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自力で転生した少女  作者: 10bit
第4章 魔法の導き
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第22話 ご挨拶

 今日はシャムとマローネの両親に会いに行く予定だ。ミリーナさんは仕事があるので、また時間のある時に挨拶したいと言っていた。


 まずはシャムの両親の家に向かっている。

「そういえば領都の人って、私みたいに角が生えたりしてても気にしないのかな?」

「通りを歩いているくらいなら気にしないと思うわよ。田舎町と違って冒険者の数も多いし、その一人として見られているんじゃないかしら?」

「まー毛嫌いしてたり見下したりしている人も中には居るけど、少数かな。領都だと市民としても他種族の人がいるしね。」

「そうなんだ。じゃあフードも被らなくて大丈夫かな。」

「それは前の町でも大丈夫だって言ったじゃない。」

「いやー、誰かさんに他種族であることを見下されたから不安だったんだよねー?」

「そうだねぇ。」

「ちょっと、そのことは謝ったじゃない?!」

「冗談だよ。昨日フードを被らずに歩いててもあまり変な目で見られなかったから、自信が付いたの。ありがとね?」

「そ、そう。なら良かったわ。」

 確かに昨日は見下されるような、嫌そうな目で見られることはなかったが、結構な人に振り向かれてはいた。「あら可愛い。」なんておばさんが話してるのが聞こえた時はすごく恥ずかしかった。


 かなり入り組んだ道を進んだところでシャムの実家にたどり着いた。

 シャムの実家は食堂で、何やらメニューが書かれた立看板が出されており、扉が開けっぱなしになっていた。

 開けっぱなしになっている扉から入ると、店内には一人も客がいなかった。丁度朝食と昼食の間くらいの時間を狙ってきたので、狙い通りといったところだろう。

「あら、シャムじゃない!おかえり!」

「お母さん、ただいま!」

 シャムと同じ橙色の髪をポニーテールにしている女性が声を掛けてきた。どうやらシャムの母親らしい。

「マローネちゃんも久しぶりね!あら、そちらの子は?」

「お久しぶりです、おばさま。こちらは私たちと一緒に冒険者をしているシルです。今はシルも含めて3人で活動しているんですよ。」

「はじめまして、シルといいます。」

「新しいお仲間さんだったのね!はじめまして、シルちゃん。さぁさぁ立ち話もなんだから好きなところに座って頂戴。…あなた!シャムが帰ってきたわよ!」


 近くのテーブル席に座ると、茶髪の厳つい男の人が出てきた。シャムの父親らしい。席を立って先ほどと同じような流れで挨拶すると、皆でテーブルに座って話し始めた。

 最初にシャムが簡単にこの1年間にあったことを掻い摘んで話した。そして今度は両親の番といったところで、何か気まずそうな顔で話し始めた。

「実はな。店を畳もうと思ってるんだ。」

「そっ…か。」

「あれから結局売上が変わらなくてな。それだけならまだ生活に困るほどじゃなかったんだが…3ヶ月ほど前に嵐があってよ。その時に家が半壊しちまったんだ。元々かなり年季が入っていたから随分前から補修しとこうと思ってたんだが、金が厳しくてな。

 半壊したままじゃ商売にならんから金貨10枚の借金をして家を直して、また元の売上まで戻ったところまでは良かったんだが…1ヶ月くらい前だったか、怪しいやつが店にやってきてよく分からん組織に勧誘されたんだ。まぁ当然断ったんだが、変な噂が付いちまってよ。

 どうもその怪しいやつって言うのが最近話題の邪教徒だったらしく、関わったら殺されて生贄にされるとか言われてるんだ。そんなやつが店に来たってんで、あっという間に噂が広がって客がほとんど入らなくなっちまった。領兵にも相談したんだが、なかなかその邪教徒のやつらが捕まらないらしくて向こうも手を焼いてるらしい。実際邪教徒の仕業じゃないかと言われている殺人も起こっているらしくて、いよいよどうしようもねぇって思ったわけよ。」

「ちょ、お父さんそれって危ないんじゃないの!?」

「まぁな。ただ邪教徒は領都内でしか活動してないらしくてな。恐らくなんだが違う町に移り住めば大丈夫だと思うんだ。殺人っていうのも借金で市民権をなくしてトチ狂ったやつで、領都から追い出された後に近くの森で見つかったんだ。邪教徒がやったんじゃないかっていうのも、どこからかそういう噂が出てきただけだからな。」

「そうなんだ…でもだったらすぐに引っ越せば良かったのに。」

「その…情けない話なんだが、お金が足りなくてな。この家を売り払って移る先の町に店を構えようと思うと、借金の金貨10枚があるせいでどうしても金が足りねえんだ。借金したままじゃ領都は出れねえし、移った先で金を貸してくれるところもねぇ。

 …まだ成人したばかりのお前にこんなことを頼むのは本当に申し訳ねぇんだが、金を貸してくれねぇか?」

「別に構わないよ。金貨10枚でも出してあげれるし、もっと出そうと思えば出せるよ。今まで育ててくれたんだから、こういう時にでも恩返しさせて。」

「ありがとう。本当にすまねぇ…。」

 シャムの両親が涙を流し、シャムがそれを宥めている。シャムは親孝行してるなぁ。


 この話の流れでこんなことを考えるのもどうかと思うけど、シャムって金貨10枚以上も持ってたんだ。たった1年しか冒険者歴変わらないのに凄い稼いでるな…。




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