第5話:険悪ムード
「おいしー。」夕食の時間になり、おばあちゃんたちにご飯作ってもらったら…すごく美味しい!野菜とかは自分で育てる方がやっぱり美味しいのかな…。
「そうかい。いっぱい食べらい。」おばあちゃんの言葉に頷きながら、私はご飯を黙々と食べた。本当はもっとはしゃぎたいけど、隣にむすっとしてる太陽君がいるから…なんか…微妙。
「太陽、またあんた人参残して。ちゃんと食わい。」
「…無理。」光代さんの言葉をあっさり拒否。なんて失礼な人だ。
「食べないならあたしにちょうだい。」
「は?」
「食べないんでしょ?」何やら驚いている太陽君をシカトし、私は勝手に人参を盗んで食べた。
「あ、おい。それ、俺はし付けた…」
「…え?別にそれくらい…。」
「これだから都会の女は尻軽で困る。」ため息を着きながら、太陽君はそう言った。ちょっとイラっ…。
「ふぅん。ずいぶん大きな枠で人を見るんだね。」
「あ?」
「都会の人がみんな尻軽な訳無いでしょ。あたしはいいとして、他のみんなに失礼だから、そんなこと言わないで欲しい。」私も負けじと、むすっとした態度で言い放つ。そんな険悪ムードにおばあちゃんたちは戸惑っているようだった。
太陽君はその後なんの反抗もせず、ただひたすらご飯を食べていた(人参は残して)。私もあえて何も言わないでおいた。これ以上言い争う必要ないし、面倒だし。太陽君もそう思うから黙ってるんだろう。
「ごちそうさま。」皿に人参を残したまま、太陽君はそう言った。人参のことはおばあちゃん達も触れなかった。もしかしてまた喧嘩が勃発すると思って、黙ってるのかな。なんだか、おばあちゃん達まで嫌な空気にしちゃったみたい。これは反省。
明日から不安だなぁ、と思ったときだった。皿を持って立ち上がる瞬間に、太陽君は小さな声で私に言ったのだ。
「悪かった。」と。