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自力で転生した少女  作者: 10bit
第9章 攻略
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第59話 炎

 今日は地下4階のボスを倒す予定だ。

 アイテムも揃え、地下4階ボスの部屋へと入る。


 入り口が閉まると、黒い靄が集まるようにして、紫色の大きな狼型のモンスターが現れる。それと同時に、そのボスの周囲に10体の紫色の狼が現れる。

「先手必勝じゃ!」

「了解にゃ!」

 メヴィの掛け声とともに、メヴィ、プラノ、アーニャの3人がボスへと突撃する。

「周りのモンスターは任せて!」

 ミリーナさんがスキルを発動させると、盾に黒とオレンジの光が線状にして集まり、それに惹き付けられるように取り巻きの10体の狼がミリーナさんへと襲い掛かる。ミリーナさんはそれをガードスキルを駆使して耐えている。

「はにゃにゃ!?」

 メヴィたちが覚醒スキルを使って攻撃を始めたが、アーニャは動きに慣れないようで転びかけたり、飛び上がり過ぎたりしている。それでも、多少の攻撃はボスから食らっているが、およそ1秒に十発以上は攻撃を叩き込めている。

「ほー、やるねぇ。」

「先を越されたぁ…。」

 私が感心する横で、シャムが嘆いている。魔人である2人を除いて、アーニャがまともに覚醒スキルを使いこなしていることにショックを受けているようだ。

 後方からはマローネとルアノちゃんが昨日覚えた魔法で攻撃している。時々ボスの突進で吹き飛ばされているが、問題なく耐えれているようだ。適宜私がヒールを掛けていく。

「ちっ!やはり覚醒スキルだけでは倒せんか!」

 どうやらメヴィたちの覚醒スキルが切れたようだ。クールタイムの関係で今回のボス戦ではもう使えないだろう。

 覚醒スキルが切れた後もメヴィたち3人はボスに追随し、攻撃を入れ続けている。ただアーニャは追随しきれない時もあり手数が減っているようだ。

「今回は本当にやることないなぁ…。」

 シャムはメヴィたちの攻撃をただただ眺めている。たまにボスが突進してきた時に攻撃を入れようとするが、躱されてしまい当たらない。

 メヴィたちの覚醒スキルが切れてだいぶ火力が落ちたものの、マローネとルアノの魔法とアーニャの参加で以前地下4階のボスと戦った時と比べると何倍もの火力になっている。


 戦闘開始から数分、戦闘に変化がなくなってきたところで、ボスが火炎を吐いてきた。炎は部屋全体に広がり、メヴィやプラノでも回避できない状態になる。

「やっかいじゃのぅ。」

「……余裕。」

「あつっあっついにゃ!」

 炎に焼かれながら私たちは戦闘を続ける。

「熱いのに耐えてるってなんか不思議だねぇ。」

 装備に炎耐性が付いているので、実際ダメージは大したものではない。だが、ダメージが全くないわけでもないので、熱さを感じるのだ。この世界では防ぐと言えば障壁魔法であり、障壁魔法の効果が持続する限りにおいては熱さを感じることはない。だからシャムは今の状況を不思議に感じていたりする。

「うにゃっ?!にゃついにゃ!」

「うるさいぞ猫!涼んでないで、攻撃に参加するのじゃ!」

 炎に包まれながらボスにも攻撃され、アーニャが焦っている。アーニャは少しでも熱さをごまかそうと体をパタパタと叩いていたが、メヴィに怒られてしまった。

 炎で見えづらいせいか、前衛3人の動きが少し鈍っている。それでもメヴィとプラノはボスからの攻撃をすべて躱している。

 炎に包まれて持続的にダメージを受ける形となり、今メヴィたち前衛3人のHPはかなり削られているだろう。回復アイテムを使っているとは思うが、私はヒールで援護しに行く。特にアーニャが回復し忘れて死にそうな気がする。

「助かるのじゃ、シル!」

「一応死なないように掛け続けるけど、HPやばいと思ったら回復アイテム使ってね!特にアーニャは回復し忘れないように!」

 ボスの吠える音や炎の燃え盛る音の中でも聞こえるように、メヴィと私は叫びながら言った。


 その後、部屋の炎は少しずつ消えては、ボスの吐く火炎でまた追加されてを繰り返していた。ちなみにボスと10匹は炎に対して完全耐性があるようで、自身の炎でダメージを受けることはない。

 そんな戦いを続けること20分、マローネの魔法を受けてボスが黒い靄となって消えていった。残る10体も皆で瞬殺し、地下4階のボス戦勝利となった。

「よし!やったのじゃ!」

「やったね!」

「や、やったにゃ!?こんな少人数で倒すにゃんてすごいにゃ!」

 シャムがメヴィとハイタッチし、アーニャが飛び上がって感激している。プラノはいつものように静かにガッツポーズを取っている。

「今日のトドメはマローネだったね。おめでとう!」

「やったわね、マローネ。」

「ありがとう、シル、ルアノ。」

 私たち後衛も勝利に微笑む。

「さあ、今日も酒場に祝杯を上げにいこっか!」

 ミリーナさんの掛け声を合図にみんなで酒場に移動した。


「…今日はちと寂しいのぅ。」

「まぁ特別目立ったボス戦じゃなかったし、しょうがないのかなぁ…。」

 今日はメヴィとシャムも私たちと一緒に飲んでいる。今回も一応ランキングに乗ったりはしたが、モニターで大々的に紹介されてはいないようだった。どうやら今日は初の地下8階ボス戦が行われたらしく、その映像がよく流れている。それでも私たちのボス戦に注目してくれていた人たちがお祝いの言葉を掛けてはくれたのだが。

「しかしあれはすごいね…。」

 私はその初の地下8階ボス戦の様子を見て、あまりの酷さに驚いた。

「様子見ではあるみたいだけれど、ボスの攻撃が尋常じゃないわね…。」

「ボスが2匹もいるわ…。」

 マローネとルアノちゃんも驚いているようだ。

「あれって、全然ダメージ通ってないよね?」

 ミリーナさんも口を開けて驚いている。

 地下8階のボス戦には100人ほど参加していたみたいだったが、ものの数秒で前衛が崩され、1分も経たずに撤退を余儀なくされてしまった。前衛から順に攻撃されてはいたのだが、あんなにすぐに前衛が崩されては後衛もたまったものではない。

「…あれこそわらわたちの出番ではないかのぅ。」

「え、どうゆうこと?」

 メヴィの言葉を理解できず、シャムが尋ねる。

「あのボスの攻撃を見る限り、防御力で耐えるのは無理じゃろう。ならば回避すればよいのじゃ。わらわたちならそれが出来るのじゃ。幸い、前衛から順に攻撃するようじゃしの。前衛が倒れなければ後衛は比較的安全じゃろ。」

「なるほど!確かに私たちの出番だね!」

「シャムは回避できないでしょ。」

 メヴィの説明に納得したシャムが意気込んでいたが、マローネが冷静にツッコむ。うん、メヴィの言う私たちにシャムは入ってないかな。

「アーニャにはさすがに無理と思うにゃ…。」

「おぬし、確かステータスは素早さ特化ではなかったな?地下5階から素早さ全振りのキャラクターを作成して慣れておくとよい。素早さ特化にすれば余裕のはずじゃ。なに、覚醒スキルを使った時より遅いから簡単じゃ。」

「これ以上素早くするにゃ!?」

「確かに、素早さ特化はいろいろとメリットが大きくなってきたしねぇ。」

 私もメヴィの意見に賛成する。ボスが段々強くなってきたため、どうしても装備が防御寄りになってしまい、火力を上げにくくなってきているのだ。素早さ特化ならそこまで防御寄りの装備にする必要はない。加えて、素早いボスに対して命中率が上がるのも大きい。いくら火力があっても当たらなければ意味がない。今回のシャムのようなことになってしまう。

「私も素早さ上げたほうがいいかなぁ。」

「おぬしも多少振った方が良いかもしれんな。地下5階のボスはそこまで素早くないようじゃが、今の内から少しずつ振って慣らしていくと良いのではないかのぅ。」

 シャムも素早さを上げ始める方向でいくようだ。

「アーニャも少しずつ慣らしたほうがいいと思うにゃ。」

「おぬしは全振りでいけるはずじゃ。」

 アーニャもゆっくりで、と主張したが認められずしょんぼりしている。

「よし!さくっと地下8階まで行って再びトップに躍り出るのじゃ!」

「おー!」

 メヴィの意気込みを聞いて、シャムも元気よく声を上げた。


 さて、うちらが地下8階に到達するまで攻略されずにいるかなぁ。




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