第6話:優しさ
私の一人だけ離れた部屋で寝ることになった。勉強の邪魔にならないようにと、おばあちゃん達が気を使ってくれたのだ。
夜は涼しく、窓から入ってくる風が体温を調度良くしてくれる。これなら、勉強がはかどりそう。
「おい。」ドアの外から太陽君の声が聞こえた。…それにしても、偉そうな声。
「はい?」ドアを開けると、そこには太陽君が上半身裸で立っていた。
「…。」私は思わず目を反らす。なんだか綺麗な身体。
「…変態。」
「なっ」
「風呂入れだって。」私に反撃させずに太陽君はすたすたと帰って行った。
「どっちが変態だよ。」私はそう呟いてお風呂の準備をした。
なんだか太陽君っていちいちカンに障る人。こんなに苛々したの久しぶりかも…。
私は着替えを持って部屋を出た。そして、ふと思った。…お風呂どこ?
人気のない廊下を歩いていくと、台所から光りが漏れてるのが見えた。
「おばあちゃん?」私はそっと台所を覗く。
「…覗き。」
「ち、ちがっ。」台所ではまだ半分裸のまま、太陽君が水を飲んでいた。確かに覗きみたいだ…。
「てか、人のこと変態扱いする前に、自分が服着ればいいじゃん。」
「風呂上がったばっかりで暑い。」
「…そっか。それより、お風呂ってどこ?」
「…どっか。」太陽君は飲み終えたコップを流しに置き、台所を出た。
「どっかって、どこ?!」苛々して私がそう言うと
「うるさいな。今教えるつってんだろ。」と返事が返って来た。…教えるなんて言ってないし…。
半分納得のいかないまま、口論するのが面倒なので私は黙って後ろを歩いた。
私の周りにはこんなに無愛想な人もいないし、喧嘩売ってくる人もいないから、太陽君みたいなのは初めてだ。だから、対処方がわからない。まぁ、どうでもいいけど。
「ここ。」
「どうも。」なんだか気分が悪かったので、私は小さな声でお礼を言った。
「ん。」太陽君は短く返事をし、その場を離れようとした。
「あっ、ちょっと待って!」
「…?」太陽君が不思議そうな顔で振り返る。
「…電気どこ?」
「…自分で探せ。」呆れて帰ろうとする太陽君の腕を引っ張る。
「そ、そう言わずに…ね?」
「…あんたもしかして暗いとこ苦手?」思わずぎくっとした。大正解。
「はぁ。」太陽君はため息を着いて、風呂の電気を付けた。
「ごめんなさい。」
「…ん。」
太陽君は静かに部屋に帰って行った。
ちょっと優しかった…かな。