第50話 再会
数日が経った頃、デミアルト様から連絡が入った。場所はデミアルト様が使っている部屋の一室でどうだろうかと提案されたので、了承しておいた。
この数日はダンジョンの地下2階でレベル上げをしており、また素早さ特化のせいでレベルを上げるのに苦労している。ある程度レベルが上がれば、地下1階の時と同様に効率が上がってくるとは思うが。
街中を歩いている時もよく振り向かれるようになった。たまにパーティーを組まないかと誘われることもあったが全部断っている。
デミアルト様から連絡が入ったので、私たちは地下2階での狩りを適当なところで切り上げ、デミアルト様の部屋に向かった。ナビがあるので迷わない。
「……そういえば我も行く必要あるの?」
「確かに必要ない気がするのぅ。」
「そんな殺生な。ここまで来たら付き合ってよ。」
ぶっちゃけ一人でもいいのだが、3人の方が気が楽だ。
私たちがデミアルト様の住んでいる建物の玄関ホールに入ると、デミアルト様が迎えに降りてきていた。
「よく来てくれた。」
「いえ。ご招待ありがとうございます。」
軽く挨拶を交わすと、部屋まで案内された。その間の会話は特にない。
知り合いが居るという部屋の一室に案内されて入ると、そこにはヴィアナ様、そしてミリーナさんとシャム、マローネが居た。
ミリーナさんたちは私を見ると、こちらへ駆け寄ろうと立ち上がりかけたが、すぐに動きを止めて平静を装っていた。
良かった…。またみんなと会えた。
デミアルト様に勧められて、私たちが椅子に座ろうとした時、大きな音がした。音のした方向を見るとヴィアナ様が椅子から転げ落ち、床に倒れていた。ミリーナさんたちが慌ててヴィアナ様を介抱し、別室へと運んで行った。
私の横でメヴィが「前も倒れておったのぅ。」と呟いた。
いや、あなたのせいですけどね。
少しドタバタしたが、ようやくヴィアナ様を除く全員が席に着いた。
「えーと…みんな、お久しぶり。こうしてまた会えて嬉しいよ。」
私がミリーナさんたちに向けて語りかけた。ミリーナさんたちは既に目がうるうるしている。
「…感動の再会、ってことで話を終わりにしたらまずいですかね?」
「話せるところまで話してもらえると助かるのだが。」
私がデミアルト様に話さなきゃダメ?と聞いてみたが、ダメらしい。仕方がない。用意した話をしよう。
「うーん…信じてもらえるか分かりませんが、私は王国を出た後、魔人と戦い、敗れました。
…実は私、元々は鬼人だったのです。ですが、冒険者として依頼をこなしていた時に死んでしまいました。死んでしまったはずだったのですが、気が付いたら生きていたんです。その時はどうしてか分からなかったのですが、とりあえず遺体もあって死んだはずの私が町に行くわけにもいかず、自ら開発した魔法で姿を変えて町に入るようにしました。その後、姿を変えた状態でデミアルト様とは出会いました。
そして、魔人と戦い、敗れた時に魔人に言われたのです。お前も魔人だ、と。つまり私が死んだはずなのに気が付いたら生きていたのは、魔人になったからだったんです。その後、例の魔人からさらに強くなるように言われ、このダンジョンへと呼ばれました。そして私は今、このダンジョンで自らを鍛えているのです。
…これが私に起きた出来事です。」
半分くらい違うけどね。
「…にわかには信じがたいが、目の前にこうして居るということは、そういうことなのだろう。…君と一緒に居る2人も魔人なのか?」
「わらわは羊人なのじゃ。」
「……我は竜人。」
2人は平然と嘘を吐いた。
「…シルヴィアの話では元となる人族があって、何らかの条件で魔人に生まれ変わるように思えた。2人も元はその人族ということなのか?」
「わらわたちは死んでおらん。生粋の羊人じゃ。」
「……あんまりしつこいと怒る。」
メヴィは平然とした態度で返しているが、プラノは面倒になったのか不機嫌そうに返している。
「そうか、それはすまなかった。羊人の君は特に私たちの知っている魔人によく似ていたのでな。こちらの勘違いだったようだ。」
「気にせんで良い。シルから聞いておる。恐らく元はわらわと同じ羊人だった魔人なのじゃろう。」
多分、デミアルト様は少なくともメヴィのことは魔人と思っているだろう。だが、証拠がない。そもそも魔人だと思っているのなら怒らせるのはまずいと思っているだろう。
「そうするとシルヴィア、君は強さを示すためにもこのダンジョンを攻略する必要があるということか。」
「そうですね。」
「…ならばもう従者だなどとは言ってはいられないな。ミリーナ、シャムーティア、マローネ。君たちもシルヴィアとともに攻略に参加するか?」
「えっ?!よいのですか?」
ミリーナさんが驚いて確認する。
「私たちの国としてもダンジョンは攻略せざるを得ない。魔人であるシルヴィアは攻略においても優位に立つだろう。以前からの仲間である君たちならば協力もしやすいのではないか?」
「私たちとしてはありがたいのですが…。」
ミリーナさんがこちらの反応を伺っている。
「私もミリーナさんたちとまた一緒に活動出来るなら、是非そうしたいです。」
「ならば決定だな。今後はこの街でシルヴィアたちと行動してよい。」
「ありがとうございます!でも、ヴィアナ様の護衛はどうするのでしょうか?」
ミリーナさんがヴィアナ様の心配をする。
「この際だ。ヴィアナとルアノにもこの街に移住してもらおう。この街の中でなら護衛も不要だ。貴族も平民も一緒に生活をしているからな。あの2人には貴族社会は厳しすぎる。それならばこの街に住んだ方が良いだろう。幸い、国の貴族もダンジョンの攻略が推奨されている。問題なく移住できるだろう。」
私たちに巻き込まれて、ヴィアナ様とルアノ様もこの街で暮らすことに勝手になってしまった。まぁこの街は快適だから、一度住んでしまえばもう国に戻りたくなくなるだろう。
私はこうして、ミリーナさん、シャム、マローネの3人と再び活動することになった。
直近書いたものになってきてるので、読み直しをあまりしてません。誤字脱字が増えるかもですが、ご了承ください。