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自力で転生した少女  作者: 10bit
第8章 再会
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第54話 反射

 ルアノちゃんが仲間になってから2週間が経った。ルアノちゃんはヴィアナ様と暮らしながら、日中こちらへ来て一緒にダンジョン攻略をしている。初日にルアノちゃんが自分の家に帰った時はプラノがショックを受けて、そのまま不貞寝してしまった。

 ミリーナさんがうまく交渉してくれたようで、ルアノちゃんは1週間ほどで地下2階をクリアした。その後はミリーナさんとともに私たち地下3階組に入り、レベル上げをした。


 そして今日は地下3階のボスに挑む。


「しかし、あやつらも情けないのぅ。ダンジョン解放から3ヶ月目には地下3階に到達しておるくせに、2ヶ月経った今でもボスを討伐できておらんとはな。」

「魔人の鉄槌が下っちゃうかもねぇ?」

「そ、そんな、約束は地下10階を1年以内じゃない?!理不尽よ!」

 ルアノちゃんが私の言葉に慌てる。ちなみにルアノちゃんにはデミアルト様に伝えたのと同じように自己紹介している。メヴィ曰く、その方が面白そうだから、だ。

「……魔人は自由気まま。ありえる。」

 プラノが煽ると、ルアノちゃんはおろおろと狼狽えてしまっている。プラノの顔がこころなしかニヤニヤしている気がする。

「さて、冗談はそれくらいにして今回の作戦を確認するぞ。」

 ルアノちゃんが冗談だったの?と口をぽかんと開けて呆けてしまっている。

「地下3階のボスはダメージ反射と自動回復を持っているようじゃ。そして30分毎に大技を使ってきて、その30秒間の間だけダメージ反射がなくなるそうじゃ。じゃが、その30秒だけ攻撃しても自動回復で次の30分までに回復されてしまうようじゃな。かと言って、通常時のダメージ反射は結構なもののようじゃから、通常時に攻撃は難しいじゃろう。

 そこで、今回わらわたちはダメージ反射装備を付け、わざとダメージを食らい、ダメージを反射させて攻撃をする。HP上昇の装備と合わせてがんがん反射するのじゃ。当然、回復が大変になるじゃろうが、各自回復アイテムを浴びるように使って耐えるのじゃ!」

 今回はメヴィとプラノ、そして私も攻撃を受ける予定だ。この階のHP上昇系装備は2階の時と比べてかなり性能が良い。この階限定ではあるが、今回の作戦に役立つだろう。特に今回は、HP上昇系装備の中でも防御力の低いものを選んだ。その装備はドロップ率が低かったが、他のプレイヤーが安く売っていてくれたので簡単に入手できた。安いと言っても店売り価格の100倍以上だが。

「……我の完全回避記録が途切れる。」

 今回の作戦にあたってはメヴィとプラノが初めて攻撃を食らうことに悲しい顔をしていた。メヴィは早々に割り切ったみたいだが。

「それにしても、わざわざ防御力を落としてまで受けるダメージを増やして反射するなんて、よく考えついたわね。」

 マローネが作戦に感心している。前世では割と使われていた作戦である。


 確認も済み、回復アイテムを買えるだけ買った私たちは、地下3階のボス部屋へ入る。いつもと同じく入り口が閉じると、上から大きな黒いゴーレムが降ってきた。キングダークゴーレムらしい。地下1階は薄い灰色、地下2階は濃い灰色で、今回は真っ黒である。次は何色だろう。

 私たちは全員でボスに近づいていき、できるだけ無防備に攻撃を受ける。結構痛い。ボスの攻撃で吹き飛ばされてもすぐにボスに近寄る。回復アイテムはずっと使いっぱなしである。想像以上にHPの減るペースが早い。

「うっ!分かっていたけど、痛いよねこれ。」

 ミリーナさんが私と思っていたことと同じ感想を漏らす。

「ふははは!さあ、どんどん攻撃してくるがよい!」

 メヴィは気が狂ったかのように笑いながら攻撃を受けている。痛みを苦にもしていないようで、あまり吹き飛ばされずにその場に踏ん張っている。

「おお…こりゃ私も負けてられないね!」

 シャムが対抗心を燃やし、メヴィと同じく笑いながら攻撃を受ける。踏ん張れてないが。というか、変な方向に目覚めないでね?

「ひぐぅ…痛い…。」

 ルアノちゃんはあまりの痛さに涙目になっている。それでもひたすら回復しながら無防備にボスへ突っ込んでいる。それをプラノが息を荒くして見ている。…これはミリーナさんの可愛いもの好きを超えているな。頼むから、ちゃんと回復しながらボスの攻撃を受けてね、プラノ。

 そうこうしながらも30分が経ち、敵が大技を使う予備動作を行う。

「今じゃ!攻撃するぞ!」

「みんな死なないように気を付けてね!」

 メヴィが突撃の合図を出し、私が大技のダメージで死なないように注意を促す。

 ボスは石の両手を上げて動かなくなる。すると、部屋全体が揺れだし、頭上に大量の魔法陣が出現する。部屋全体を占めるほどに出現した魔法陣から大量の岩が降ってきた。私たちはその攻撃を適度に避けつつ、ボスを攻撃する。この岩のダメージもちゃんと反射されているようだ。

 私たちが回復しながらもボスに攻撃を畳み込むと、10秒経ったくらいのところでボスが崩れ落ち、黒い靄となって消えていった。


「やったっつぁ?!攻撃止まないんだけど?!」

 シャムが勝利の雄叫びをあげようとして、降り続ける岩に慌てて回復アイテムを使う。

「ちょっ?!何なのよこれ!」

 マローネも攻撃が止まないことに不満を漏らしている。

「多分、30秒間岩を降らせ続ける魔法攻撃ってことなんだと思う。一度発動したら30秒経つまで止まらないんじゃないかな?」

 私はすべての岩を回避しながら2人の疑問に答える。もう攻撃を受ける必要ないしね。

 そうこう言っている間に、岩の雨は止み、静寂が訪れる。

 倒した後もある意味戦闘が続いたので、みんな何とも言えないといった顔をしている。

「…倒したんだし、今回も勝利の祝杯を上げに行こ?」

 ミリーナさんがいつも通り酒場へ行こうとみんなを誘う。

「そうじゃな。あそこに行けば勝利の実感も再び湧いてくるじゃろ。」

「さんっせー!はやくいこっ!」

 メヴィが同意し、シャムが元気よく返事する。

「私まだ子供なんだけど…。」

「……変わったジュースもあるから問題ない。」

 ルアノちゃんが戸惑うが、酒を飲まないプラノが酒以外のメニューを教える。今回はプラノも酒場に来るのだろうか。


 酒場に着くと、いつものように騒ぎ出した。やはり私たちのことは既にモニターで伝わっており、長い間攻略ができずにいた階だけあっていつも以上に盛り上がっていた。その様子を見て、ようやく勝利を実感した私たちは、メヴィとシャムが酒場の中央で盛り上がっているのを横目に、端っこの席で5人でワイワイと飲んでいた。


 勢いに任せて、プラノがルアノちゃんを抱き締めてくんかくんかし、それを見たミリーナさんは代わりに私を抱き締めていた。私は苦笑し、ルアノちゃんは悲鳴を上げ、マローネは頭を抱えてため息を付いていた。




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