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自力で転生した少女  作者: 10bit
第5章 貴族の護衛
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第30話 貴族との面会

 詳しい話を聞いた私たちは後日、商人のリコルダさんに連れられて例の未亡人が住む貴族の館に向かった。その貴族の館は領都から馬車に乗ること5時間ほどの貴族街にある。

 貴族街の門を通り過ぎると、大きな館が点在してあり、高い石壁で囲まれていた。中には豪勢な庭があるらしい。


 目的地に着くと、後ろと左右を森に囲まれた館があり、庭は綺麗にしてあるものの特にこれと言って何もなかった。周りの館と比べると小さいが、それでも何十も部屋がありそうな大きさである。

 執事と思われる人に案内され、執務室のような部屋に連れてこられた。執務机の向こうには長い茶色の髪を複雑に結い上げ、高そうな装飾品やドレスを身に纏った女性が座っていた。

「お待たせいたしました。ヴィアナ様。」

「よく来たわ、リコルダ。」

 この女性が今回の依頼主である貴族の未亡人のようだ。

「こちらの3名が先日お譲り頂いた魔石を求めていた冒険者でございます。」

「あら、随分と可愛らしい冒険者さんなのね。」

 私たちの姿を見て、少し不安そうな表情をした。

「まぁいいわ。事前に聞いていると思うけれど、あなたたちには護衛を頼みたいの。報酬には私が持つ品々の中から好きなものを差し上げるわ。もちろん、働きに見合ったもので、だけれども。」

 さすがに没落寸前なだけあってお金での支払いではないようだ。

「…正気ですか?ヴィアナ様がお持ちの物の中には我々平民が持ったことのない貴重な品も多くあったはずです。物によっては平民に流したとなれば極刑になるものもあるのでは。」

「ええ、そうね。だからあなたにはこれからも懇意にさせて頂く代わりに、このことは口外しないようにしてもらえると助かるわ。」

 …なんか随分と物騒な話になってきた。

 ちなみに魔力を増やす方法は他に見つけたので、魔力回復の魔石はいらない。だから特に欲しいものはない。貴族たちが使っている魔道具なんかは気になるが。


 さて、どうしよう。どうやらこの方はどうしても私たちを雇いたいらしい。とりあえず理由を聞いてみよう。

「あの、なぜ私たちなのでしょうか?私たちよりも強い冒険者は他にも居ると思いますが。」

「そうかもしれないわね。ただ、強くて女性の冒険者となるとあなたたちくらいしか居ないらしいじゃない?私も娘も女ですから、いくら信用できると言われても男性の冒険者を護衛に付けたくないのよ。

 …それに、今度学院で娘の遠征授業があるの。強い魔物は教師が倒してくれるけれど、それ以外は生徒である娘が挑んで、危なければ護衛が守らなければならないわ。だから女性で最も強い冒険者と言われているあなたたちにお願いしたいの。」

 確かにシャムたちはまだ邪教徒がうろついていたときも積極的に外に出る依頼をこなしてきたため、冒険者ランクは4のままだが領都最強と噂されている。


 話を聞く限り、私たちが適任なのだろう。今度というのが何時なのか分からないが、護衛は早く付けたいようだ。だが断りたい。

「その遠征授業で遭遇する魔物というのは、私たち冒険者でも倒せるものなのでしょうか?」

「ええ。他の護衛もランク3の魔法までしか使えないから、それ以上の強さの魔物は教師が倒してくれるわ。」

「えっと、私たちランク3の魔法は使えないんですが…。」

「あら、そうなの?ならランク3の魔法を覚えられるように手配するわ。」

「いや、ランク3の魔法を覚えても魔力が足りるか分からないですし、初めからランク3の魔法を覚えている女性冒険者に依頼されたほうが…。」

「あなたたちですら覚えていないのに居るのかしら。リコルダはご存知?」

「はい。何名か知っています。」

「そう…。とりあえず魔力計測をして無理そうならもう一度検討し直すわ。」

「え。いや、居るならそちらへ依頼されたほうが良いのでは?」

「ランク2の魔法しか使えないのに、それだけの知名度があるならあなたたちの方が良いと思うわ。」

 あぅ。ヴィアナ様しぶとい…。このままでは魔力計測されてしまう。当然ランク3は余裕なので、断りづらくなるだろう。ちらりとシャムとマローネを見ると、こちらをジトっと見ていた。2人の視線が痛い。


 …ごめんね!でも、あそこまで強引じゃ他の話題でも無理だったと思うよ!


 ヴィアナ様が執事に魔力計測の魔道具を取りに行かせた。しばらくの沈黙の後、執事が戻ってくると早速計測を始める。

 やはりここは私からだろう。なんとなく責任を感じた私は魔力計測の魔道具に魔力を流す。

「…っ!?」

 ヴィアナ様が計測値を見て、目を見開いて驚いている。私には計測値の見方が分からないが、そういえばヴィアナ様はランク4の魔力だったなと思った。

「嘘でしょ…。ランク5の魔力を超えてるわ…。」

 その内容にリコルダさんも驚く。それでも執事は少し目を見開いた程度で、すぐに落ち着いたようだ。

「ヴィアナ様、平民にも魔力だけでしたら多い者もおります。貴族から従者へ、従者から平民へと代を重ねる度に身分を落とした者も多数おります故、平民で魔力が多い者もそれなりにいるのでしょう。」

「そう…。でも、これだけ魔力があるならランク3の魔法も余裕を持って使えるわね。」

 やはり護衛確定のようだ。その後、シャムとマローネも計測して、2人もランク5超えだった。


 私の魔力がランク5超えしていたのは、シャムとマローネから魔力をもらっていたからだ。魔力を増やす方法として、他人の魔力を変換し、吸収できることを見つけた。対象に抵抗されると吸収できないので、同意の上でなければ難しいが。


「3人ともランク5超えだなんて…。」

 ヴィアナ様はあまりに衝撃的な結果に頭を抱えてしまった。




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