第8話:成功
『つまんなそう』。この一言を私は怒ってるわけじゃない。ただ本当に驚いただけ。それだけなんだけど…太陽君は少し気にしてるみたい。朝ご飯の時も昼ご飯の時も、何やら気まずそうにしていた。太陽君にそんな態度を取られたら、私だってどうしていいのかわからなくなる。だから尚更ぎくしゃく。
なんか変な感じ。
「…おい。」部屋で勉強していると、ドアの外から遠慮がちな太陽君の声が聞こえてきた。私はゆっくりとドアを開ける。
「すいか。」私と目を合わせないまま太陽君はそう言った。手にはスイカの皿が2つある。
「ありがと。」私がそう返事をすると、太陽君は部屋に入りどかっと腰を下ろした。…一緒に食べるつもりかな?私は疑問に思いながらも太陽君と向かい合って座った。
「…朝。」
「ん?」
「気にしてっと思わなくて…」
「あ、別に気にしてるわけじゃないよ。」私は首をぶんぶんと横に振った。早くこの気まずい空気を吹っ飛ばしてしまいたかった。
「初めて言われたからびっくりして、なにも言えなかっただけ。」
「あんまいないよな。あんたみたいな人。」太陽君は豪快にスイカに噛り付きながら言った。
「俺は好き嫌いはっきりしてるし、態度に出すから。」
「…それってあたしが嫌いだって遠回しに言ってるの?」
「基本、あんまり女は好きじゃない。」…なんだかフラれた気分。ちょっとショックな気がするのはなんでだろう。
「でも、あんたのことは嫌いじゃあねぇよ。」…それって喜ぶべきなんだろうか。つまりは普通ってこと…だよね。
「始めはあんたみたいなやつは、田舎を馬鹿にすると思ってたけど、そうでもないみたいだし。」
「あたし好きだよ。ここも、おばあちゃん達も。」
「…ふぅん。早くスイカ食えば?」太陽君の一言に私ははっとした。すっかりスイカの存在を忘れていたのだ。話しに夢中になってたのかな…。
「いただきます。」私はスプーンで一口スイカをすくって、口に運んだ。
「…おいしー。」正直、あんまりスイカって好きじゃなかった。でも、このスイカは凄く美味しい。なんだか感動してしまう。
「がっつけば?」
「えっ?」さすがにそれはだらし無いような気がする。けど…。
「うん!」あまりの美味しさに私はスプーンを使わずに、がっついた。でも、意外とこっちの方が難しい。スイカの汁がだらだらとこぼれた。…失敗?
「…ははっ、へたくそ。」太陽君はそう言って私を馬鹿にするように笑った。
…あれ?太陽君の笑顔って意外とかわいい。ちょっと得した気分。
もしかしてこれって、ある意味成功?