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自力で転生した少女  作者: 10bit
第6章 従者
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第40話 大討伐祭

 大討伐祭の日がやってきた。ヴィアナ様の護衛は私とミリーナさんが担当することになった。遠征授業の時と同じく、王国北門前に集合している。そこにはこの前の春の祝賀会に匹敵する貴族が集まっていた。

 ヴィアナ様が配属された遠征部隊は三級貴族中心の構成となっており、私たちと同じように護衛を付けている者も少数だが見受けられる。

 ヴィアナ様の部隊は門を出た後、他の部隊が向かうところよりかは近くにある森で魔物の討伐を行うらしい。その森の木は何度なぎ倒そうと燃やし尽くそうと、にょきにょき生えてくるらしい。まるで魔物のようだ。


 門の前で出発を待っていると、何やら前で号令を掛けているようだ。その声を合図に先頭の部隊が門の外へ出ていった。後続の部隊も次々と出発し、私たちも前に続いて出発する。

 部隊長が先頭を切って、目的地へと向かって走り出す。私たちもそれに付いて行く。遠征授業の時とは比べ物にならない速度で、魔法なしではとても付いていけない。途中の魔物もすべて無視である。

 しばらく走り続けると、目的地らしき森が見えてきた。ここからは各自別行動で、森に蔓延っている魔物をとにかく倒しまくることになっている。


 各自が森の中に散っていくと、あちこちで轟音が聞こえてくる。派手に魔法をぶっ放しているようだ。

 ヴィアナ様も森の中に入っていき、私たちもヴィアナ様を守るようにして付き従う。周りの目もないので、今回は少しばかり魔法の威力をあげてさっくり倒す。ヴィアナ様には比較的弱い魔物を任せるようにして、私たちは強めの魔物をさくさくと倒していく。

「…あなたたち、本当に強いのね。」

「ルアノ様の遠征授業でだいぶ慣れましたので。」

「私は初めてですが、兵士として日頃から鍛えていましたから。」

 ランク3の魔法でさくさく倒せない強さの魔物なので、答えになっているようで実はなっていない返答をした。

 ふと纏わりつくような不快な感じがある方向に偏った。私はその方向を見る。


 そこには、少女が立っていた。


 2本の大きな金色の角、漆黒に輝くウェーブの掛かった足まで伸びた髪、血に飢えたような真紅の瞳、血の気を感じさせない真っ白な肌の少女がこちらへ笑みを浮かべながら歩いてくる。

 周囲が静寂に包まれる。

 私がその少女を警戒し、じっと睨んでいると、ヴィアナ様が震えた声で呟いた。

「ま、魔人…。」

 この少女は魔人という種族らしい。そう思っていると、ばさりと何かが地面に落ちる音がした。

「ヴィアナ様!」

 ミリーナさんの叫ぶ声がする。この魔人が感じ取れない何かで攻撃したのだろうか。


 魔人がすっと私に近づき、私に手を伸ばしてくる。

「面白いものを見つけたぞ。」

 そう呟いた瞬間、魔人の手から物凄い衝撃が飛んできた。魔人の伸ばした手から先は、遠くの方まで衝撃で木々がなぎ倒されていた。

 魔力だけの状態となった私は魔人の横に回り込み、体を再構築しながら冷却魔法を浴びせる。魔人の周囲数mが凍りつく。

 しかし、その一連の流れも魔人には見えていたようで、ずっと視線で私を追いかけていた。冷却魔法も効いていないようで、魔人の体は凍りつかずに何も変わらぬままだった。

「ほぅ。猿人がこの魔法を使うとは。いや、今は魔人か。」

 私が魔人…恐らく魔人は、私と同じで肉体を持たず、魔力だけで体を構築している種族なのだろう。知恵を持った魔物といったところか。

 加えて横に回り込み近づいたことで、この魔人の魔力は底知れぬものだと分かった。


 私はこの魔人に勝てない。


「おぬしは何故強くなろうとしないのじゃ?」

 魔人が私に問いかけてくる。

「強くなる必要がなかったから。」

「ならば強くなれ。強くならないのなら、おぬしを殺す。」

「…どの程度強くなればいいのですか?どこまで強くなっても殺されると言うのなら、それは強くなる理由になりません。」

「わらわを楽しませてくれればそれで良い。強くなれると分かれば殺しはせん。…1週間後、それまでに強くなっておけ。再びここで相見えようぞ。」

 魔人はそう言い放つと、空を飛んで彼方へと行ってしまった。どうやら私を殺すつもりはなさそうだ。


 …また面倒事の予感がする。


 しばらくすると、同じ部隊と思われる貴族がやってきた。あのランク4どころではない魔法の痕跡を見て、驚いてやってきたらしい。

 私が魔人らしき少女と出会ったと話すと、その貴族は驚いていた。そして、その貴族が驚きから返ると信号弾の魔道具を打ち上げた。

 しばらくして部隊全員が集まると、騒然としながらも一先ず王国まで帰還した。


 王国内にたどり着いた時にはヴィアナ様も意識を取り戻し、部隊長らに今回の出来事を意識のあったところまで説明していた。


 ヴィアナ様はあまりの恐怖に意識を失ってしまっていたらしい。なんというか、紛らわしいですヴィアナ様…。




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