5/彷徨い乍ら、さらば博麗霊夢は崩れない。
投稿。
「この時代の妖怪は弱いのね。これなら暫くは安心、安心」
私は何とかして森を出ようと、絶賛探索中の身であった。
妖怪四兄妹……もとい三兄弟は<夢想封印>でぶっ飛ばした。断末魔のような悲鳴が未だ耳を痛ませる。
「ていうか人間って……いや、妖怪が居るんだから人間も居る筈よね」
『人間はいるのだろうか』と疑問に思ったが、すぐに疑いを消した。
何時だっけか、アイツが言っていた。〝妖怪〟は〝人間〟が持つ恐怖心からの産物だ、と。
直訳すれば『〝妖怪〟が居るなら〝人間〟も居る。その逆も然り』という訳である。
……ってことは良くも悪くも、〝人間〟と〝妖怪〟は一心同体ということになるのね。
〝妖怪〟を退治している身としては、何か複雑な気分。
「目的変更、とりあえず人を探す」
森を出る、というのも大事な目標だけど。
人を見付けて案内してもらった方が安全のハズ。効率も良いしね。
「じゃあさっそく。妖力漂う森の中、一握りの霊力でも探すとしますか!」
そう言い終え、私は巫女服の袖に仕込んである御札を一枚。素早い手付きで抜き取る。
此処は森の中で、しかも息が詰まりそうなくらいに妖力が漂っている。
その所為で霊力を感じることが、とてつもなく難しい。
ならば<霊力探査>に長けた御札を使用するまで、という考えだ。
御札に一定以上の霊力を流し込む。
そうして符に刻まれている術式が霊力に反応し、発動する。
「霊感探究ッ!」
霊力が波動と変わり、私の体から放出する。
青白く輝く<霊波>が地に沿って森全体に伝わるかのように広がっていく。
<霊波>に当たったモノは、全て感覚共有で私に伝わる、という仕組みだ。
「妖怪、木、木、木、岩、木、妖怪、木、木、妖怪、妖怪、妖怪、妖怪……」
此処から約26メートルほど先に〝妖怪〟が一匹いることが分かった。
〝妖怪〟といっても、そこまで妖力が多い訳では無いので、とりあえずは保留としておく。
丁度3キロ進んだ辺りで<霊波>が薄まり、消失した。
絶対に解けない範囲制限があるので、こればっかりは仕方が無い。
「……困ったわね。<霊感探究>で駄目なら、自ら探すしか無いじゃない」
ついでに言えば私は<霊感探究>を完全習得していない。紛い物と言われても仕方ない。
弱すぎるチカラは、例え<霊波>が直撃しようと感じることが出来ない、という欠点がある。
しかし例外もある。
それなりに大きい物ならば、霊力や妖力と言ったチカラが弱くても感じられるのだ。
だからこそ先程、岩や木のことを感じた。
完全習得さえすれば、蟻ですら何処にいるのか分かるようになるらしい。
……何事も『勘よ』で済ませていた昔の私を殴りたい。
「ハァ……空から探そう」
発動、《空を飛ぶ程度の能力》。
私は体に霊力を纏い、蒼い空へと飛翔した。
この能力、日常でも使えるから良いわよね。買い物にいく時とか超便利。
「あと少しで森より上に行ける・・・ていうか此処の木って大きすぎでしょ!」
最初こそ気にしていなかったものの、いざとなればイラッとしてしまうものだ。
森より上に行くには、あと13メートル程度の距離だった。
放出する霊力量を底上げて一気に加速し、出来るだけ早く安全地であろう空に向かう。
――――が。
「シャアアアアア―――!!」
「っ!?」
耳が痛むような鋭い叫びを挙げ、一匹の――――翼を生やした 〝妖怪〟が現れた。
……どうでもいいけど、どんな時代でも妖怪は邪魔者として登場するやつがいるものね。
異変解決に向かうたびに幾度となく妖怪たちに邪魔をされてきた、苦い記憶を思い返す。
まぁ話が通じる分には、まだマシではあったが―――ッ!?
「ファ―――シャァアアアアアアアアアッ!!」
非常にどうでもいい思考を切り捨て、目前に迫る妖怪へ向き直る。
ほんの少しの間に、かなりの距離を詰められていた。
(ならアレで迎え撃つか)
判断し、行動に移すのは早かった。
懐に忍ばせておいた御札を何枚か抜き取り―――、
「ふッ!」
『博麗の御札』に霊力を込め、形を針状にした武具――――封魔針。
凄まじき貫通力をもったソレを妖怪目掛けて投擲した。
これから暫くは投稿する目途がありません。
べ、別にサボるって訳じゃ……!
2014/09/03:色々な意味でごめんなさい。