第35話 決闘
翌日、帰路に着くために街の外へ移動する。そして、デミアルト様が見送りついでに、昨日約束をした決闘を申し込んできた。
「私はランク4の魔法が使えるからな。安心して攻撃してくれて構わないぞ。」
何だかマゾな印象を受けることを言っているデミアルト様の言うとおり、こちらから攻撃をしてみた。
デミアルト様は私たちの攻撃をのらりくらりと躱してみせた。くいくいと手でもっと掛かってこいという感じの合図を出してくる。
仕方がないので、私はシャムの攻撃とタイミングを合わせることでとりあえず1発入れてみた。当然障壁魔法に止められたが、1発は1発である。
その後も私が巧みに攻撃を仕掛けて何発も入れる。シャムはさすがに1発も入れられてないようだが。
私が繰り返し何度も攻撃を入れたところで、デミアルト様が攻撃を止める合図を出した。
「そこまで。…ふむ、シルヴィア、君の動きは確かに一騎当千が可能だろう。だが、シャムーティア、君の動きは特別優れているようには見えない。
昨日他の者から話を聞いた限りでは、君も魔物を一撃で倒していたそうではないか。何かあるのではないか?」
「えーと…実は武器に秘密がありまして…。」
シャムが言っていい?というような視線をこちらに向ける。私は小さく頷く。
「これなんですが、魔法で石も切れるくらいに熱くできるんです。」
シャムは小さめの剣を取り出して説明する。そして、近くに落ちていた石を軽く上に投げ、真っ二つに切り裂いてみせた。石も切れるほどの熱を纏わせられる魔道具の剣だ。
「魔道具か。平民の間ではそれほど普及していないと聞いていたが、さすがに一流の冒険者だけあって持っていたのだな。」
デミアルト様もそういうことかと納得してくれた。
無事、決闘を終えた私たちはデミアルト様に見送られて、ヴィアナ様の館に帰った。
館に戻った私たちは、今回の任務を無事終えたことを報告し、各自自分たちの部屋で一息付いていた。
すると、ルアノ様が私の部屋にやってきた。どうやら、今日の決闘を見て、私に戦い方を教えてほしいと思ったらしい。ルアノ様の場合、魔力が少ないことが問題なので、戦い方次第でどうにかなるものとは思えなかったが、庭に出て教えてあげることにした。動き方などを適宜アドバイスしてあげるものの、やはりどうにかなるようには思えなかった。
その夜、シャムとマローネに私の部屋へ集まってもらい、今日のルアノ様の件について相談した。
「やっぱりランク2の魔法だけじゃ限界があると思うんだよね。」
「まぁ、そうだよねー。遠征授業の時も他の子はみんなランク3の魔法が使えるみたいだったしね。」
シャムの言うように、ランク2までの魔法しか使えないのはルアノ様だけだった。
「だからさ、ルアノ様専用の魔道具の武器を作ってあげようと思うんだよね。ランク3の魔法は魔力が足りなくて使えないだけだから、威力を落とした陣なら発動可能だと思うんだ。」
「そういうことなら特別な陣にはならないわね。いいんじゃないかしら。」
「あのままじゃちょっと可愛そうだしね。私もいいと思うよ。」
マローネとシャムが私の提案に同意してくれた。そんな魔道具を渡したらまた怪しまれるだろうけれど、どうにかなるだろう。
その夜、ささっとルアノ様専用武器を作った。ルアノ様の魔力は、今日教えている時に体に触れて計測した。今はもう対象の近くに居るだけでも魔力の量を知ることが出来るようになっていたりする。
翌日、ルアノ様に威力を落としたランク3の魔法が使える魔道具があると説明し、街の外までやってきた。
ルアノ様に昨晩作ったナイフ型の魔道具を渡し、早速使ってもらった。ナイフから大きな炎が上がる。
「うわぁ…!」
ルアノ様は自分でその炎を出したことに感激していた。そしてもう一度炎を出そうと魔力を込めると、今度は何も起きなかった。
「あ、あれ?どうして?!」
「魔力切れです、ルアノ様。」
ルアノ様はその場に崩れ落ち、両手を地面に付け、落ち込んでしまった。