらも高速で移動して回避する。


 …よし、久々の回避だ。


 私は宝玉により大きく上げた素早さで、降り注ぐ魔法を回避する。すべては無理でも、結構な数を回避できた。


 メヴィの言っていた通りだね。


 1分が経ち、即死級魔法が発動する。悪魔が再び黒い靄となる。こちらは…1割程度の人がやられたようだ。意外とみんな強いな。



『まだだ。まだ死なん!』


 またそれか。


 とか思っていたら、前衛の一人が悪魔の真下へ素早く移動し、軽くジャンプする。すると、その前衛に使われていた即死級魔法が発動する。素早さ特化だったのか、かなりの素早さで近付いたため、悪魔へとその即死級魔法が当たる。悪魔とともに叩き潰されたその前衛は、光の粒子となって消えていった。悪魔は直撃ではなかったせいか、床に叩きつけられるだけで倒れなかった。そこへ攻撃力特化の前衛が強力な一撃を入れる。悪魔が黒い靄となる。


 仲間を犠牲にするとは。大人数ならではだなぁ。


 その後、何度かそうやって悪魔を倒していると台詞が変わる。



『まだ、まだ…!ぬおおおおおおお!』



「皆、悪魔が今までと変わるかもしれない!気をつけろ!」

 大人数パーティーのリーダーが指示を飛ばすと、悪魔が再び姿を現す。



『我が力に蝕まれるがいい!』



 このタイミングで来るか。


 皆が下を向いて、闇が這い上がってきたところでジャンプする。即死級魔法を当てにいく前衛は悪魔の真下へジャンプする。



『爆ぜろ!』



 え?


 即死級魔法の発動した音が聞こえた直後、足元の闇が一瞬だけ帯電し、紫色の炎を上げて爆発する。

「っ!?治療魔法だ!」

 誰かが叫ぶ。


 動けない。また麻痺かい!


 何とか動ける回復職が治療魔法を掛けていく。が、初めてのパターンのせいか、治療魔法の組み合わせがなかなか見つからないようだ。

 悪魔は動ける人が覚醒スキルを使って、トドメを刺したようである。



『まだ、まだ…!ぬおおおおおおお!』



 まだ生き返るの!?


 何とか私の麻痺を動ける回復職が治してくれた。私はすぐさま動けないメンバーを優先的に治していく…ってランダム?!人によって状態異常が違うとか…。



『我が力に蝕まれるがいい!』



 まずい。ひじょーにまずい。まだ動けない人が半分以上居る。回復だって間に合っていない。


「火力の高いやつを優先的に生き延びらせろ!動けなければ担げ!」

 その手があったか!回復が間に合わないので犠牲になる人も多いが仕方がない。


 足元の闇が上がってくるのを見て、ジャンプする。ジャンプ出来なかった人たちが一斉にログアウトする。



『爆ぜろ!』



 再び闇が爆発する。即死級魔法の発動音が聞こえたが悪魔に当たった様子はない。悪魔には即死級魔法の魔法陣が頭上に出ているので、1分経てば倒せるだろう。


 今回は麻痺にならなかったため、治療に駆け回る。しかし、悪魔が大量の魔法陣を展開し、魔法を放ってきた。動けずにどうしようもないメンバーが次々にログアウトしていく。一方で、かばって死んでいく人もいる。状態異常やHPが十分に回復できなかったせいで、死んでいく人もいた。


 気付くと、1割弱、50人ほどしか残っていなかった。私たちのパーティーはミリーナさん以外は残っている。ミリーナさんはマローネとルアノちゃんをかばって死んでしまった。


 1分が経ち、悪魔がようやく即死級魔法で倒れる。



『まだ、まだ…!ぬおおおおおおお!』



 ほんといい加減にして!と思ったら、なかなか悪魔が姿を現さない。


「どこに行ったにゃ?」

「下だ!」

 大人数パーティーのリーダーが下を見て叫ぶ。アーニャの足元辺りの床に、大きな黒い影が現れ、そこから悪魔がぬるりと姿を現す。アーニャは足を掴まれるが、覚醒スキルを使って逃げようとする。だが、悪魔の力が強いのか逃げ出せない。アーニャは逃げ出せないと分かると、足を掴まれたまま悪魔へ攻撃する。アーニャが覚醒スキルを使ってからここまで0.1秒も掛かっていない。


 悪魔はそんなアーニャを闇に包む。

「にゃ?!」

「ログアウトするのじゃ、アーニャ!」

 メヴィが叫ぶ。アーニャはそれを聞いてログアウト処理を始めたが、間に合わなかったようだ。


 アーニャが近くに居たメンバーを瞬殺していく。アーニャは5人ほど殺してログアウトしていった。

「こんな時まで、はた迷惑なやつじゃな…。」

 そう言ってる間にメヴィが覚醒して悪魔を倒していた。


 おぉ、やるねぇ。



『まだ、まだ…!ぬおおおおおおお!』



 …本当に死ぬんですか、こいつ。


 悪魔は、今度は空中に姿を現す。



『我が力に蝕まれるがいい!』



 またか!


 私たちは足元の闇を見ながら、タイミング良くジャンプする。



『爆ぜろ!』



 うへ。また麻痺ったよ!


 回復職が私の麻痺を治しに来てくれる。だが、悪魔の魔法陣が大量に出て…あ、プラノが倒した。悪魔は空中にいたのに、覚醒スキル後に飛び乗って倒していたよ…。


 私は麻痺が治ると、すぐさま他のメンバーの治療に向かう。



『まだ、まだ…!ぬおおおおおおお!』



 うおっ!?悪魔が目の前に姿を現す。今までより生き返るの早くない!?


 私は悪魔の降り注ぐ魔法と殴りかかる攻撃を回避しながら、治療を進める。が、まだ動けないメンバーが次々と悪魔に倒されていく。


「でやあああああああ!!」

 シャムが覚醒スキルを使って、つい最近覚えたスキルを放つ。シャムの双剣が交互に突き出され、赤や緑の光の残像を残しながら、超高速で斬りつけていく…が、悪魔は一突き目で既に倒れて黒い靄となって消えた。シャムがいまだに空を切っている。


 覚醒状態だから動きが早すぎてスキルキャンセルできないんだね…。



『まだ、まだ…!ぬおおおおおおお!』



 今度は何をしてくる?


 悪魔が空中に現れると同時に、紫色の稲妻が部屋全体に迸る。それによって全員がダメージを受けた。



『ぐおおおおあああああああ!』



 悪魔の体が帯電し、再びさっきの魔法を使う雰囲気だ。やばい。回復が全然間に合わない。先程の稲妻で死んだ人もいるが、その後、治っていなかった状態異常のせいで死んだ人もいる。シャムとルアノちゃんも状態異常で死んだっぽい。


 残るはメヴィ、プラノ、マローネ、私、鳥人10名のみ。大人数パーティーの人たちは全員やられてしまったようだ。鳥人たちは状態異常に掛かっていないため、次の稲妻も耐えれそうである。

逆に私たち4人は状態異常の影響もあって、恐らく次で死ぬ。既にマローネと鳥人の魔法使いが即死級魔法を使っているので、1分後には倒せると思うが…。



 悪魔の体から、再び部屋全体に紫色の稲妻が迸る。そして、私は光の粒子となって消える…前に、つい最近覚えたばかりの魔法をメヴィに使う。




「シルが戻ってきたにゃ!」

「シルちゃん、こっちこっち!」

 私が地上に戻ると、アーニャとミリーナさんが私を呼ぶ。

「それにしても蘇生魔法かぁ。しかもあのギリギリのタイミングで使うとか、さすがだよシルちゃん!」

 シャムが私を褒め称える。


 そう、私が使ったのは蘇生魔法だ。あれは光の粒子が消えきる前に使うことで、蘇生させることができる魔法なのだが、当然、死んでなければ何の効果も発揮しない。今回、稲妻が来る直前で使うことで、蘇生魔法の発動に掛かる時間を利用し、稲妻が来た後に発動させたのである。蘇生魔法の発動に掛かる時間はかなり短いので、いけるかどうかは運次第といった感じだったのだ。

 ちなみに蘇生魔法は覚醒スキルと同じく、ボス戦では1回しか使えないくらいにクールタイムが長い。


「蘇ったメヴィはその後の稲妻に耐えれてるみたいね。」

「あれ?どうしてかしら?」

 マローネがアーニャとミリーナさんが出しているモニターを見ながら、メヴィの様子を伺う。ルアノちゃんはメヴィが耐えれていることが不思議なようだ。

「一度死んで蘇ったから、状態異常がすべて解けたんだよ。だから受けるダメージが減って、回復アイテムだけで耐えれたってわけだね。」

 私が解説する。


 私もアーニャたちのモニターを見ると、ちょうど悪魔が黒い靄となって消えるところだった。メヴィと鳥人10人が生き残っている。


 まだ生き返るのだろうか?


 …生き返った。鳥人の魔法使いがすぐさま即死級魔法を使うが、悪魔の大量の魔法陣から放たれる魔法に鳥人たちが全滅する。…ほとんどそっちに魔法が飛んでいったもんね。


 残るはメヴィのみ。メヴィは降り注ぐ魔法を回避し続ける。そして、即死級魔法の発動。



 今度こそどうだ…!

















 悪魔が再び空中に現れ、足元が闇に埋まる。

「ああああああああ!!」

「まだ倒れないわけ?!」

「本当に倒し続けていれば倒せるのものなのかしら…。」

「ここまできたのに…。」

「ここまでにゃ…。」

 シャム、ルアノちゃん、マローネ、ミリーナさん、アーニャ。そのどれもが悲観する言葉だった。


 足元から這い上がろうとする闇。これを耐えれても、その後の状態異常でメヴィは厳しい状況に追い込まれるだろう。運良く動けたとしても、状態異常を抱えながらその後の魔法に耐えられる可能性はゼロに近い。支援魔法すらまともに掛かっていないのだ。仮に耐えられたとして、今のメヴィには悪魔にダメージを与える手段がない。八方塞がりだ。



 皆が諦めたその時だった。


「ちょっ、ええええ?!」

「なんでにゃ?!」

 んなっ?!



 メヴィが覚醒スキルを使い、赤いオーラに包まれる。そして闇が這い上がるより速く、悪魔へと飛び乗る。そのまま悪魔へ、いつもの目にも止まらぬ連撃を繰り出す。メヴィはつい最近覚えたコンボスキルのおかげで、連続でスキルを繋げるとスキルの威力を上げることができる。ただ無限に上がり続けるわけではなく、一定回数で頭打ちにはなるが。それでも悪魔を倒すには十分すぎる火力のはずだ。



 そして、1秒。たった1秒で100発以上の攻撃を入れ、悪魔を黒い靄へと変える。



 …。



 沈黙。



 皆がモニターをじっと見つめている。




 そして、モニターに勝利の文字が浮かびあがる。



『うおおおおおおおおおお!!!』

 地上に居る人たちが一斉に歓声を上げる。


「やった…やったよ!」

「私たち、勝ったのね…!」

 シャムとマローネがじわじわと勝利の実感を得ていっている。


「やったにゃあああああ!!」

「ついに、ついにやったのね!」

 アーニャが何度も飛び上がって、空中でくるくる回っている。ルアノちゃんがいつになく飛び跳ねて喜び、プラノとハイタッチしている。


「やったね、シルちゃん!」

 ミリーナさんが私を抱き上げて、高い高いをしている。私は赤ちゃんじゃありません。



「皆の者!やったぞ!ついに地下10階攻略じゃ!!」

『うおおおおおおおおおお!!!』

 再び歓声が上がる。メヴィが戻ってきたのだ。私たちはメヴィに駆け寄る。


「さすがだよ、メヴィ!」

「メヴィはやる時はやると信じてたにゃ!」

「おめでとう、メヴィ!」

「ありがとう、メヴィ!」

「本当に凄いね、メヴィ!」

 よく分からないけど、あの状況でまさか悪魔を倒すなんて、さすがだよメヴィ。




「ついでに地下11階への転移魔石を大量にドロップしたのじゃ!これで地下10階までを未攻略のものでも地下11階へ行けるぞ!」



 それを聞いた皆は一瞬動きを止める。



 大人数パーティーのリーダーであり、代表である男が静かに口を開く。

「…まだ先があるのか?」

「何を言っておるんじゃ?地下100階まであるぞ。」

「ひゃっ!?」

 どよめきが広がる。



 メヴィ。この前、ミリーナさんたちが地下100階まであるって知らなかったでしょ…。




 この章はここで終わりです。今日は後で設定資料と次章を1話投稿します。

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