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自力で転生した少女  作者: 10bit
第5章 貴族の護衛
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第33話 集合場所への移動

 護衛4日目。デミアルト様の訪問から2日後、ルアノ様の遠征授業のために、王国北門前の貴族街へ移動することにした。遠征授業は明後日だが、万が一のために早めに移動することにしたのだ。問題なく進めれば今日の内に向こうへ着けるので、明後日の遠征授業までは王国北門前の貴族街にあるデミアルト様の別宅に泊めてもらうことになっている。


 私とシャムがルアノ様の護衛をすることになって、3人で移動を開始する。

「本当に大丈夫なんでしょうね。一昨日初めて乗ったばかりで今日移動だなんて信じられないわ。もし落ちたらただじゃ済まさないんだから!」

「大丈夫です。なるべく低空で速度を落として移動しますから。もし落ちてもシャムがクッションになってルアノ様のお体に傷を付けることはありません。」

「え、ちょ、シルちゃん?!」

 私がせっかくルアノ様を安心させようとしているのに、シャムが取り乱してしまう。

 ルアノ様はシャムをじっと見ている。シャムがしまった、と顔を少し引き攣らせる。

「…ちゃんとクッションになってくれるんでしょうね?」

「もちろんです!」

「…ならいいわ。」

 シャムが元気よく返事すると、ルアノ様はそれを胡散臭そうに見ながらも納得してくれたようだ。

 私はシャムのその様子を見て、くすっと小さく笑った。


 私たちは門を魔力認証で問題なく通ると、空馬に乗り、北に向かって空を駆け出した。前からルアノ様、私、シャムの順で空馬に跨っている。

「本当に飛べてる…。」

 ルアノ様が信じられないといった声で呟いた。

 低速といっても時速200kmは出ているだろう。低空なので地面が物凄い勢いで流れていく。


 5時間ほど移動すると、王国北門前の貴族街に着いた。門をくぐり、駆け足でデミアルト様の館に向かう。広すぎて歩きでは日が暮れてしまうのだ。

 デミアルト様の館に着くと、デミアルト様の従者が迎えてくれた。ルアノ様と一緒にゆっくりさせてもらった。


 翌日、ルアノ様が学院の勉強をするらしく、教えろというので机に向かって座っているルアノ様の横に立つ。シャムは離れたところに立ち、護衛の任務をしている。たぶん、勉強は苦手だと思うので。

 とは言え、私も貴族のマナーだとか言われると分からない。どんな内容を勉強するのか見ていると貴族のマナーや歴史だった。ルアノ様は一体平民に何を求めているのだろう。

 まず歴史の勉強を始めたルアノ様は、教科書を読み進めていて疑問に思ったことを聞いてくる。その時代の人が何を考えてそんなことをしたのか私に分かるはずがない。きっとこう考えていたのでないでしょうか、と一緒に横で読んだ内容から適当に推測して答えてあげた。歴史の出来事を覚えればいいわけなのだから、行間は適当に納得して覚えても問題ないだろう。たぶん。

 ルアノ様はなるほどと納得しながら歴史の勉強をしばらく進めた後、今度は貴族のマナーを勉強し始める。ルアノ様が教科書を見ながら実際に礼儀作法の動きを行う。ちゃんと出来ているかと聞かれ、教科書の説明や図と異なる部分を指摘する。何度やってもうまくいかない部分では手本を見せろというので教科書の内容通りに動いて見せる。私の美しい動作にルアノ様は呆気に取られて口をぽかんと開けていた。シャムはこっちを向いて、「おー!」と口だけ動かし、音のない拍手を送っていた。


 そんなことをしていると、扉を叩く音が聞こえた。シャムが扉を開けるとデミアルト様が扉の前に立っていた。

「無事到着したようだな。」

「はい。お心遣いありがとうございます。」

 私は先程のマナー本に載っていたお礼の動作とともに返事をしてみた。

「うむ。中々様になっているな。ルアノ、明日の遠征では決して無理をするな。遠征授業の目的は魔物に対して適切な対応を取れるようにすることだ。大抵の場合は魔物に臆することがないようにという意味になるが、ルアノの場合は魔物の強さを見極め、倒せない魔物に無謀な戦いを挑まないことが重要になるだろう。

 護衛の2人も遠征授業の目的に沿って、ルアノが怪我をすることがないように頼むぞ。」

「…はい。デミアルト様。」

 ルアノ様が少し悔しそうな顔をしながらも返事をする。

 私たちはルアノ様に魔物をなるべく倒させつつも、怪我をしそうになる前に魔物から守らなければならないらしい。話を聞く度に難易度が上がっている気がする。


 翌日の朝、集合場所である王国北門前に移動した。そこには既に多くの人が集まっており、その一角にルアノ様と同じくらいの年の子が集まっていた。

 ルアノ様がそちらに向かい、私たちは遠目にルアノ様を見守る。すると、周りの人がこちらを見てコソコソと話している。どうやら私のような子供が護衛をしていることで見下しているらしい。ただ一方で、私たちがスタクアーシモ家の紋を付けていることから、ヴィアナ様を哀れんだデミアルト様が自身の従者の中から当たり障りのない者を回したのだろう、なんと心お優しいお方だ、という推測も話している。

 なるほど、周りからはそういう風に見えているのかと思った。これはデミアルト様の名誉的にも、無様な働きをするわけにいかないだろう。


 学院生たちの集会が終わったようで、ルアノ様が戻ってきた。すると、遠征部隊の貴族が学院生たちを囲むように移動した。学院生たちもそれに合わせて中央に固まるように移動する。教師らしき貴族は学院生たちの中で散らばるように移動している。遊撃をするのだろうか。

 配置が完了すると、先頭にいる貴族が何やら大声を出すと、皆身構えて出発の準備をする。ルアノ様もナイフくらいの長さの楕円形をした魔道具を取り出し、魔石をはめ込んでいた。

「ルアノ様、それは何ですか?」

「ランク4の障壁魔法の魔道具よ。魔石で動かすから私でも発動させられるの。」

 それって私たち要らなくないですか、と思いつつ気を引き締めて門をじっと見る。


 門が開けられるとその先で2人立っており、障壁魔法で出口を塞いでいた。

「うわ…。」

 シャムがその障壁魔法に押し寄せてきている大量の魔物を見て、小さく声を上げた。障壁魔法を埋め尽くさんばかりに魔物がうごめいている。


 障壁魔法が消されると、先頭にいる貴族が門の先へ向かって燃え盛る炎を放ち、一瞬にして魔物を倒す。そのまますぐに外に出ていくと、同じように左右にも燃え盛る炎を放ち、門の周辺の魔物を始末する。


 奥の方に見える魔物たちがこちらへ押し寄せてくる前に、私たちは門を出て、遠征に出発した。




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