第3話 魔物狩りの準備
早速私は魔物狩りの準備を始めた。
今の目標は家畜から抜け出すこと。そのために冒険者として町に入り、生計を立てていくつもりだ。その先のことは町で情報を集めてから考えようと思う。
さて、町に入るにはお金が必要だ。だが私はお金を持っていない。そこで町の門番に支払うのは魔石にしようと思っている。お金ではないが、多めに渡せば何とかなるだろう。魔石はよく換金されるものだから換金の手間も少ないと思われる。
そんなわけで私は魔物を倒すことにした。とはいえ、魔物を一度も見たことがないので、まずは偵察から始めようと思う。
仕事の方は問題ない。収穫が終わったので、翌年に向けた畑の整備が終わるとしばらくやることはなくなる。冬でも育つ作物を少しばかり育てて、食料の足しにするくらいだ。
藁で編んだ小さな袋をいくつか用意し、石や砂を入れる。効果はあまり期待できないが、もし襲われたときに相手を怯ませるためのものだ。藁でその袋を腰に着けて、さあ出発だ。親にはもちろん内緒である。
畑を抜けると森になっているので、見通しが悪い。そこで森の中を流れる川にまず向かうことにした。川の上は木が生えてないので、結構先まで見通せるのだ。
川に着いたら、今度は上流に向かって進む。下流の方向は主様の町の方向なので、魔物が少ない気がしたからだ。
村から5kmくらい離れたと思うところで、魔物が現れるのを待つことにした。ただ四方に注意するのは難しい。
そこで、川の真ん中に立って待つことにした。幸いにも川は浅い。それでも膝辺りまであるので、川沿いの石を集めて川の真ん中に一人分の陸地を作った。そこから4本ほど周りより浅くした道を作り、素早く逃げれるようにした。魔物や猪などの動物が襲ってこないかヒヤヒヤしながらだったが、おかげで安全に待てるようになったと思う。
その日は魔物を見かけることはなかった。親に怪しまれないよう何日か置きに何度か通ったところ、ついに森の中から魔物が姿を現した。
黒い毛並みの狼だった。なぜ魔物かと思ったかと言うと、目が赤く光り、何か黒い靄のようなものが見えたからだ。体長は1.5mほどだろうか。鋭い牙のようなものが見える。これがラルフ様に聞いた狼の魔物だろう。ラルフ様の話では火を吹くらしい。
魔物と目が合い、魔物はこちらへ向かって川沿いに走り出した。だが、300mは離れている。私はすかさず川の下流に向かって走り出した。どんどんと近づいてくるが、私が元居たところから100mほど離れたところで魔物は足を止めた。どうやらそこが、魔物避けの境目なのだろう。
私は周りを警戒しながら魔物の様子を伺う。すると、魔物が大きく口を開き、火を吹いた。とはいえ、火は魔物より少し大きい程度だ。
さらにしばらく様子を見たが、魔物はその場から動かず、悪あがきするように何度か同じくらいの大きさの火を吹いていた。
その様子を見て、私は慎重に元居た川の真ん中へ戻った。魔物は相変わらずだ。
魔物に向かって思いっきり石を投げてみた。全然届いていなかったが、魔物はそれに合わせて火を吹いてきた。
ふむ。ハメ技が出来るんじゃない?