第26話 事件の顛末
その後もシャムとマローネが頻繁に会いに来て、近況を報告してくれた。
あの後、領都の民は一応落ち着きを取り戻したらしく、今は普通の生活に戻っているらしい。
というのも、町と街道にはランク3までの魔法を使えなくする特殊な魔法が掛けられているので、その中なら安全だということで落ち着いたらしい。実際事件からしばらく経ったが、邪教徒らしき人物に襲われたという情報は入っていないそうだ。
また、領都の門ではランク測定の魔道具を貴族が持ち出して、領都の門兵がすべての出入りする人を測定しているらしい。領都内ではいつも以上に領兵が見回りをしており、領都の民の安心に一役買っているそうだ。
一方で冒険者は、領都の外に出る依頼を受けることが極端に減ったらしい。
最初の内は値上がった報酬目当てに受ける人も多かったらしいのだが、その約半数が戻ってこなかったのだという。
それを知った冒険者たちは、外に出る依頼を受けたら死ぬということで依頼を受けなくなったそうだ。
そのため、今は外に出る依頼の報酬が異常なまでに値上がりしているらしい。それ目当てに依頼を受ける冒険者もわずかながらに居るらしいが。ちなみにシャムとマローネもそのわずかながらの冒険者に入っている。
2人は絶対に仇を討つと意気込んでいる。危ないからと止めてはみたのだが、どうやら領都の外でもランク5までは魔法が使えないように封じられているらしい。なので、ランク4超えの魔力を持っている2人ならば負けることはまずないだろう。
確かにランク5の魔法が使えると、領都の外からでも領都を破壊できてしまう。ランク4なら領都を囲む壁が壊される程度、ということなのだろう。
また邪教徒だが、冒険者が値上がった報酬目当てで依頼を受けていた最初の頃、見回りをしていた貴族がまさに邪教徒が冒険者を襲っている現場を何件か目撃したらしく、その全てにおいて捕まえることに成功したらしい。
だが、その後も冒険者が殺される事例が後を絶たないようで未だに邪教徒が身を潜めていると言われている。
捕まった邪教徒はランク4の魔法持ちであることがランク測定の魔道具によって確認された。だが、いくら拷問しても情報を吐くことはなく、身元も十年ほど前に金で領都の民になったことくらいしか分からなかったそうだ。
それから半年後、最後と思われる邪教徒が捕まった。その間にも何人か捕まったらしいのだが、今回邪教徒が捕まった後から、冒険者が死ぬことはなくなったそうだ。
シャムとマローネは結局事件以降一度も邪教徒に遭遇することがなかったらしい。シャムたちは私の仇が討てなくて悔しがっていたが、邪教徒は全員捕まったらしいのだから、それでいいと私は思う。
結局2人はこの半年間、異常に値上がった依頼をこなしただけとなったらしい。手持ちは白金貨100枚を超えたそうだ。銅貨に換算するなら100万枚である。…物凄い金額だ。