4/目覚め、そして当ても無きままま歩みだす。
・・・やっとできた。
「……んぁ?」
あの女性……〝龍神〟によって転生させられた私。
光が眩しくて目を閉じていたのだが、どうやら既に着いていたらしい。
そして何故か倒れた体勢でいるようだ。
始めに聞こえたのは鳥の鳴く声。
蒼い空を二匹の小鳥が飛んでいくのが見えた。数秒して、鳥たちの姿は視界から消える。
私は暫く呆然と動かず、只々空を眺めていた。
『あぁ転生したんだな』と、意外にも安直に思えてくる。
「……ふぅ」
大きく溜息を吐いた。
続けてゆっくりした動作でだが、立ち上がる。
転生の負担でなのか、足に小さい切り傷が付いていたが……今は気にしないでおく。
妖怪退治の基本が身に着いてしまっているのか、無意識で周囲確認を行う。
どこぞの悟り妖怪(妹)か、私は。
「此処は……森?」
行った周囲確認で理解したのは、少ないが二つだ。
此処が何処かの森であること。
四匹の妖怪が近くを徘徊していること。
『現在地:森』というのは良いとして、妖怪が近くを徘徊している件については如何したモノか。
別に退治すれば良い話なのだろうが、この時代の妖怪がどれだけ強いのか分からないために、下手には動けない。
「奇襲……は無理ね。四匹相手に一人で立ち回るなんて芸当、私にはできないわ」
《空を飛ぶ程度の能力》を使用すれば、ほぼ間違いなく――――いや、確実に勝てるのだが。
だ が 使 わ な い 。
霊力も大量に消費してしまうし、手の内を万遍なく見せるというのは、いささか抵抗がある。
何より、面倒なのが嫌なので却下。
「……というか能力とか消えてないわよね?」
自分で言っておいて、私は思いっきり不安になった。
〝転生〟とは私が知る限り、『新しく生まれ変わる』を意味する。
そして能力とは、言わば生まれ持った〝才能〟。死んでしまえば使えなくなるのは必然である。
『新しく生まれ変わる』とは、裏を返せば『自分が自分で無くなる』と言う意味だ。
『自分が自分で無くなる』。それはつまり――かなり強引だが――〝死〟を表すのではないだろうか。
ココでさっき述べた考え、『〝才能〟は死んでしまえば使えなくなる』の登場だ。
今までに挙げた予測と組み合わせ、簡略化して表すなら……こうだ。
――――〝転生〟した影響で才能……もとい〝能力〟が消えるのではないか。
「その割には体格とかは変わって無さそうだけど……まぁとにかく」
やはり確認はしておくべきか、と。静かに瞑目しながら能力の使用を試みる。
あわゆくば当たらないでほしい予想。
嫌な汗が流れるのを無視して、果たして結果は――――
「…………普通に使える」
空を飛翔し、見事に体が浮き上がっていた。
特に異常も見当たらない。
「何だか、拍子抜けね」
あれだけ考えたせいか、はたまた無駄に集中してしまったせいか。頭がズキズキと痛むが気にしない。
嬉しさのあまり泣きそうになる感情を抑え付け、安静化させる。
「あー良かった。これで使えなかったら怒り散らして妖怪どもを……ん? 妖怪?」
即座に「あ」と零す。
忘れていた。近くに妖怪が居ることを。
そんな状況で霊力を使ったらどうなるか。
答えは――――目標確定。襲われます。
そこまで思い当たった瞬間。
案の定、と言わんばかりに草むらから妖怪が現れる。
『ガフッガフッ・・・!』
『フグァ・・・フグァ・・・ッ』
『キュォオオオオオンンッ!』
『かおkzjふぉああdjkdp!!』
加えて、酷く興奮しているようで、とてもじゃないが相手にしたくないくらい気持ち悪い。
特に最後のは、もはや叫び声ですら無いだろう。
何とも近寄りがたい雰囲気を放っている妖怪四兄妹(霊夢命名)。
当初の『とりあえず近接で霊撃をぶっ放す作戦』が、こうも簡単に破られてしまった。
「どうしたものか」と妖怪四兄妹を眺めていると、右端の年長兄妖怪――背が一番高いので兄とした――が襲い掛かってきた。
『ガファアアアアアアアアアアアアアッ!!』
「うっさい」
――――夢符「封魔陣」。
年長兄妖怪の足元に<霊陣>が出現し、幾重の弾幕を放つと共に年長兄妖怪を取り込んだ。
簡単に言えばこうである。
『弾幕を放って弱らせ、動きが鈍ったところを突いて<霊陣>に取り込み封印成功』。
これほど分かりやすい説明は無いだろうと、霊夢は何となく思った。
「ハイ撃沈。次はアンタらかしら?」
霊夢はニッコリ微笑んだ。
霊夢「か、感想くれたら・・・お茶くらいは用意してあげるわッ」
あ、今日はもう一話投稿しますので。