第4話:一つ屋根の下?!
電車を乗り継いで乗り継いで、やっとたどり着いた無人駅。ここから道なりに歩いて30分くらいしたら、神崎の標札が見えるらしい。
本当に果てしなく続くような一本道。周りは畑と田んぼしかないし、民家もあまり見つけられない。でも…空気は凄くおいしい。この緑だらけの景色も嫌いじゃない。
「あつ…。」私は重たい荷物を肩にかけ、真夏の太陽の下歩き始めた。なかなかこんな景色の中歩く機会もないし、楽しんだ方が得だろう。見たこともないような蝶や綺麗な花。まるで私は幼い頃に戻ったみたいに澄んだ気持ちになった。
そんな感じで実家に着くまでの30分はあっという間だった。
「神崎…ここ?」
「麗ちゃんかい?」
「わっ。」びっくりして振り向くと、小さなおばあちゃんがにっこりと笑って立っていた。
「おばあちゃん…?」
「んだよー。よく来たねぇ。」まるで太陽みたいに笑うおばあちゃんに、私はなんだか癒された。おばあちゃんって暖かいなぁ。
「あいやー。早く着替えぇ。」私が汗だくだったからか、おばあちゃんはそう言って私を招き入れた。家の中は思ったより涼しく、風鈴の音が心地よく響いていた。
「ここで着替えらい。」
「うん。」おばあちゃんに案内された部屋に入り、私は鞄からTシャツを取り出した。そして、タオルで汗を拭いながら着替えていたときだった。
「…あ?」扉が開いたかと思ったら、目の前には見たこともない男が立っていた。もちろん私は下着姿で…。
「わぁっ。」私は慌ててしゃがみ込み、とりあえずTシャツで体を隠した。男は何も言わず大きな音を立てて扉を閉めた。
「…誰?」また現れないうちに私は急いでTシャツをかぶった。変質者って田舎にもいるの…?でも若かったし…。
疑問を抱きながら私はおばあちゃんを探した。廊下に気持ち良い風が吹き抜ける。風が入ってくる方向を探していると、なんだか楽しそうな声が聞こえてきた。
部屋を覗くとおばあちゃんと、もう一人仲の良さそうなおばあちゃんが座っていた。
「着替えたかい?れいちゃんもこっちにおいで。」私に気付いたおばあちゃんが手招きして呼んだ。
「ねぇ、おばあちゃん。変な人いたんだけど…」隣にしゃがみ込みそう言うと
「誰が変な人だ。」後ろからさっきの男が現れた。
「あ、さっきの…」
「たいちゃん、来てたのかい。」たいちゃん…?
「みっちゃんとこの孫だよ。」たぶん、話の流れでいくと、みっちゃんっていうのがおばあちゃんの隣にいる人のことで…変な人扱いした人はそのお孫さん。…失礼なことを言ってしまった。
「ごめんなさい。」私はとりあえず男の人に謝った。
「…。」男は何も言わず部屋を出ていく。相当怒っているのだろうか。
「気にすることないよぉ。太陽は恥ずかしがりだからねぇ。」
「そうなんですか…。」だと、良いんだけど…。
その後おばあちゃん達と話していたら、だんだんいろんなことがわかってきた。おばあちゃんの隣に座っている『みっちゃん』は幼なじみの光代さんのこと。光代さんとおばあちゃんは旦那さんを亡くしてから、ずっと一緒に住んでいたらしい。そして、光代さんの孫の太陽君も。太陽君は私と同い年で今は受験勉強を頑張っているそうだ。
で、問題なのはここから。おばあちゃんと光代さんと太陽君と私が一つ屋根の下で、仲良くこれから1ヶ月過ごさなくてはいけない。太陽君は目付き悪いし、愛想悪いしうまくやっていく自信ないなぁ…。
「はぁ…。」