第4話 魔物狩り
日を改め、いつもの観測地点に向かった。
今日は攻撃するための足場作りである。周囲を警戒しながら、観測地点より上流に向かって100mほど川の真ん中付近に浅い道を作っていく。途中逃げ道となる分岐点も作る。
さすがに一日では作れなかったので、三日ほど掛けて作った。後は魔物が来るのを観測地点で待つだけである。
日に日に寒くなり、息が白くなる。何度も通い、ようやく2回目の遭遇だ。前回と同じく、狼の魔物だった。魔物がこちらへ向かって走ってくる。念のため、前回の100m地点超えてきたらすぐに逃げれるように身構えた。
やはり魔物は前回と同じくらいの位置で止まった。魔物はこちらを睨みながら唸り声を上げている。
私はゆっくりと川の真ん中を通る浅い道を通って、魔物に近づいていく。心臓がバクバクと破裂しそうだ。
魔物の火はどうやら川の真ん中までは届かないようだ。川沿いに居る魔物と距離が最短になる位置まで移動する。
魔物がこちらへ向かって火を吹くと、少しだけ熱気がこちらへ届いてくる。恐怖で固くなってる体をほぐすように深呼吸をする。
よし、攻撃だ。
私は手持ちの石を魔物に向かって投げる。投げた石は魔物の横を通り過ぎる。うん、仕方ない。一応肩は鍛えてきたつもりだが、そんな簡単に投石の腕は上がらない。
私は気持ちを切り替えて何度も石を投げた。魔物に向かう石もあったが、避けられてしまった。それでも何度も石を投げる。足りなくなったら川底にある石を拾って投げた。
魔物が火を吹いた直後、投げた石が魔物に当たった。魔物が痛そうに声を上げる。魔物が痛がってる内に2発目、3発目と当てた。その度に痛そうにしているが、まだまだ倒せそうにない。私はその後もひたすら投げ続けた。
およそ3時間後、ようやく魔物が動かなくなり、トドメにと石が当たる。魔物は黒い靄となって消えていった。
「や、やった…。倒した!」
魔物が居た場所には、小さな黒い結晶が落ちていた。私は周りに警戒しながら、その結晶を拾いに行き、すぐさまその場を離れた。
村に帰る途中の森の中で、私は木の横に穴を掘り、先程の結晶を入れ、大きめの石で蓋をした。家に持ち帰って見つかってしまうと面倒だと思ったからだ。
そして家に帰り、夜、寝床に入って今日の戦いについて振り返ってみた。
魔物は魔物避けのせいである位置から先に入れない。そして、なぜか傷を負っても逃げることはなかった。おかげで8歳の少女によるちまちまとした投石攻撃でも倒すことができた。正直、火力が足りないと思っていただけに倒せてびっくりである。冒険者の初心者でも倒せると言うだけあって、見た目の割に弱いのかもしれない。
とりあえず、時間は掛かるが倒せるみたいなのでこの調子で倒していこう。本当は弓矢とか作りたいところだが、作り方がわからないし、それっぽい材料も見当たらない。魔物に出会うことは少ないので、とりあえずこの火力でも問題ないだろう。
それから5年。私は頑張った。仕事の合間を縫って、何度も通い、たまに現れる魔物をひたすら倒した。狼の他には鹿の魔物がでたが、狼の魔物と変わらない程度の時間で倒した。鹿の魔物は火を吹くのではなく、角を燃やしていた。近距離攻撃しかできないようだった。
13歳になった私は、5年前と比べて投石の技術が格段に上がっていた。すべての石を魔物の位置に投げれるようになったし、投げる速度も2倍以上の速さになっていると思う。
5年掛けて倒した魔物の数は100匹は軽く超えていると思う。途中から夜にもこっそり魔物を倒しに出かけるようになったからだ。石で作った簡易ナイフも用意したおかげで、夜に猪と遭遇しても倒せるようになっていた。実際何度か倒したことがある。突進されたことも何度かあったが、直後にカウンターで切りつけて一撃だ。傷も軽い切り傷くらいで済んだ。鬼人の体はもしかしたら少し頑丈に出来ているのかもしれない。
夜は1時間程しか出かけないようにしていて、魔物と戦う時間は20分弱しか無かったが、魔物との遭遇率は高かった。ほぼ毎回遭遇したし、2匹、3匹と遭遇したこともあった。投石の腕も上がったおかげで1分もあれば倒せるようになっていた。
近いうちに町へ行こうと思っている。最後の難関は親の説得だ。