第27話 魔力回復
邪教徒も捕まり、事件も一段落着いたので、私たちはようやく一息つくことが出来た。
「はぁ。なんかすっきりしないなぁ。」
「まぁずっと邪教徒をぶっ殺してやろうと動いてたわけだし、こうやって一息ついたのも久しぶりね。」
「ちょっとマローネ、言葉が物騒だよ…。」
「何言ってんのさ、シルちゃん。あんなやつらじわじわと痛みもがき苦しませて、生まれてきたことを後悔させてやるんだから!」
「シャム、もう邪教徒は捕まったんだからその夢は捨てなさい。」
「夢って…。」
随分と2人とも過激になったようだ。ちなみにミリーナさんは、今日もまだ邪教徒事件の関係の仕事で忙しいらしい。
それはさておき、これからのことを話し合おう。
「ねぇ、2人はこれからどうするの?」
「うーん…どうしよっか、マローネ。」
「私はシルをここから動けるようにしてあげたいわ。」
「おお!それはいいね。でもどうやって動けるようにするのさ?」
「それをこれから探すんでしょ。死後の魔力供給なんて王族の話くらいなものだし、貴族関連で調べたら何か分かるかもしれないわ。」
2人は私のために動いてくれるらしい。嬉しいような申し訳ないような気持ちだ。ただ、確かにずっとここにいるのは辛いものがあるので、動けるようになるなら助かる。
「あーそういうことなら魔力を回復というか、増やせる方法が無いかも探して欲しいな。
魔力が増やせれば、魔力を使った試行錯誤が余裕を持って出来るようになると思うんだ。そうしたら、ここから動けるようになる方法を自力で見つけられるかもしれない。」
「まじか!さすがシルちゃん!」
「ほんとうに規格外ね、シルは。まぁ魔力が尽きたら今度こそ死んでしまうものね。そっちも何とか探してみるわ。」
私が魔力を増やせる方法も探してもらうようにお願いすると、快諾してもらえた。
それから2人には領都で探してもらっていたが、なかなか成果が得られなかったようだ。貴族絡みでは、下手に調べて怪しまれると不敬罪に問われて処刑されかねない。そのため慎重に調べているので、なかなか情報が得られないらしい。
それでも2人は根気よく探してくれて、ついに情報を得られたようだ。
2人が得た情報によると、貴族の間では魔力回復の魔石が出回っているらしい。その魔力回復の魔石に魔力を流すと、魔石の魔力が自身の魔力となって得られるそうだ。しかもこの魔力回復の魔石で得た魔力は、自身の最大魔力を越えて保持することが出来るらしい。
「それが手に入ればきっとシルちゃんの魔力も増やせるね!」
「でもどうやって入手するかが問題だわ。貴族の間でしか出回ってないものらしいから、当然領都では売っていないと思うの。平民で貴族と関わりがあるのは一部の商人くらいだから、まずはその商人に手に入れられないか交渉してみましょう。」
「2人とも私のためにありがとう。それにしても商人かぁ。2人とも偽物掴まされたりしないように、魔力識別の魔道具を使ったほうがいいかも?話を聞く限りじゃその魔石には魔力が篭ってるみたいだし、この周辺の魔物の魔石ではない魔力なら本物の可能性が高いんじゃないかな?」
「なるほど、確かにそうね。商人は狡賢いものだものね。」
そして数日後、2人は拳大の魔石を持ってきた。
「…なんかすんなり手に入っちゃった。ランク4の魔力回復の魔石らしいよ?」
「一応魔力識別の魔道具で確認したけれど、魔力はあっても識別する値が出なかったわ。恐らく何者にも染まっていない魔力なのかもしれないわね。」
「おおお!2人ともありがとう!」
まさかこんなにすぐに手に入るとは思わなかった。
私の前に例の魔石を置いてもらい、早速私は魔力を流した。すると押し出したはずの魔力が逆流してくるのが感じられた。
「すごい!今までランク3弱の魔力しかなかったのに、ランク4相当の魔力になったよ!」
「おお!やったねシルちゃん!」
「おめでとう、シル。…でもどうして魔力の量が分かるのかしら?」
「実はここで暇している間に魔力量を測定する魔法を見つけたんだよね。
さてと…よし!早速試してみよう!」
私はまず、光と反発力の魔法で体を生成する。徐々に構築され、しばらくすると生前の私の姿…ではなく、角をなくして肌の色をシャムたちと同じにし、ついでに黒く濁ったような瞳を透き通るような紅がうっすら見える黒瞳に変え、灰色だった髪は銀色に輝く髪に変えた姿で顕現した。
微妙に美化した姿で私はドヤ顔をして立っていた。私の姿に呆気に取られていたが、しばらくして2人は私に抱き付いて涙を流していた。