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彷徨う君を捕まえて

 この瞬間を、どれだけ待っただろう。

 待ち遠しく思いながら、同時に永遠に来なければいいとも思ったあの日から、気が遠くなるほどに長い時間を過ごした。陽光が差すあたたかさも、雨が地面を叩く穏やかな音も、風が吹いて肌を撫でていく感触も、身が凍るほどの冷たさを感じることもない、この空間で。

 消えることは許されず、さりとて何もかもを留めたままにすることも許されない中、ただひたすら待ち続けて――だからあの日、嬉しくてたまらなかった。

 自分と同じであってそうではない存在が、ようやく生を受けたのを悟ったあの瞬間は。




 生きている体さえあれば、むせ返るような草の匂いさえ感じられそうな、青々とした広い草原。そこに横たわるのは、おれであっておれでない存在。長い前髪の隙間から覗く顔は、おれがよく水面に映して見ていた、もう少し若かった頃のおれの姿と瓜二つだ。

 嫉妬と、愛情と、羨ましさがい交ぜになった曖昧な感情のままじっと見つめる。

 葉が散っては、彼やその周囲に降り積もっていた。決して本物ではない楓の木が、やはり偽物の風に吹かれて葉を舞わせているのだ。

 紅葉の海はおれが最期を迎えた場所であり、悔恨が焼き付いている刹那。

 この空間は、おれの心を表すから。

 紅にまみれておれは死んだ。だからすべてが終わるこの時も、紅に塗れたまま消えていきたいと思った。

『……鶫』

 呼びかけると、彼――鶫はゆっくりと瞼を開いた。

 視線が周囲の状況を確認するように一周し、おれで止まって、総てを悟った表情になる。そのまま驚く様子はなく、静かに上体を起こした。

 彼はもう一度辺りを見渡して、無意識か息を思い切り吸い込んで吐き出す仕草を見せる。

 それを見て、またちりっと胸が痛む。

 ああ、彼は生きている。生きているんだ。

 もうおれは、忘れてしまった。草がどんな香りをもたらすのか、どんな感触をもたらすのか。

 ずっと解放されたいと思っていたくせに、いざその時が目の前に迫ってくると怖気づきそうなんて、勝手なことだ。本当におれは、最初から最後まで。

『……久しぶりだな、鶫』

 そんな曖昧な感情を、微笑みかけることで打ち消す。自分に最も近い存在を誤魔化せるほど、上手く笑えているかは正直分からなかったけれど。

 鶫は、何と答えたらいいか分からないような顔つきをしていた。

 それも当然である。最後に会ったあの日と比べると、何もかもが違う。

 おれが自分にとってどういう存在であるかを知り、自分の傍にいた人たちとかつてどんな繋がりを持っていたのかを知ってしまった。そして双念に支配されたままの庸汰に出会い、幾度もぶつかっている。

 そして数瞬前、庸汰に怪我を負わされて意識を失ったために、彼は今ここにいる。

 自分であって自分でない、同じ魂を持ちながらも絶対的に異質な存在――それが鶫にとってのおれだ。

 しばらくの間が空いてから、彼は小さく言った。

『お久し、ぶりです……久遠、さん』

 今さら変えることが難しかったのか、以前と変わらない呼び方で。

 彼はそれから徐に立ち上がり、真っ直ぐな視線でおれを射抜いてくる。

『……どうしてぼくをここに呼んだんですか』

 確かに、不思議に違いない。おれが鶫の夢を訪ねたのは、彼が記憶を取り戻す寸前が最後だ。

 視線は全く揺らぐことなく、そのままおれを射抜いてくる。答えないことを許さないという目で。

 昔のおれも、こうだったのだろうか。こんなふうに周囲には映っていたのだろうか。

 少しの間だけ鶫を見つめるようにしてから、また微かに微笑む。


『長い長いごうの、とりあえずの決着が見えたから』


 おれが言葉を切り、鶫が言葉を失ったことで、ぴんと空気が張り詰める。

『終わり、って……』

 一気に戸惑いの色が濃くなった彼にまた微笑みかける。

 総てはおれと双念が作り上げた因縁だった。もうあの惨劇を繰り返さないように、繰り返させないように。

 死した後、おれが〈神〉に願ったことは、総て終わりを迎えるために在った。鶫は知る由もないだろうけれど。

 鶫に限らず、他の生まれ変わりたちも知らない。最初からほとんど欠けることのない記憶を持っていた、宏基や透でさえ。おれの願いが、鶫だけではなく自分たちの転生にも関わっているという事実は、何ひとつ。

『どんな結末になるかは分からない。分からないけど、決着はつく。おれが遺してしまったごうがあるままの形で輪廻に戻るか、それとも断ち切れるか――それは、やっぱりお前たち次第だ』

 そう運命さだめづけられたから、おれはこうしてずっと生まれ変わりを待ち続け、生まれ変わった後も見守ってきたのだ。

『話して、くれるんですよね?』

 相変わらずおれを真正面から捉える鶫に、しっかりと頷いた。

『それが契約だからな』

 彼にとってはまたよく分からないことを言っているだろう自覚はある。だが、問い質したいだろう気持ちを呑み込んで、黙って俺の前に座ってくれた。

 おれはそれに微笑みを浮かべ、天を仰ぐ。最期の日と同じ、抜けるように青い空。

 何を話したらいいのだろう。いや、話すことは決まっている。何から話せばよいのだろう、だ。

『鶫は……生き物は死んだらいったいどこに行くと思う?』

 しばらく悩んで、鶫に視線を戻してから呟いた。

 鶫は唐突な問いに目を瞬かせ、それからじっと自分の手元を見つめるようにしながら考える。おれの生まれ変わりは真面目だなと思って小さく笑いつつも、その様子を見守った。

『……ぼくが持ってる知識じゃ、極楽とか天国とか、そうじゃなかったら地獄とか、そういうところしか、浮かびません……』

 やがて、ぽつりと言う。

『そうだろうな。おれもそうだったよ。そしておれはお前も知っての通り、地獄に行くと思ってた。でも、そうじゃなかった。死んで、意識がなくなって、次に目を覚ました時には――白い世界にいた』

 それからおれは、話して聞かせた。驚くぐらい何もない世界で目を覚まし、〈神〉と呼ばれているらしい美しい女性と出会ったこと。そこで交わされた会話のことも。

 鶫はじっと聞いていた。時折相槌を打つように頷きつつも、言葉は挟むことなく。

『おれは呪いを乗り越えたいと思った。そのために願った』

 逸れることのない視線をぶつけてくる彼の姿に、あの時の〈神〉の姿が重なる。

 おれが願いを告げた時の彼女も、呆気にとられたようにしつつも視線を逸らすことはなかったから。




 ――呪いを乗り越えるために……力を貸してはいただけませんか。

 そう口にしたら、〈神〉は何処か探るような目でおれを見ていた。

「……そのために何を願うのじゃ」

 無理もない、と思う。呪いを受けているという事実に打ちひしがれていたつい先ほどまでのおれと打って変わって、笑顔を浮かべているのだから。彼女でなくても戸惑う。


「双念と出会う前に、今回呪いを受けたおれたちの生まれ変わり同士を出会わせてほしいんです」


 目の前にいる人が、僅かにだが目を見張ったのが分かった。

「……代償がいるぞえ」

「そうでしょうね。明らかに運命をいじくることになりますから」

 出会うことは決まっていたとしても、その時期を誰かの思い通りにできるはずはない。何のかえりもなしに、など、有り得ない。たとえこの〈神〉と呼ばれる人であってもそうだろう。


「ぬしが生前最も大切にしていたもの……人間と妖怪の共生がもはやぬしと同じ魂の者の力では果たせぬ、と申してもか」


 無茶なことを願うのならば、その代償もまた大きなものになるのは、自明のこと。

「――はい」

 微笑みを以て返すと、彼女は言葉を失っていた。

「幾度転生しても、ぬしはもはや妖怪には生まれられぬぞえ」

「はい」

「……ぬしが果たしたかったものを、別の者が果たすことになるのじゃぞ?」

 繰り返して問うのは、おれの覚悟を確認したいからなのか。

 だったら、おれは何度でも答えようと思う。

「確かに果たしたかった。悔しくないと言ったら嘘になります。でも、おれ以外に叶えられないようにしてほしいなんて、それこそ自分勝手だ」

 おれは生きている間はいつだって、選べなかった方の選択肢を振り返っていた。一本道しかないと言い聞かせて歩むくせに、他にも可能性があったのではないかと悩み続けた。

 どうせその選択肢が目に入ったとしても選ばなかったくせに。他を選んだら選んだで、選ぶべきだったものはこれでないのではないかと思うに違いないくせに。

 だから、後悔するなら選ばない、なんては、言えない。どんな道を選んだとしてもきっとおれは後悔したし、後悔する。

 だったら、『今』のおれがどうしたいのか、それを一番に選ぶことを大切にしたい。

「人間も、妖怪も、何の種族も関係なしに……そういう世の中になってくれさえすれば、それでいいです。いくら時間がかかったのだとしても。おれが果たしたわけじゃなかったとしても」

 掲げているものが理想にしか過ぎないことを、よく知っていた。だがそれでも諦めなかった。おれなら叶えられると思っていたから。

 何処までも強欲で、傲慢だ。だからこういう結果を招いた。

 諦めるわけじゃない。ただ、譲り、果たしてほしいと祈る。これから生まれてくるだろう皆に。おれじゃない誰かに。

「……ただ、ヒトとして生まれるなら。もうひとつ、……いやふたつ、願ってもいいですか」

「何ぞえ。また代償が増えるとしてもか」

 それには即座に首肯する。彼女はもはや呆れ顔にも見えるような笑みを浮かべつつ、促すように檜扇を揺らした。

「双念にそうそう簡単に殺されないために、生まれ変わりたちにおれたちと同じ力を与えてください。ヒトのままでいいから。そしてその力を得たことで集中的に狙われるだろう妖怪の生まれ変わりたちには、妖怪と同じ治癒能力を」

 〈神〉がまた呆気にとられているのが何となく分かる。とんでもなく滅茶苦茶なことを言っていることも。だが譲りたくないし、譲れない。

「来世たちには、呪いを越えてほしいんです」

 もう一度幸せに暮らすためには、乗り越えなくてはならない。どんなに無謀でも、立ち向かわなければならない。

「呪いを受けた者たちと、と申したな? ……その条件では、風巻と確実には出会えぬぞ?」

 確認するように問うので、また頷いた。

「……そうでしょうね。分かってます」

「それでもなお、願うことは止めぬと申すのじゃな? 仲間外れにする、ということぞよ?」

「はい」

 彼を除外するのは、そもそも呪いを受けていないだろう風巻をこの輪に加えるためには大きな代償がいるだろう、ということがある。

 しかしそれが主な理由ではない。

 次の転生で生まれ変わりたちが呪いを破壊してくれたなら。業を越えてくれたなら。それ以降の生まれ変わりでも、双念に殺される可能性はぐっと低くなる。

 たとえ上手くいかなかったとしても、風巻だけは業から遠のくだろう。

「それでも五分五分だとしても、もう身代わりに死なせてしまうわけにはいかないんです」

 おれが疑う可能性を潰したがために、彼はそれを背負い、逝ってしまった。おれの身代わりに。おれが背負うべきものだったものを代わりに背負ったまま。

 ――紹介したい人がいる。

 優しい表情。彼が見つけた、添い遂げたい人。比翼連理の仲になるはずだった人と、生きたかっただろうに。

 おれがもう少し賢かったなら、風巻の愛した人にまで、彼という片翼を奪われる痛みを味わわせることはなかった。

 責任を感じすぎるのもまた、傲慢なのだろうけれど。可能性が少しでもあるのなら、賭けたい。

「――では代償を加える」

 考えが揺らがないと察したのか、〈神〉は小さく息をついて、それから静かに話し始めた。

「……通常、生まれ変わりによって、『前世』となったものは意識を閉じ、二度と表に現れることはない。当然のことじゃがの」

 一度言葉を切ってから、「然れども」と呟き、彼女はまた真っ直ぐにおれの目を捕らえた。


「ぬしはそれを許さぬ。来世の体の中で、成り行きを眺めることとなる。次の世の者たちがどのような経過を辿ろうとも、どのような結末を迎えようとも、何もできずただ見つめることしかできぬのに、見守り続けなければならぬ」


 罰というべきか、それとも〈神〉からも呪いを受けたというべきか。

 兎にも角にも、おれは生きているのか死んでいるのかも分からない状態でただ存在し続けなければならないようだった。死者であることには違いないから手は出せないけれども。

「そして、総てが終わったその時には、ぬしの生まれ変わりにこの総ての事実を伝えよ」

 乾いた音を立てて檜扇が畳まれる。〈神〉の口調は、厳しかった。

 転生した自分に転生前の自分を否定される――つまり自身が積み重ねてきたものを自分に否定されるかもしれないという恐怖を、真正面から受け止めよ。そういうことらしかった。

「これでようやく足りるぐらいじゃえ。ぬしの願いのために、ぬしの生まれ変わりだけでなく、他の三人をも巻き込むのだから」

「……はい。当然だとは思います」

 月読や寒露、玻璃がもう一度おれと出会いたいのか、互いに出会いたいのか、分からないのに。もしかしたら双念と戦うことも望まないかもしれないのに。

 これが、風巻を除け者にしてまで果たすべきことなのか。分からない、何も分からない。

 だけど。

「もし双念に殺されなかったとしても、他の理不尽で奪われるかもしれませんけど。それでも、身代わりには絶対にさせたくないんです」

 もう一度、今度こそ、皆と幸せになって生きたいのだ。

「……頑固じゃの。確認するが、魂にかけられた呪いじゃ。生まれ変わりの中にいる時には、記憶を保持しておくことはできぬぞえ。生まれ変わりと同じように、忘れてしまう」

 苦笑をこぼした〈神〉は再び呟くように言う。

「……おれは、おれを許しませんから、それでいいんです。第三者の力が働くとはいえ、最期まで自分を気にかけてくれた風巻を忘れて……その上除け者にするんです」

 許されるはずがない。許されていいはずがない。

 忘れていい記憶なんて何ひとつ存在しないけれど、だからこそそれが罰になり、対価となる。


「風巻を忘れるのも、忘れたことすら忘れた中で、時が来るまでただひたすら待たなきゃならないのも……呪いであると同時に、罰だ」


 そうでしょう? と問いかけたら、彼女はゆっくりと立ち上がった。

「……わらわも甘いのぅ。ぬしのような者には、優しゅうしとうなるのじゃ」

 〈神〉は悲しそうな、それでいて慈愛に満ち溢れた笑みを浮かべ、おれの頬に触れる。

 今度はおれが目を瞬かせる番だった。




 温度も感じるはずがないのに、あの時に触れられた手は、あたたかかった。

『〈神〉は憐れんで、意識体となったおれだけは、風巻のこと以外は覚えていられるように取り計らってくれたんだ。彼女自身の寿命を対価として』

 風巻は覚えていられなかったが、本来は何もかもを覚えていられなかったはずなのに、記憶を保持できた。そのおかげで、何故こうして待っているのかを覚えていられて、待つことにまずにいられた。感謝してもしきれない。

 それに、鶫が思い出したことで、おれもようやく敬愛していたあの人のことを、思い出せた。

 鶫は何を言うべきか分からないようで、ただ唇を引き結んだまま黙っている。

 否定されるだろうか。罵倒されるだろうか。恐ろしくてたまらないけれど、こうも思う。この子ならばそんなことはしないと。

『ぼく、行きます』

 ややあって、鶫ははっきりと言った。

 大きくはないが、よく通る声。

 彼は、変わった。少し前までの自信がなさそうな、落ち着きなく視線を動かしていて足元がおぼつかないような――そういう雰囲気は何処にもない。

『久遠さん、言ったでしょう? 選ぶのはぼくだって。たとえ何を選んでも、ぼくが責任を負わなくちゃならない。久遠さんには背負えないし、ぼくも背負わせたりしない。貴方がもう誰も身代わりにしないって決めたなら、ぼくも誰も身代わりにはさせない』

 訥々と語り、立ち上がる。

 その瞳には強い意志が宿っているように見えた。


『……終わらせます。どんな形でも、じゃない。ぼくたちが勝って、それで終わります』


 鶫はこんな強い台詞も言えるようになったのか。

 内心で感心しつつも微笑んで、小さく頷く。

『――ありがとう、鶫』

 晴れやかな笑みを浮かべて、柔らかい表情を返してくれた彼を見送った。

 薄くなって掻き消える。鶫は帰るべき場所に帰ったのだ。

 この場所はもう、誰にも必要はない。

 紅い葉が散っていく。青い空を覆っていく。何と美しい風景だろうか。

 それを見上げてから目を閉じる。浮かんできたのは、風巻でも月読でもなく、鶫の顔だった。

 おれの生まれ変わり。同じであって同じじゃない人。前世が妖怪だった、今を生きている、人間。

 ああおれも、ようやく何もない場所に還ることができるのだ。

『……紅霞……』

 呟いてから、まなこを開ける。

 この瞬間を、どれだけ待っただろう。

 待ち遠しく思いながら、同時に永遠に来なければいいとも思ったあの日から、気が遠くなるほどに長い時間を過ごした。陽光が差すあたたかさも、雨が地面を叩く穏やかな音も、風が吹いて肌を撫でていく感触も、身が凍るほどの冷たさを感じることもない、この空間で。

 消えることは許されず、さりとて何もかもを留めたままにすることも許されない中、ただひたすら待ち続けて――だからあの日、嬉しくてたまらなかった。

 自分と同じであってそうではない存在が、ようやく生を受けたのを悟ったあの瞬間は。

 そして今も、嬉しい。

『もう、いいよな? おれがおれじゃなくなっても、鶫に全部任せても、いいよな? なあ、紅霞……』

 納得していても、当然だと思っていても、だからといって辛くなかったわけではない。

 生まれ変わるまでを何処とも知れぬ空間で耐え、そして決着がつくまでの動きを何も出来ぬまま眺め、明けても暮れても一日千秋の思いで待っていた。

 その日々に、ようやく終止符が打たれるのだ。

『お前を、探しに、行っても……逢いに、行っても、いいよな……?』

 生まれ変わりにとうとう逢えなかった、おれの大切な人。今この世にいるかも分からない。

 いるならば、逢えればいい。いないのならば、またいつか、きっと逢える。

 五百年を待つことができたなら、おれは耐えられるから。約束したのだから。

『何処にいたって、お前を見つけてみせるよ』

 自分の手が薄れていくのが分かる。どんどんと透明になって、消えていく。『おれ』は『おれ』じゃ、なくなる。

 それが正しい形。おれは死んだ存在であり、進んでいくべきなのは『今』を生きている鶫たちだ。

 どうか、幸せに。今度こそ――いいや、今度も、その身で受け止めきれんばかりの幸せを、全身に浴びてほしい。

 風が強く吹き荒れた。

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