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自力で転生した少女  作者: 10bit
第8章 再会
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第52話 長期戦

 私たちは今、地下2階でレベル上げをしている。新しくダンジョン攻略を始めた3人は、地下1階をレベル1で通過した。ボスはメヴィとプラノが再び瞬殺してクリアである。

 ミリーナさんとシャムは、メヴィやプラノと同じ戦士職である。ミリーナさんはショートソードで、シャムは双剣だ。ステータスは普通の割り振りにし、素早さ特化ではない。

 マローネは魔法使い職で、魔法による攻撃をする。私と同じく杖を持っている。ステータスも普通の魔法使いの割り振りだ。


「やはり普通のステータスだと最初は楽じゃな。」

「いやー、よく分からないけど私たちにはその変わったステータスじゃ無理だからねぇ。」

 シャムが苦笑して答える。

 パーティーを組んでいれば均等に経験値が振り分けられるので、ミリーナさんたちの参加でレベル上げがかなり楽になった。後半は逆にメヴィとプラノが引っ張ってくれるだろう。


 地下2階も地下1階同様、ゴシック風の建物の中のようになっている。モニターで観察している限りでは地下3階も同じだ。モンスターも似たようなもので、ゴーレムや全身鎧のモンスターがいる。物質系モンスターといったところだろうか。

 モンスターは地下1階同様、あまり群れていることはなく、大きな図体で1体ずつ現れる。ミリーナさんが前に出て盾で攻撃を受けつつ、剣でモンスターを斬りつける。シャムはモンスターに近づいて一撃を入れては、離れることを繰り返している。マローネは遠くから魔法で攻撃している。そして、私はようやく回復職として仲間にヒールを掛けている。

 ちなみにメヴィとプラノも攻撃に参加しているが、威力が弱すぎていくら攻撃してもモンスターに無視されている。メヴィは「最初だけじゃ!」と悔しそうにし、プラノはしょんぼりしていた。



 そして2週間後、私たちは地下2階のボスに挑戦することにした。

「確か地下2階のボスはかなり硬いんじゃったな。長期戦にならざるを得ない上に、攻撃が地下1階と比べて段違いに激しくなるらしいのぅ。まぁ地下1階はチュートリアルみたいなもんじゃろうからな。地下2階以降のボスの動きが普通なんじゃろ。」

 メヴィが掲示板やモニターで観察して仕入れた情報を皆と確認する。

 今回の作戦としては、メヴィ、プラノ、シャムの3人がボスに近づいて攻撃し、ミリーナさんはマローネの盾として動く。マローネは攻撃を受けないように気を付けながら魔法を放ち、私は攻撃を躱しながらシャムとミリーナさんの回復を行う。メヴィ、プラノ、私の3人は素早さ特化なので攻撃はすべて躱す予定だ。ちなみに今まで一度も攻撃を受けたことがない。

 人数も少なく、ただでさえ長期戦になる戦いがさらに長くなることが予想される。私たちは大量の回復アイテムやステータスUPのアイテムを購入し、超長期戦に備えた。地下1階で無駄に粘ったおかげでお金はどうにか足りた。

 時間は朝一。地下2階のボス部屋へ入る。


 入り口が閉まると、地下1階のボス同様、中央に大きなゴーレムが降ってきた。キンググレイゴーレムというらしい。今回は覚醒スキルのようなものを覚えるほどレベルを上げていないので、普通に戦闘を開始する。

 メヴィとプラノがまずは先陣を切って突撃する。地下1階よりも激しく動き回るボスに全く遅れを取ることなく、華麗に攻撃を躱しながら、スキルを入れていく。

 それに続くように、シャムがボスに近づいてスキルを使う。シャムはボスに追随できないようで、ボスが近づいてきた時に走って近寄りスキルを放っている。おかげでボスから離れている時に余裕を持って回復ができている。

 マローネは遠くから次々と魔法を放っている。ボスの動きが速いので、追跡機能付きの魔法に限定して使っている。ボスは遠くからでも正確にマローネの方向に岩を何度も高速で投げてきており、その度にミリーナさんがマローネをかばって盾で攻撃を受ける。ミリーナさんが守りに徹してくれているおかげで、ダメージはそれほど受けていない。私はシャムを回復しながら、時々ミリーナさんの回復をしている。

 どうにか安定した攻撃態勢に入れたようだ。


 戦闘開始から5時間が経った。

「うへー。まだ倒れないの、こいつ。」

「しぶといのぅ。ここまで来たら諦めるわけにはいかん。最後まで粘り続けるぞ!」

 シャムが弱音を吐き、メヴィが同意しつつも鼓舞している。

「大量にアイテム買っておいて良かったね。まだまだ粘れそうだよ。」

「シルちゃんたちは余裕かもしれないけど、私たちはお腹が減ってきたよ…。」

「そうね。それにこんな長時間戦い続けるなんて初めてだわ。でも、意外と集中が続くものね。」 

 なるほど。確かにそろそろ昼時だ。メヴィやプラノ、そして私は魔人だから問題ないが、ミリーナさんたちは食事も必要だろう。まぁ1食くらい抜いても問題ないと思うが。そういえばトイレとかどうなってるんだろう?

「なぬっ?!」

 メヴィの驚く声が聞こえた。どうしたのだろうと思っていると、マローネに向かって今までよりも更に速い速度で岩が飛んでくる。ミリーナさんがそれを盾で受けるが、衝撃に顔をしかめる。

「攻撃力が上がってる?!」

 ミリーナさんは先程より大きいダメージを受けているようだ。

「ちょっとちょっと?!こんなの聞いてないよ?!」

 シャムが想定外の事態に慌てている。

「ええい!よく分からんが攻撃パターンは変わっておらん!おぬしらは死なんようにこまめに回復するのじゃ!」

 メヴィは現状を分析し、指示を出す。ボスの動きが速くなり、攻撃力が上がっても、メヴィとプラノには関係ないようで追随して華麗に躱しつつ攻撃を入れている。

「…本当にすごいわね。あの2人。」

 その様子をマローネが感嘆して見ていた。


 そして更に5時間が経過した。

「ぬおー!」

 シャムが自らに喝を入れるようにして声を上げる。

「しぶといわね…。」

「シルちゃん、また回復アイテム分けてもらえる?」

 ミリーナさんはHP回復アイテムが尽きたようで、私はタイミングを見てミリーナさんにアイテムを渡す。

「メヴィとプラノからもらった分も含めてそろそろアイテムが尽きちゃうから、アイテムが切れたら撤退かなぁ。」

 あまりの長期戦に大量に買い込んだアイテムも尽きかけており、私は撤退をほのめかす。ステータスUPのアイテムも随分前に使い切っている。

「シルちゃんたちはHP減らないわけだから、私たちだけ撤退するよ。どれくらい粘れば倒せるか分かれば、レベルもどこまで上げればいいか判断できるからね。」

 ミリーナさんはわざわざ合わせなくていいと言ってくれた。

「またかっ?!」

 メヴィの叫ぶ声が聞こえた。

 見ると、ボスから赤いオーラのようなものが出ている。

「覚醒した?!」

 私は驚き、声を上げる。

 そこにシャムの一撃が入る。


 次の瞬間、ボスは赤いオーラを纏いながらも崩れ落ち、そして赤いオーラは消え、黒い靄となって体が霧散した。


 …倒したようだ。


「…っったぞおおお!倒したのじゃ!!」

「う、うおおおおお!やったよ私たち!!」

 メヴィとシャムが勝利の雄叫びを上げている。その横でプラノが静かにガッツポーズを取っていた。

「やった…の?」

「…やったんだね。ついに倒したんだね!」

 マローネはまだ状況が飲み込めず、ミリーナさんは勝利を実感して興奮している。

「…よかったぁ。」

 私は無事倒せて、ほっと一息付いた。



 私たち6人は10時間という長期戦でもって、地下2階のボス討伐に成功した。

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