第11話 魔道具作り
冒険者カードをもらってから1ヶ月が経った。
結局新しい依頼もなく、随時出ている依頼だけこなしていた。他に稼ぐ方法も思い浮かばず、息抜きに魔法、特に魔道具の研究をしていた。
魔道具は魔石を砕いたものをインクなどに混ぜ、それを使って陣を描いたものだ。動力原は魔石を使うことが多いが、武器や防具では使い手が自身の魔力をつぎ込んだりする。
私の開発した魔法も魔道具としてしまえば、毎回陣の構築に長い時間を掛ける必要もない。
ミリーナさんに協力してもらい、試しに魔道具を作ってみることにした。魔石はこの1ヶ月に私が魔物を狩って集め、インクなどはミリーナさんに用意してもらった。
陣を描いた対象は鎧。内側に描けば目立たないし、描ける部分も広いので描きやすいのだ。ミリーナさんはこのためにわざわざ新しく買ったらしい。試し書きするにも魔石とインク代がかなりのものになるので、失敗してもそのまま使えばいいからと無駄にならないものとして鎧になった。
「この鎧がシルちゃんの編み出した障壁魔法の魔道具になるんだね。うわぁ楽しみだなー。」
「あはは…。魔道具作りは初めてなので、失敗したらごめんなさい。」
「その時はその時でそのまま使うから気にしないで。」
私が鎧に陣を描き終えると、試しに手を添えて魔力を流し、思いっきり剣を叩きつけてみた。
剣は風切り音だけ残し、鎧の前で音もなく止まった。
「おぉ。ちゃんと発動してるみたいだね!」
「みたいですね。良かったぁ…。」
その後も私の熱魔法でも問題ないのを確認し、初めての魔道具作りは成功した。
「シルちゃん、これは凄いよ!私のランク2の障壁魔法より頑丈だし、しかもこれをランク1の魔法で実現しているなんて信じられないよ!」
「喜んでもらえて何よりです。」
「こんなに凄いの一体いくらするんだろう…。とりあえず今日から宿泊代はなしでいいよ!本当ならこっちからお金あげたいけど、町の決まりでそれは出来ないからごめんね…。」
「そんな、お世話になってるのはこっちなんですからミリーナさんが気にすることなんてないですよ。宿泊代も払い続けたいところですが…稼ぎが厳しいので免除してもらえるのは助かります。お言葉に甘えさせてもらいますね。」
これで何とか赤字からは抜け出した私は、当面は貯金を増やしながら、稼ぎ口を探すことにした。