第38話 学院の課題
茶会が終わってしばらくゆっくりできるだろうと思っていたら、ルアノ様の護衛に行っているシャムたちが頻繁に帰ってきた。
どうやら学院で出された課題に必要なものを取りに来たらしい。せわしなくやってきては、あれ持ってきてこれ持ってきてと言って、慌てて帰って行っている。
1週間経ってマローネとミリーナさんが交代したので、マローネに他の学院性も課題で従者がてんやわんやしてるのか尋ねると、どうやら他の学院性は現地で購入しているらしい。ルアノ様は四級貴族ということでお金に余裕がないので、家にあるものはそれを使うようにしているらしい。
ミリーナさんが交代してからも頻繁に帰ってきては必要だという物を持っていっている。マローネに大変なんだねぇと話すと、向こうも向こうで大変らしい。
茶会の課題が出た時は会場のセッティングを従者がするらしい。従者のケーナさんもルアノ様に付いて行ってるので、ケーナさんの指示の下、護衛であるシャムとマローネもセッティングを行ったらしい。
また歴史に関するレポートの作成では、図書館でひたすら資料探しをしたらしい。その努力も虚しく再提出になったらしく、再度別の資料を探し、今度はルアノ様のレポートの中身までチェックし、ようやく課題をクリアしたらしい。
もはやルアノ様に対する課題というか従者に対する課題に思えてくる。
今日もミリーナさんが帰ってくると、私に必要なものを伝えてくる。
「シルちゃん!信号弾の魔道具を作るのに必要な物を持ってきて!」
「んんん?!」
今度は魔道具作り?貴族って皆魔道具作りの基礎は身につけているのかな。それにしても信号弾とはいったい…。
「すいません、信号弾ってどんな魔法なんですか?」
「ええと、空に向かって投げて、空高くで強く光るものらしいの。ごめんね、私、魔道具は詳しくないから…。」
「いえ。遠征とかで使うんですかね?単に光るだけでいいんですか?それとも何か光り方を変えながら伝達できないといけないんでしょうか?」
「遠征で何かあった時に、集合するための合図として使うものみたい。目立つように光ればそれでいいみたいだよ。」
「なるほど。陣が少し複雑になりそうですが、どこまでが課題なんでしょう?」
「陣は既に用意されていて、陣の入った魔石をもらっているの。それを形にするのが課題みたいなんだけど…。」
「そうすると信号弾の魔法を発動できるだけの魔石と、それを固定させるものがあれば大丈夫そうですね。光る魔法なので、陣の入った魔石を覆ってしまうと光らなくなってしまうかもしれません。そこだけ注意すれば固定するものは何でもいいと思います。
とりあえずランクの異なる魔石をいくつか持ってきますね。固定するものはその辺に転がっている石を加工すれば大丈夫かと。今回は私も一緒に戻ります。」
「ありがとう、シルちゃん!」
私はいくつかの魔石を持って、ミリーナさんと学院へ向かった。学院に到着した私は早速陣の入った魔石を解析してみる。学院には訓練場というものがあり、その中では魔法が使えるらしい。私は訓練場で陣の入った魔石に魔力を流し、動作を確認する。動きは単純で、上に向かって進み、光るだけのようだ。あらかじめ課題の内容に書いてあったランクの魔石が固定できるように、適当に外で転がっていた石を加工し、動力源としての魔石を嵌める台座を作る。光を遮らないようになっていることを確認し、ルアノ様に渡す。
「全部やったら私が何もできないじゃない!少しくらい作業を残しなさいよ!」
宿題は自力でやりたいタイプですか…。
「えと、それじゃ作り方を1から説明するので、先生に聞かれた時に答えられるように覚えてください。」
私が、こういう遠距離で動作する魔道具は魔石で魔力を提供する必要があることや、石を熱魔法で加工して作ったこと、ただし普通は恐らく店で形を指定して作ってもらったりするものだろうということや、光る魔法なので光りを遮らないように工夫する必要があることなどを説明した。
ルアノ様はその説明をメモを取りながら聞いていた。
魔道具の課題は無事クリアしたらしい。ちなみに、提出したものに対して特に何も聞かれなかったそうだ。まぁ本人のためにはなっただろう。
私が館に帰ってきた後も、ルアノ様の護衛に行っている2人は頻繁に物を取りに帰ってきていたが、最近ようやく一通り持ち出し尽くしたのか、物を取りに来ることが減った。
それでも、交代で帰ってきたところで話を聞いてみると、相変わらず向こうでは課題の手伝いに奔走しているらしい。