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自力で転生した少女  作者: 10bit
第5章 貴族の護衛
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第29話 貴族からの護衛依頼

 今日も私はシャムとマローネの3人で冒険者ギルドに来ていた。今日はどの依頼を受けようかと考えていると、ギルドの人から声を掛けられた。

「シャム、マローネ。お前たちに例の商人から手紙が届いてるぞ。」

 マローネがギルドの人から手紙を受け取ると、ギルドの人は奥へと戻っていった。


「以前、魔力回復の魔石を手に入れてくれた方ね。」

 どうやらお世話になった人らしい。私にとっても恩人といったところだろうか。

 マローネが手紙を読み進めていくと、次第に眉を寄せてうなり始めた。その様子を見てシャムもマローネの肩越しに手紙を読む。私は身長が足りなくて覗き込みづらい。

「うわー、面倒そうな依頼だね。」

「世話にはなったけど、さすがにこれはお断りしたいわね。」

「依頼の話なの?」


 私はマローネが見せてくれた手紙を読んだ。

 どうやら商人が魔力回復の魔石を仕入れた先の貴族から、シャムとマローネに護衛の依頼が来ているらしい。商人は仲介役のようだ。

 商人によると平民、それも冒険者が貴族の護衛をするという話は聞いたことがないらしく、かなり特殊な事情らしい。状況的に見て、断っても構わないと思われるらしいが、一度はその貴族と会ってほしいとのことだ。不敬罪にならないための保険らしい。


 一度は会わないとまずいようなので、ひとまず商人のところに向かった。


 シャムたちに連れられて、領都の大通りに面した大きな商店を訪ねた。店の中には宝石や装飾品の他、高級そうな服や食料品、薬など何でもあった。場違いな雰囲気の私たちは店の人に手紙を見せ、奥の応接室に案内された。

 部屋で少し待っていると、いかにも金持ちといった服装をした男が入ってきた。背はすらっとして高く、金髪を短く整え、翡翠色の瞳をしていて、整った顔立ちをしている。


「久しぶりですね。シャムーティアさん、マローネさん。」

「お久しぶりです。」

「お久しぶりですね、リコルダさん。先日はお世話になりました。こちらは一緒に冒険者として活動しているシルヴィアです。」

「はじめまして、シルヴィアといいます。」

 マローネが私を紹介し、それに合わせて私も挨拶した。そういえばシャムの名前はそんな長い名前だったな…。

「はじめまして、シルヴィアさん。私はリコルダといいます。この店のオーナーをしています。お二人も若いですが、あなたもお若いのに荒仕事をなさっているのですね。」

 確かにこの見た目の少女が冒険者をやっているのは珍しいだろう。私の身長は130cmちょっとのままにしている。ちなみにシャムは160cmほどに、マローネは155cmほどに成長している。身長だけ見れば2人はもう大人とそう変わらないだろう。


 挨拶もそこそこに私たちは今回の依頼の件について話を聞いた。


 今回依頼してきた、魔力回復の魔石を譲ってくれた貴族は四級貴族の未亡人らしい。ちなみに魔力回復の魔石はその未亡人が白金貨10枚で商人に譲り、シャムたちが白金貨50枚で商人から購入したとのことだ。普通は手に入らないものを仕入れてきただけあって結構な手数料だ。

 四級貴族というのは没落寸前の貴族階級らしい。貴族には四級から一級、その上の特級まであり、四級が最も身分が低いそうだ。

 三級貴族がランク4の魔法を、二級がランク5、一級がランク6、特級がランク6ないし7の魔法を使えるらしい。王族はさらにその上とのことだ。そして四級貴族は三級以上の貴族が何らかの理由で落ちぶれた際になるそうだ。


 その四級貴族の未亡人は元二級貴族だったそうだ。その未亡人は魔力量が貴族としては少なく、ランク4の魔法が1回使える程度とのことで、周りの貴族から疎まれていたらしい。それでも夫がそれなりに発言力のある二級貴族だったためにやってこれたのだが、その夫が亡くなってしまったことで四級貴族へと身分を落としてしまったそうだ。

 未亡人にはまだ7歳と幼い娘がいるらしいが、その子も魔力が少ないらしい。せめて二級貴族となることが期待できる子を持っていれば、身分を落とさずに済んだらしいが現実はそうならなかったようだ。


 そんな状況のため、貴族としての生活に困窮していた未亡人が魔力回復の魔石を売り払ったことで、私たちが魔力回復の魔石を手に入れることができたらしい。

 そして未亡人の今回の依頼は、貴族であれば誰もが持つ護衛がいないので雇いたいということらしい。ちなみに本来は、貴族の下の身分である従者が護衛として雇われるそうだ。

 元々護衛をしていた従者を含め、すべての従者が夫の家から譲り受けたものだったため、多くの従者が四級貴族に落ちた後は夫の家系の別の貴族のもとへ移されてしまったらしい。


「なんというか、哀れみを感じさせるわね…。」

「助けてあげたい気がするようでしないというか…。」

「訳有りだもんね…。」

 私たちは思いを一つにしていた。


 面倒だから関わりたくない、と。




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