第17話 ルームシェア
さすがに勝手に家にあげるわけにもいかないので、ミリーナさんが働いている町の門の詰所付近で出待ちをしていた。
「あれ?シルちゃんどうしたの?」
「お疲れ様です、ミリーナさん。ちょっと昨日話した冒険者仲間についてご相談がありまして。」
「はじめまして、マローネといいます。」
「はじめまして、シャムーティアといいます。長いのでシャムで構いません。」
「はじめまして、マローネちゃん、シャムちゃん。ミリーナよ。それで相談って何かな?」
「えっと…この2人も一緒に家に住まわせてもらえないかなって思いまして…。この町で活動しようと思うとどうしても稼ぎが少ないので生活ができないんです。宿泊代が浮けば、生活できるはずなので…ダメでしょうか?」
「うーん…。それしかないって言うなら、私は別に構わないよ。ダメって言ったらシルちゃんまで出ていっちゃいそうだしね。」
「ありがとうございます!でも、断られても出ていくなんて考えてないですよ?」
「ありがとう。まぁシルちゃんのお友達を無碍にするわけにもいかないしね。それに、2人ともなかなか愛で甲斐がありそうじゃない。ふふふ。
ま、それはそれとして、詳しい事情は聞かせてね?とりあえず立ち話もなんだから、晩ご飯の材料買って、家に帰って晩ご飯でも食べながら話そ?」
家に帰り、晩ご飯を食べながら、私は2人が仲間になった経緯を説明した。…私の魔法目当てという打算的な部分も含めて。
「なるほどね。まぁそういうことならいいでしょう。」
「あはは…。」
「シルちゃん、ズバッと言うね…。」
私の説明にマローネが顔を引き攣らせ乾いた笑いをあげ、シャムが遠い目をして私の容赦のなさを嘆いている。
「ただし、2人ともシルちゃんを傷付けるようなことをしたら許さないからね。後、この家を荒らしたら訴えるから。もし逃げても町民権を剥奪されるからそのつもりでね?」
「は、はい!」
「了解しました!」
「それにしても、4人になると賑やかになるね。それもこんな可愛い妹たちに囲まれて幸せだなぁ。」
「いやミリーナさん、私たちは妹じゃないですよ?」
「もうっ、シルちゃんってば。妹みたいってことだよ。それに、シルちゃんもこれでお姉さん、だね?」
「はっ!確かに言われてみれば…。」
「ミリーナお姉ちゃん!シルお姉ちゃん!これからよろしくね!」
「適応早いわね、シャム。まぁシル、これからもよろしくね。ミリーナさんもこれからよろしくお願いします。」
こうして無事、一緒に暮らせることになった。
「あ、ベッド2つしかないからとりあえず今日は2人ずつね。」
その日、狭いベッドに2人ずつ寄り添って寝た。私はここに来たばかりの頃と同じように、ミリーナさんの抱きまくらになっていた。
「み、ミリーナざんくるじいでず…。」
声を掛けた相手は気持ち良さそうに寝息を立てている。その声が届くことはなかった。