1/プロローグ
初投稿です。
感想くれたらマジ感謝。
「此処は・・・何所かしら?」
私の名前は博麗霊夢。《幻想郷》という世界に存在する《博麗神社》で巫女を務めている。
時には妖怪退治の依頼を受け。
時には神社で修行や庭の掃除。
……まぁ後者の例えは嘘なのだが。私は基本、面倒くさい事は嫌って行わない。
しかし庭掃除は毎日欠かさずとは言えないものの、暇な時には行っている。
いくら楽観的、のんびり、面倒嫌いな私でも、自分の家が汚いというのは戴けない。
それはさておき。
私の日課とも成りつつある御茶の午後。そんな一番気が抜けやすい時間帯に異常は起きた。
一 瞬。ほんの一瞬だけ凄まじい妖力を感じ、本能的に〝巫女さん三種の神器〟とも言うべき御祓い棒、陰陽玉、御札を手に取ったまでは、まだ良かった。
殺気を全開にしながら『私の大事な時間を邪魔した奴を潰しに行こう』、と。
青筋を露わにしながら立ち上がった直後の事であった。
再び膨大な妖力を感じ、次の瞬間には真っ白な空間に居た、というのが現状である。
正直、自分でも意味が解らず混乱している。
またアイツがやったのではないか、と予想したが……違う。私の勘が『違う』と言っている。
「・・・うん、落ち着け私。さすがに今回は冷静にならないと解決しないわ」
私にしては珍しく、怒ることなく解決に専念することにした。
何時もだったら怒り散らして叫び散らすところである。
とりあえず、今の現状についてもう少し詳しく調べることとしよう。
「ん」
『私をどうやって此処に連れて来たか』。
コレは考えれる方法がウンザリするほどある。
転移能力系や時空移動能力系、またはアイツの《境界を操る程度の能力》などといった能力も可能である。
……魔法のことは良く知らないが、可能にするモノもあるかもしれない。
次に『どういった目的で、誰がやったのか』。
<博麗の勘>とも言うべき、恐ろしいほど未来予知に近い本能的直感で、アイツでは無いことは分かっている。
だからこそ困惑する。アイツでは無いのなら、一体誰がこんな大事を犯したのか。
《幻想郷》は<博麗大結界>に包まれて、初めて隔離された一つの世界となっている。
そ してその<博麗大結界>を守るのが<博麗の巫女>。《幻想郷》で最も優遇されるべき存在……のハズなのだ。
ところが現実は非常で、宴会では支度も片付けも私の仕事。妖怪退治の依頼ばかりで御賽銭など入ることも無い。
む しろ大切に扱われていない気がする。これは一度、アイツとしっかり話し合うべき――――
「って、話がどんどんズレてってるじゃない!」
自分自身に怒る。先程まで『冷静になろう』としていた私は何処へ行ったのやら。
我慢というモノは一度でも切れれば、再びやり始めるのは難しい。
何があっても我慢できそうに無くなった私。
こめかみを抑え「何やってるのよ私は・・・」と自傷した。
やはりと言うか何というか。私は我慢が出来ない体質に生まれたらしい。
大きく溜息をし、目を閉じる。
「よし、こうなったら」
脱出方法に行き詰った私は右手に御祓い棒を持ち、左手に御札を何枚か持つ。続けて陰陽玉に霊力を流し、浮遊させた。
「・・・無理矢理こじ開けるしか無いわねッ」
――――霊符「夢想封印」。
私の十八番である夢想封印。中々の威力を持っているので、この程度の空間になら穴を開けれるかもしれない。
『そう簡単に穴を開けていいのか』と聞かれれば……分からない。
空間に穴を開けるということは、世界そのものに影響を与えることがあるのだ。易々と開けていいはずが無い。
「ま、そんなことを考えてたら此処から出れないし・・・良いわよね?」
言い終えると同時に、幾つもの虹色の光弾を放つ。
空へと飛んでいく光弾を一箇所に集束し、一定の大きさになるまで光弾を飛ばし続けた。
……しばらくして、博麗神社と同等くらいの大きさとなった虹色の光弾が天高くに浮遊していた。
神社と同等、といっても元が小さいので、そこまでのモノではないが。
普段は『一箇所に集束する』なんてことはしない。光弾を相手に目掛けて撃つだけの使い方である。
しかしそれだと、何時まで経っても空間に穴など開けれない。
だからこそ今は、何時もとは違ったやり方をしているのである。
「すぅ・・・――――破ッ!!」
空に浮かんだ巨大な光弾が輝きを増し、直後。
ズドゴォオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
――――大爆発を起こした。
火炎が飛び散り、響かすかのように世界を振動させる霊力の波動が。
振動衝撃に耐えきれずに、世界は徐々に崩壊していく。
「ホントなら<空間そのものに対する交渉術式>を使った方が良いんだけどね」
そうすれば一々、<夢想封印>を使う必要も無し。
ましてや一箇所に集束させて、爆発させる必要も無かった。
―――だがソレを行い、穴を開けた。
それは何故か?
もう一度だけ言おう。
――――私は面倒臭い事が嫌いだ。
術式を作るのにも時間が掛かるし、術符に込める霊力だって馬鹿にならない。
只々面倒くさかったから。
それだけの理由で、危険性が高いが、術符を作るよりは楽な<夢想封印>を使用したのだ。
「さて、と。これで割れなかったらヘコむわ・・・」
意外にも真剣に、こめかみを抑えながら爆発地点である空を見詰める。
穴が開かなかったら……それこそ私は発狂することだろう。
天に祈るように、未だ煙が立ち込む爆発地点を眺めた。
しかし心配は杞憂だったらしい。
煙で肝心なトコロは見えていないが、物質的である『何か』が割れていく擬音が耳に入る。
「ビキビキ、ビキビキッ・・・ってアホらし」
続けて「さっさと行きましょ」と呟き、能力を使用して空を飛ぶ。
……ちなみに空中浮遊も、術符で可能だ。
使わないのには、しっかりとした理由がある。
私が持つ特別なチカラ――――所謂<能力>と言うのだが。
《空を飛ぶ程度の能力》というモノを生まれ付きながら持っている。
この能力は単に文字を察して『空を飛べるだけ』などと思ったら大間違いだ。
今は時間が惜しいので説明することは出来ないけど、ね。
「――――いぃぃぃよしっ!」
右手を握り締め、嬉々の感情を表す。
先程まで煙が立ち込み、穴が開いたかが分からなかった虚空。
それがやっと見えたのだ。結果は――――見て分かる通り、成功。
空間に漆黒の渦が発生し、その先には《幻想郷》の人里の情景。
『帰れる』という紛れも無い事実にホッとする。
……しかし同時に、嫌な予感が頭を過ぎった。
私は失念していたのだ。
子供でも解り得る、こんなに簡単な『法則』を。
『待ちなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ―――――!!』
「ちょッ!?」
私は此処に、連れて来られたのだ。
つまりは拉致。
では、ソレを行った犯人は何処にいる?
『いかなる目的であろうと、逃げ出そうとする獲物を見過ごす犯人など居ない』。
私の進行は金色の結界によって阻まれ、漆黒の渦は極太のレーザーによって消滅した――――
うん、短いね。