第7話 採取依頼
「ありがとう、シルちゃん。確かに受け取ったわ。ついでだから何か依頼を受けてみたらどうかな?あ、おじさん、魔石は後どれくらい買い取れそうですか?」
「この大きさの魔石ならもう買取はできないな。元々需要も少ないし、今回ので一気に在庫が増えたからな。」
魔石の買取はもうしてくれないらしい。需要も少ないそうだから、すぐには在庫も減らなさそうだ。
「うーん、そうするとしばらくは依頼で稼ぐしかなさそうだね。おじさん、どんな依頼があるか見せてあげてください。」
するとおじさんがカウンターに紙束を置いた。
「今ある依頼はこんなもんだ。お嬢ちゃんが受けれる依頼となると、討伐か採取の内、随時出されてるやつだな。他の依頼は駆け出しには受けさせられないな。」
そう言うと、紙束の中から3つ抜き出して見せてくれた。
「町の周囲に住むレベル30以上の魔物の討伐依頼と、森に自生する薬草の採取依頼が2種類の計3種類…か。」
「レベル30以上の魔物はこの町の魔物避けが効かない魔物のことだから、シルちゃんには厳しいと思うよ。やるなら採取だね。この2つなら同時に受けれるし、期限もないから両方共受けて置いたらどうかな?」
「そうなんですね。では、この2つの依頼を受けます。」
「あいよ。採取対象の草は見たことないだろ?サンプルを持ってきてやるよ。ちょっと待ってな。」
おじさんが奥に入っていき、しばらくすると2つの草を持ってきた。これが採取対象なのだろう。
「これが採取対象の草だ。特徴的な見た目をしてるから間違えることもないだろう。まぁ間違えたとしてもこっちで受け入れ時に弾くから心配しなくていいがな。念のため、この2つはくれてやるから見ながら採取するといい。」
「ありがとうございます。」
「良かったね。シルちゃん。」
そうして依頼を受け、仮身分証ももらった私は、早速採取に向かうため冒険者ギルドを出た。
「親切な人たちばかりで助かりました。」
「あはは。それはシルちゃんがまだ子供だからだね。なんというか、こう母性本能をくすぐると言うか。言葉遣いも丁寧だし、その上目遣いとか…ね。」
「あ。」
深めのフードを被ったままだったので、顔をあまり上げずに目を合わせていたら上目遣いになっていたらしい。
加えて、13歳ではあるが身長は130cmくらいしかない。7歳まで十分な食事が取れず、成長が遅れているのだ。恐らく実際の年齢より幼く見られているのだろう。
頭の突起を見られるとどういう反応をされるか不安なので、フードを外すわけにもいかない。
「それにしてもほっんとーに可愛いよね、シルちゃんって。シルちゃんみたいな妹がいたら幸せだろうなぁ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ふふ、大丈夫。取って食べたりはしないよ。」
そんな話をしながら、町の入り口に到着した。
「仕事があるから町の外までついて行けないけど、気を付けてね。あれだけ魔石を持ってるってことは魔物に襲われても大丈夫だとは思うけど、採取に夢中になって背後から襲われないようにね。」
「はい。気を付けますね。」
直接魔物とはやり合ったことがないので、実際のところかなり不安だ。念入りに警戒することにしよう。
町を出た私は、早速薬草が生えているとギルドで教えてもらった場所へ向かう。
…思ったより簡単だった。魔物避けの外側ではあるが、それほど森の奥に入らなくてもたくさん生えていたのだ。しかも時間は昼。この辺りの魔物は夜行性なので、昼間に見かけることは少ないらしい。
手持ちの袋いっぱいに薬草を入れ、ギルドに持ち帰った。今回の依頼対象の薬草は単価がものすごく安いので、袋いっぱいでも銅貨3枚にしかならなかった。それでも一日中採取すれば、銅貨20枚くらいは稼げるだろう。監視人への支払いが銅貨30枚なので、銅貨10枚の赤字だが、魔石を売った残りが銅貨470枚ある。次の稼ぎ口が見つかるまで、しばらく採取を頑張ることにしよう。
その夜、ミリーナさんの家に泊めてもらった私は、食費も必要なことに気付いた。…晩ご飯はいただけることになったが、朝と昼は買わなければ。
一日の赤字額は銅貨20枚になった。